第13話 ゴブリン退治?
ギルドでゴブリン討伐のクエストを受けたゼノたちは、依頼を出した村を訪れた。
「こんにちは、依頼を受けた者です」
「あなたたちが?」
訪れた村の村長はゼノたちを見て戸惑った。
ゼノとアウレは魔力がないので強そうに見えないし、縄で縛られているムスキルは変質者にしか見えなかった。
「安心してください。私とこちらのムスキルはS級の実力がありますから」
「ハハ……面白い冗談だ……」
村長は苦笑いした。
「まあゴブリンを倒してくれるなら構いません。休憩してから行きますか?」
「いえ、すぐ向かいます」
「そうですか。ゴブリンは北の森から襲ってきました」
「情報感謝します」
ゼノたちは森へ向かった。
しかし森は静かだった。
小鳥やリスを見かけるくらいで、ゴブリンの形跡は何もなかった。
「いませんねえ」
とアウレ。
「もう少し奥まで行ってみようか」
三人は森を進む。
とそこで、先頭を行くゼノが立ち止まった。
「引き返そう」
「急にどうしました?」
「俺たちを狙っている奴らがいる。盗賊の類いだろう」
「盗賊!? どうして!?」
アウレは驚いた。
「分からない。でももうすぐ日が暮れる。捕まえるにしても明日出直した方がいいと思う」
「でも放っておくのはまずいのでは?」
とムスキル。
「アジトに人質らしき者はいないし、一日くらいなら大丈夫だと思う」
「分かりました」
一行は引き返す。
「それにしてもよく分かりますね。アジトの場所やその中まで」
とムスキル。
「魔力感知を鍛えれば、1kmくらいなら詳細に分かるようになるよ」
へぇ、とアウレは感嘆の声を漏らす。
このように話しながら森を引き返す三人。
「あっ、もしかして盗賊が倒したからゴブリンがいなくなったんですかね?」
アウレが思い付いたように言った。
「いや、形跡がないから、元からいなかったんだと思う」
「じゃあ村の人は盗賊を見間違えたってことですか?」
「あるいは……」
そこでゼノは黙った。
ムスキルはハッと何かに気付いた。
「まさか……」
ムスキルの顔から血の気が引いた。
「まあ推測だけどね」
ゼノは笑った。
三人は村に戻った。
「お早いお戻りで……」
村長は驚いていた。
「ゴブリンは倒せましたか?」
「いえ見つかりませんでした。明日もう一度探そうと思います」
「ええ、ぜひお願いします。今日は私の家に泊まっていってください」
「ありがとうございます」
三人は村長の家に招かれた。
「あ、食事の時は解くのですね」
と村長。
「もちろん。でないと食べれないからな」
と縄をほどいたムスキル。
「これは失礼しました。さあ、どうぞどうぞ、召し上がってください」
「ではお言葉に甘えて」
とゼノ。
三人は村長とその娘と夕飯を共にした。
「いやあ、それにしても魔力がない人でも冒険者になれるんですなあ」
お酒も入り、村長は饒舌になる。
「ウチの娘も冒険者に憧れてましてな、ぜひ強くなる方法を教えてやってください。なあカイネ?」
「えっ、あ、う、うん……」
娘のカイネはうつむいた。
「いいよ。仕事が終わったら教えてあげる」
ゼノは優しく微笑んだ。
それから食事はつつがなく進んだ。
そうして宴もたけなわとなった頃、ゼノが切り出した。
「そういえば村長、私たちに伝え忘れたことはないですか? 依頼のことで」
「えっ」
村長は驚いて言葉を詰まらせる。
一瞬静寂が訪れる。
カイネは父親の方を凝視して息を飲む。
「と、特にないですが。どうかしましたか?」
村長は声を震わせながら言う。
「いえ、ないなら構いません」
ゼノは何事もなかったように食事を再開した。
その後は滞りなく、和やかに食事は進み、夜は更けた。
そして翌日、霧が晴れた頃にゼノたちは村長の家を出た。
そして村の出口に来た頃、
「ま、待ってください!」
カイネがゼノたちを呼び止めた。
「どうかしたかい?」
ゼノは優しく微笑みかける。
「つ、伝えることがあるんです」
カイネは真面目な顔付きだ。
「えっと、あの……と……」
言葉に詰まる。
やがて意を決したように、
「森に行かないでください!」
目をギュッと瞑りながら言った。
「そ、その、理由は、言えないですけど……」
カイネは俯きながら言う。
「いや、十分だよ。言いたいことはちゃんと伝わったから。勇気を出してくれてありがとう」
ゼノはカイネに目線を合わせて言った。
そして足を森へ向ける。
「え!? まっ待って!」
呼び止めるカイネ。
「大丈夫。帰ってきたら強くなる方法を教えてあげるから楽しみに待ってて」
そう言ってゼノたちは森へ向かった。
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