第32話 ゼノ対ムスキル
第2回戦、第3試合。
ゼノとムスキルが向かい合う。
「先生と戦えるのを楽しみにしていました。ぜひ全力でお相手してください」
「フィヤがいるから全力は出せる。でも、こういうのは出してもらうものじゃない。出させるものだよ」
不敵に笑うゼノ。
「分かりました。出させてみせますよ」
ムスキルの体を青い魔力が包む。
「楽しみだね」
ゼノの体から赤い稲妻が迸る。
闘技場は赤と青に埋め尽くされる。
「か、開始!」
審判の合図と共に二人は飛び出す。
ぶつかり合う剣と肘、衝撃が闘技場を囲う結界を揺らす。
ゼノは肘を押し付けたまま、蹴り上げる。
それをムスキルは屈んで躱し、剣を振り上げる。
ゼノは飛び上がって躱す。
すかさず追撃するムスキル。
二人は闘技場を縦横無尽に駆けた。
その動きは常人の目には追えなかった。
当然だ。
ゼノは雷の速さで動くし、ムスキルもそれに引けを取らない。
赤い稲妻と青い流星が闘技場を無数に駆け巡る。
そんな風に観客の目には映った。
「やるなあ!」
拳と剣をぶつけ合う中で、ゼノは感心した。
つい先日キーラに負けていたのに、今はゼノの雷の速さで繰り出される激しい打撃をすべて受け流していた。
それどころか、ゼノより激しく斬撃を繰り出す。
「一昨日魔力吸収できるようになったんですよ」
ムスキルはゼノの拳を受け流して、カウンターでゼノの横っ腹を切り裂く。
二人は闘技場中央を挟んで着地する。
「やるじゃないか。少し本気を出そう」
ゼノは雷纏を解き、代わりに赤い魔力を纏う。
天に届くほどの莫大な魔力だ。
ゼノは地面を蹴る。
瞬間、大地が抉れる。
一瞬でムスキルの懐に入ったゼノは、ムスキルを殴り付ける。
ムスキルはなんとか顔と拳の間に剣を入れるが、吹き飛ばされる。
そこに、すかさず追撃をかけるゼノ。
ムスキルは体勢を整えるよりも早く、ゼノに向かって剣を振るう。
しかし剣は空振る。
「こっちだ」
瞬間移動でムスキルの背後に飛んだゼノは、背中を蹴飛ばす。
「ぐっ」
まともに食らったムスキルは吹っ飛び、何度も地面を跳ねる。
そこにゼノは紫電を打ち込む。
それをムスキルは横に飛んで、すんでのところで躱す。
けれども一撃では終わらない。
無数の紫電が降り注ぐ。
それを紙一重で躱していくムスキル。
その目の前にゼノが現れる。
すでに足を振っている。
雷を躱すのに夢中だったムスキルは反応できず、鳩尾に蹴りが叩き込まれる。
そして吹っ飛び、闘技場の結界にぶつかる。
結界にはヒビが入り、ムスキルは血反吐を吐いて、前のめりに倒れる。
その目の前にゼノが瞬間移動してくる。
「降参する」
ムスキルはわずかに顔を上げて言った。
「し、勝者ゼノ!」
審判が試合を終わらす。
「強くなったね、ムスキル」
ゼノが手を差し出す。
「なら、もう少し善戦したかったですね」
ムスキルは苦笑いしながらゼノの手を取り、立ち上がる。
その後二人は回復魔法を受け、闘技場に入ってきた、それぞれの通路から出ていく。
「……まだまだ精進しなければな」
通路に一人になったムスキルは、壁に背を着け、悔しそうに呟いた。
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