第16話
オッソ領城下町
オッソ領城下町南門手前にほど近い林の中。
時折吹く風に建物の焼けた臭いと燃えカスがスヴァルまで届く。
木の影から様子を伺う。
門の前に見張りが立っている。
見張りが持っている旗はケルウス領の者だ。
ーーバァル湖に行く時に見た先遣隊だろうか。
だか、様子がおかしい、魔力の流れが停滞しているのと、目が虚ろ、規律正しく隊列を組んで行進していたもの達とは思えないくらい姿勢や仕草にキレがない。
まるで動く屍のようだ。
見つからないで街に入る方法はないかなぁ。
そうだこんな時は飴だ、色んな効果があるって言ってたし。
よし、透明の飴にしよう。
トランクからシナンに貰った糸引き飴の透明な飴を引いて口に入れた。
姿が消えるわけではない様だ。
自分が変わったようには見えない。
門から離れて林をしばらく進んで、気に登り街を囲む壁に飛び乗る。
辺りに兵が居ないのを確認し廃墟の街に入り込んだ。
ーー見られないように進んで、城の門にいる兵だけを昏倒させて城の中に入ろう。
建物の影沿いを歩き、気配を探りながら音を立てないようにする。
少し進むと影が途切れ見張りもちらほらいる。
足先をジリジリと光の中に出すと、光の関係だろうか?足先が透き通っている。
ーーなんだ、光の中だったら透明なんだねぇ、すごいこの飴、光の当たっている大通りを進んだほうがいいかなぁ、あぁダメだ、火の見櫓が立って居るから、所々影になっちゃう。このまま建物の影に隠れながら行くか、よし。
エイっと一歩踏み出し、チラッと見張りを見ると、見張りの兵もこっちを見て目が合った。
ーーあぁ魔力に反応するんだぁ、透明になってもダメだったね。
ギョエェェェェェxエイ
目の合った兵が上を見て叫んだ。
ワラワラと兵たちが屍のような動きで、集まって来た。
屍のような動きなのに足は速く、ブンブンと刀を振り回している。
ズンズンと近づいてくる。
イヤーーーーーーーーーーーー、気持ち悪い、ダメだーーーーーーーー。
応戦する事も出来ずに逃げた。
一目散に城を目指す。
わき道から兵が飛び出してきた、ぶつかりそうになるのを咄嗟に避ける。
その時、ふわっと頭がクラクラする匂いがした。
ーーん?この臭い鬼顔樹の葉だ、幻覚が見えているの?それなら統率のとれた行動は出来ないはずだ。
?、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。
真名取られちゃってるのかなぁ、崖に生えている死霊の足花と鬼顔樹の葉を使った方の呪法とか?どっちみち兵たちの、この状態は異常だよね。
多分この呪法をかけたのはミツバお姉ちゃんだ、アマコク家の巫女は呪法を使えるようになるらしい。
らしい、というのも実際アマコクの巫女が呪法をかけているところを見たことがないから、呪法にかかって異常をきたしている者を見たことがなかったから、今までは。
そう、今はいるんだよね、しかも真後ろに、なら、こんなこと出来るのはミツバお姉ちゃんしかいないと、、、、。
それがわかっても、この状況をどうしたらいいのか分からないんだけど。
後ろの兵が キィッ キキィィィと奇声をあげている。
ーーもう嫌だ、追ってこないでェ。ケルウス兵を殺しちゃたら本末転倒になっちゃう、せっかくこの土地を守る為に来てもらっているのに、それに、真後ろにいる兵が、さっきからずっとキって言っていて、気持ち悪いよ、キって何?もう。
キ気鬼機木、、、、あッ、緑の魔石で木を発生させて食い止めるか。
涙目になりながら、緑の魔石に魔力を流した。
影から木の幹がグングン伸びて、兵たちを捕らえ足止めに成功し、やっと城門が見えてきた。
ーーもう嫌だ、どっかで休みたい、精神的に疲れたよ、シナンさんの所に戻ってもいいかなぁ、、。ダメだ、しっかりしなきゃ、かっこつけてシナンさん達の所から旅だったのに、恥ずかしいよ。
門の所にいる兵たちが一斉に向かってきた。
走って近づいて行って、直前の所で跳躍して、影から木の幹を出して、捕まえる。
そのまま城内へ突っ込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます