第47話 光の魔力
キルバスが世界中から闇の魔力をどんどん集めていく。
それをゼノたちは見ていることしかできない。
しかしそこで、
「策があります……!」
フィヤネイトが言った。
「あるのか!?」
藁にも縋る思いでフィヤネイトを見るミエーカたち。
「はい。……私も旅が終わった後研究をしていました。闇の力から魔王ができるのなら、逆に人の光の力を利用できないかと思いまして。まだキルバスが闇の力を使うように自由に扱えるわけではありませんが、聖剣を使えば集めることはできます」
「本当か!さすがはフィヤだ!」
ミエーカたちは喜ぶ。
「ただ、集めるのには時間がかかります」
「私が時間をあげると思うか?」
話を聞いていたキルバスが空いた左手にも魔力を集め出す。
そしてフィヤネイトに向かって放った。
だが魔力がフィヤネイトにぶつかる瞬間、フィヤネイトと魔力の間に突如魔方陣が現れる。
そして魔方陣に触れた闇の魔力は、跡形もなく消えてしまった。
そして、はるか彼方で大爆発が起きた。
闇の魔力が魔方陣によって、別の場所に瞬間移動させられたのだった。
「ッなぜ魔法が使える!?」
キルバスは驚愕の表情でゼノを見る。
対してゼノは不敵に笑っていた。
「忘れたのか? 血は魔力代わりになるんだ。代償魔法ってやつだよ」
「ああ、そんな魔法があったな! よし私も使おう!」
ゼノの言葉を聞いて、テラスは躊躇なく左腕をちぎった。
そして魔力に変えた。
「ならこれも使うといい」
ミエーカも躊躇なく右目を差し出した。
「助かる」
ゼノはそれを自分の魔力に変えた。
「時間稼ぎ頼んだぞ」
「ああ!」
「任せてくれ!」
走り出すテラスとゼノ。
「フィヤネイト!」
「はい!」
ミエーカの言葉に強く応えたフィヤネイトも自らの血を魔力に変えて魔法を発動する。
一つは聖剣に掛ける、光の魔力を集める魔法。
もう一つは念話。
それで世界中の人に語りかけれるようにする。
「僕は勇者ミエーカだ」
念話を通じてミエーカが語りかけると、世界中の人の脳内に言葉が響く。
ミエーカの声を聞いたことのない人はたくさんいるが、声に含まれる優しさと力強さに、人々は自然と勇者だと信じることができた。
「今僕たちは新たな魔王と戦っている。前よりもずっと強くて、このままでは勝てそうにない」
勇者の言葉に人々は動揺する。
不安や恐怖が広がり、その分だけ闇の魔力が増える。
キルバスの上の黒い球が一気に大きくなる。
「不安を煽ってどうする」
キルバスはテラスとゼノの拳を、片手に持った剣で余裕に捌きながら、嘲笑する。
だがミエーカはそれに答えず、人々に語りかける。
「だから君たちの力を貸してほしい。魔王や魔物になんか負けないと、大切な人を守りたいと、絶対に生き残るんだと、強い意志を持ってほしい。そして平和になった世界でしたいことを心に思い浮かべてほしい。その希望が魔王を倒す力になるから」
ミエーカの言葉を聞いて、人々は平和になった世界でやりたいことを思い浮かべる。
明日も元気に朝を迎えたい。
家族と一緒にご飯を食べたい。
好きな人の笑顔を見たい。
かっこいい冒険者になりたい。
途中の刺繍を完成させたい。
色々な希望を思い浮かべる。
そして希望が灯った人々は、強く祈る。
どうか魔王が倒されますようにと。
どうか勇者様、魔王を倒してくださいと。
その思いが力となって、ミエーカの持つ聖剣に集まりだす。
「させるか!」
キルバスは剣を横に振るう。
ゼノとテラスは腹を裂かれて吹っ飛んでいく。
そしてキルバスは闇の剣をフィヤネイトとミエーカに向かって投げる。
しかし当たる瞬間、またしても魔方陣が現れて、剣をどこかに飛ばした。
「ハハッ、血が出れば出るほど、魔力が増えるのが代償魔法だ!」
左手や肩、腹から血を大量に流し、話すたびに口からも血が溢れるような瀕死の状態でも、ゼノは力強く叫んだ。
そしてテラスと二人で、またキルバスに殴りかかる。
「貴様ら!」
怒るキルバスだったが、二人の猛攻になかなか反撃に転じることができない。
その間に白く光る聖なる魔力が聖剣にどんどん集まっていく。
そして、いつの間にか聖剣は何十倍もの大きさになっていた。
巨大な光の剣と巨大な闇の球が対峙する。
「決着を着けよう」
ミエーカが呟いた。
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