第48話 光と闇の決着
「決着を着けよう」
ミエーカが呟く。
「望むところだ! 光と闇、正義と悪、どちらが強いかはっきりさせようじゃないか!」
キルバスはゼノとテラスを殴り飛ばして、両手で闇の球を支える。
そして振り下ろす。
ミエーカも聖剣を振るう。
光と闇がぶつかる。
瞬間、爆発する。
光と闇の力がせめぎ合い、垂直に駆け上がる。
そして広がり、全世界の空を覆う。
星の半分は昼に、もう半分は夜になる。
ミエーカは衝撃で立っているのもやっとな中で、懸命に踏ん張って聖剣を押し込む。
キルバスも同じように渾身の力で闇の魔力を押し込む。
一歩、また一歩とキルバスが進んでいく。
そのたびに闇の魔力が光を押していく。
そのためミエーカも渾身の力で押し込んでいるが、一歩、また一歩と下がっていく。
「まだです!」
フィヤネイトが背中合わせになって踏ん張り、ミエーカが下がるのを食い止める。
そこにもう満身創痍のゼノとテラスも加わって押し始める。
四人は全身全霊で聖剣を押し込む。
そんな四人の強い思いが聖剣に流れ込む。
すると光の力は徐々に闇を押し始めた。
まさしく全人類の思いと力を一つにした聖剣の光は、やがて闇の球を消し飛ばし、キルバスを飲み込む。
そして、そのまま星を駆け巡る。
世界中が浄化されていき、魔物たちは跡形もなく消滅していく。
さらに光の魔力の力は悪を祓うだけじゃない。
聖剣に集まった思いは魔王を倒したいという思いだけじゃなく、生き残りたいという思い、どうか大切な人が無事でありますようにという思いもある。
だから人を癒す力がある。
傷付いた人々は、無くした部位を戻すことこそはできなかったが、血は止まり、全身が癒された。
そして聖なる魔力に包まれた人々は、それで魔王が倒されたことを知った。
◇◇◇◇
キルバスは気付くと地面に倒れていた。
力が入らない。
視界には青空がぼやけて見えるだけで、焦点が定まらない。
体が崩れていっているのを感じ、キルバスは死期を悟る。
ふと顔に影がかかる。
「目は覚めたか?」
声でミエーカだと分かる。
ゼノやテラス、フィヤネイトもキルバスの周りに来る。
「ああ……ああ……!!」
答える間に涙が溢れだし、それを隠すように、キルバスは左手で目を覆った。
「違うんだ……本当に違うんだ……!!」
今さら言い訳をしても意味ないのに、涙と共に溢れて止まらない。
「私はこんなことする気はなかったんだ……! 確かに負の感情を集める研究はしたが、それは自由に操れるようになったなら、人の負の感情を消せるようになると思ったからだ。弟も嫉妬に飲まれなければ、あんなことをしなかったはずだから……!でもいつの間にか闇が体に侵入していて……!」
「そんな事だろうと思ったさ」
テラスが微笑む。
「こんなことをしでかしたのに、私を信じてくれていたのか……?」
「もちろんだ。だが罪が消えるわけじゃない」
ミエーカが言う。
「そうだな……」
「だから天国で、亡くなった人に謝ってくるといい」
ミエーカの言葉に驚くキルバス。
自嘲気味に返す。
「私が天国に行けると思うか……?」
「行けるさ。君は魔王を倒したし、闇の魔力を集める研究もした」
「研究は失敗だった」
「だが無駄じゃない。俺が研究を引き継ぐ。俺で完成しなかったら次に引き継ぐ。そしていつか、君の研究が元になって、悪意のない世界が作られる」
ゼノが言う。
「そうか、それならよかった……」
キルバスの体は崩れて塵になる。
そして夕暮れの茜色の光に溶けて、儚く消えた。
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