第14話 盗賊退治
森の中頃まで来ると、昨日と同じように盗賊が遠巻きにゼノたちを囲みだした。
しかし構わず歩く三人。
そうして森の奥までやってきた頃、ゼノが立ち止まった。
そして次の瞬間、矢が飛んできた。
それを掴んだゼノは回転して、勢いそのままに投げ返した。
すると遠くの木から悲鳴がして、人が一人落ちた。
「俺は後ろ二人を倒す。二人は左右を」
「はい!」
「了解」
三人は一斉に駆け出した。
ゼノは矢を躱しながら、木を駆け上がり、一人目の顔面を蹴飛ばす。
そして蹴りの勢いを利用して、すぐさま枝を蹴り、もう一人のいる木に飛び移る。
相手が剣を抜いて切りかかってくるが、弾いて首を握り、枝から地面に叩き落とした。
アウレも魔力から動きを読んで矢を躱し、相手の懐に入って掌底を腹に食らわす。
空気を吐き出して後ずさる敵に、アウレはバッと飛び上がり、回転して、かかと落としを顔面に食らわして気絶させる。
ムスキルは手足が使えないにもかかわらず、器用にピョンピョン跳ねて、矢を躱し、頭突きで一人目を倒し、両足の飛び蹴りで二人目を倒した。
近くにいた盗賊を全員倒した三人は、盗賊を縛り上げてから、アジトになっている洞窟へ向かう。
入口の見張り二人を倒して進むと、中は広い空間が広がっていて、十人ほどの盗賊がいた。
「何者だ?」
三人に気付いた盗賊の頭領が聞いた。
2mに近い大男で、人相は悪く、頬に大きな傷があった。
「君たちが昨日から狙っていた冒険者だよ」
とゼノ。
「何で知ってやがる。ここの場所にしてもそうだ。村の奴に聞いたのか?」
「村人は関係ない。知っているのは俺の探知能力が凄いからだ」
「魔無しがほざいてんじゃねえよ。死ね」
頭領は短剣を投げた。
ゼノはそれを人差し指で受け流す。
短剣は勢いを落とさずに、盗賊の一人の目に刺さる。
悲鳴を上げる。
それが合図となって戦闘が始まる。
「ぶっ殺せ!」
頭領の命令を受けて、剣を手に取る手下たち。
「二人は手下を!」
「はい!」
「了解」
ゼノたちも応戦する。
ゼノは一目散に頭領に向かって駆ける。
剣を振り下ろす頭領。
避けたゼノは相手の後ろに回り、肘で後頭部を思いっきり殴る。
意識を失いそうになりながらも、何とか耐えた敵は、剣を横に薙ぐ。
それをゼノはしゃがんで躱すと同時に、足払いする。
尻もちを着く敵。
受け身に意識がいき、右手の握りが甘くなる。
その隙を突いて、ゼノは相手の剣を奪い、倒れた相手の首筋に突きつける。
アウレもムスキルも敵を次々に倒して、勝負が決まったかと思われたその時、
「待て!! こいつがどうなってもいいのか!!」
一人の盗賊が叫んだ。
見ればカイネが男に捕まえられ、首筋に短剣を突きつけられていた。
「ご、ごめん……なさい。心配になって……」
カイネは泣きながら言った。
その言葉を聞いてゼノはハハッと笑った。
「素晴らしい!! 謝ることはないぞカイネ!! 素晴らしい勇気だ!!」
ゼノは心からカイネを称賛した。
「黙れ!! 殺されてえか!!」
カイネを捕まえている男が怒鳴る。
「おっと、すまない」
ゼノは剣を捨てて両手を上げる。
それと同時にムスキルに、行けるか?と、口パクで聞く。
ムスキルは頷く。
そして縄をちぎる。
次の瞬間、ムスキルの姿が消え、
ザザンッ!
カイネを捕まえていた男の両腕と首が跳び、男の背後にムスキルが抜き身の剣を手にして立っていた。
突然のことに盗賊たちは言葉を失う。
カイネも同じように言葉を失う。
しかしそれは、飛び散る血が怖かったからじゃなく、ムスキルがかっこよかったからだ。
一瞬のことだったが、カイネの目に映ったのはまぎれもなく、カイネが思い描いていた理想の冒険者の姿だった。
強くてかっこいいムスキルの姿に見惚れたのだ。
「先生」
「うん、子供が巻き込まれたんだから、悠長なことはしてられない」
「はい、本気を出します」
言うやいなや、ムスキルの姿がさっきと同じように消えた。
そして一拍おいて戻ってくると、カイネの目を両手で塞いだ。
同時に盗賊全員の首や胴がバラバラになる。
血が吹き出て全員死んだ。
「私がいいと言うまで目を瞑っていられるか?」
「う、うん」
カイネはムスキルの言うことを素直に聞く。
「よし、いい子だ」
ムスキルはカイネをおぶった。
そして彼らはアジトを出て、外に縛っていた盗賊8人を引きずって村へ戻る。
村が近づいた時、
「……お父さんはどうなりますか?」
カイネがポツリと呟いた。
「大丈夫。今までと何も変わらないよ」
ゼノはカイネの頭を優しく撫でた。
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