第6話 VSワイトキング
ギルドでクエストを受けたゼノとアウレは、日が暮れてから、町の近くの丘に作られた墓地へと向かった。
今回のクエストはワイトキングとワイトの討伐だ。
墓地には魔王が率いる魔物と人類の戦争、人魔大戦の時に亡くなった戦死者が多く葬られている。
その遺体に魔力が集まり、魔物化し、大量のワイトが発生している。
今回のクエストは大量のワイトに対処するために、複数の冒険者パーティーで臨む合同クエストだ。
着いてみると、すでに三つの冒険者パーティーが待機していた。
三人組のパーティーが二つと二人組のパーティーが一つ。
三人組パーティーの一つは、手堅い実力がありそうな女2男1のパーティー。
もう一つの三人組は若い男2女1のパーティー。
二人組は荒っぽい男女の剣士二人のパーティーだ。
「お前たちのような者が来るところじゃないわ。今すぐ帰りなさい」
ゼノとアウレを見ると、実力がありそうな三人組パーティーの魔法使いの女が言った。
「大丈夫です。俺たち強いんで」
ゼノが笑顔で返す。
「魔力がないのに?」
女の目がキッと鋭くなる。
纏う魔力も増える。
「おい、素直に言うこと聞いといた方がいいぞ。その人B級冒険者なんだから」
若い三人組パーティーの男が、ゼノの肩を掴んで言った。
「大丈夫。大丈夫」
「大丈夫じゃないって……!」
若い三人組パーティーはアワアワしている。
アウレも少し不安げだ。
「いいじゃねえか。そいつらが死ぬだけなんだから」
二人組冒険者の剣士の男の方が言った。
「目の前で死なれると不快なんですけど?」
今度は魔法使いの女と剣士の男が睨み合い、一触即発になる。
「まあまあ、言い争うのは後にしようよ。出てきたし」
ゼノが言った。
見てみれば、墓地の地面から続々とワイトが出てきていた。
万に届こうかという骸骨の軍勢だ。
「さあいくよ! アウレ!」
「はい!」
ゼノとアウレはワイトの群れに突っ込んだ。
「魔無しに遅れを取るわけにはいかねえだろ! なあ!?」
「そうだねえ!」
二人組の冒険者も走り出す。
「俺たちも行くぞ!」
若い三人組も後に続く。
「
来たれ "天球"」
魔法使いの女が唱えると、墓地を淡い緑の光が半球状に包んだ。
魔物を逃さないようにするための結界だ。
「助かった。これで討伐に集中できるぞ」
言いながらゼノは、どんどんワイトを徒手空拳で倒していく。
それから後ろに控えているアウレと入れ替わった。
「アウレは目の前の敵にだけ集中してくれ。周りの敵は俺が倒すから」
「はい!」
アウレは杖を構えた。
ワイトが骨でできた剣を振りかぶって迫る。
恐怖と緊張で体が震えるけれど、グッと力を込めて杖を握る。
恐れるな!
目を逸らすな!
先生の教えを思い出せ!
アウレは敵をしっかりと見据える。
ワイトは筋肉がないから、全て魔力で動かす。
だから他の魔物よりも動きが読みやすい。
しっかりと見れば今のアウレでも分かるはずだよ。
それがゼノのアドバイスだった。
そのアドバイス通り、アウレは敵から目を逸らさない。
ワイトの腕の魔力がアウレの頭の方へ伸びてくる。
来る!と思ったアウレは、体を半身にした。
同時にワイトの剣が振り下ろされて、アウレの横を掠めて地面にぶつかった。
アウレは杖を振りかぶり、ワイトに叩きつけた。
ワイトは骨が砕けて死んだ。
いける! 私でも倒せる!
とアウレは思った。
ゼノとアウレはどんどん進んだ。
アウレは目の前の敵を倒し、ゼノはアウレの周囲の敵全てを倒していく。
「いいぞ、その調子だ!」
「はい!」
調子よくワイトを倒していたゼノとアウレ。
そのアウレの頬を何かが掠めた。
髪が少し焦げた。
一拍置いて、背後で大きな爆発が起きた。
ゼノとアウレが振り返れば、大きな爆心地ができていた。
ウジャウジャいたワイトはそこだけいなくなり、骨が周囲に飛び散っていた。
そして若い冒険者パーティーの男が一人、焼けただれて倒れていた。
「現れたか……」
ゼノの声にアウレはもう一度振り返る。
そこには擦りきれたローブを羽織った3mはあろう巨大な骸骨が立っていた。
「あれがワイトキング……!」
アウレは杖を握る手に力を込めた。
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