第17話

オッソ領主城




城内にはケルウス領の旗と、甲冑を着ている兵が待ち構えていた。

城下町にいた兵達とは違い、まともに見える。


一人の老いた兵が勢いよく切りかかってくる、その姿に殺気はなく、目も死んでいる。

わざとつばぜり合いに持っていった。


老兵が耳元でごく小さな声で囁いた。


「お願いします、コトノハ様、最上階にケルウス領主様が囚われています。領主様を助けてください。」


老兵が魔力を頭に集中させている。スヴァルも魔力を頭に集めて、同調させる。


ミツバにばれないように何か伝えたいことがあるらしい。


『最上階には罠があります、ケルウス領主様はここにはおりません、どうかお気を付けて』


同調を切った。


「うわぁーー」


と叫びながら、老兵は自ら後ろに飛んで、軽く受け身をしつつ倒れた。


倒れた老兵を横目で見つつ通り越して、階段の前に来た。


ーー向かうはここの地下だ。でも最短ルートを通るなら最上階を目指すか、地下に行っちゃったら老兵さんが罠をばらしたことがばれちゃうかもしれないし。


階段を駆け上った。

ときおりケルウス兵が向かってきたが、峰打ちで動けなくして、最上階まで上がってきた。


そこには、オッサ領主息子で現在オッサ領主代行のバジャーがニタニタした顔で床几に座っている。


バジャーの周りに天井から紐が数本垂れ下がっていて、そのうちの一本を

引かないように持っている。


バジャーはベアード島内で器量よし、地位も名誉も持ち、島中の女子の憧れの存在だ。


スヴァルはその場に膝まづいた。

バジャーを直視する事が憚られ床を見る。


「そのほうが、コトノハか? 」


「はい、このような場所でバジャー様にお会いできるとは、知らず正装でないことをお許しください」


「有無良い、それより其方に聞きたいことがある」


「はい、何なりと」


「ウルススの神体はどこにある?」


「申し訳ございません、わたくしにはそのような領主様の重要な事は教えられてはおりません、お役に立てず申し訳ございません、オッソ公爵家の方々にお聞きになったほうがよろしいかと」


キュッと口を結んだ。


「うむ、確かに、だが、奴らは皆、神体の事を拷問されてもを吐かずに逝ったからな、仕方がない」


ーーこいつ殺していいですか?オッソ公爵家の皆様が拷問に合われていたなんて、私よりもずっと幼い姫様もいらしたのに。


下唇を噛んで表情に出さないようにした、口の中に血の味が広がる。


「ミドゥべーレ姫もいい声で鳴いたよ」


バジャーは恍惚の表情で語った。


怒りで体が震えだすのを懸命に堪えた。


「バジャー様は、御神体を得られてどうなさるのですか?」


あえてやさしい声を出して、怒りを抑え込む。


「オッソの者はどうかしている、ウルススなど破壊神ではないか、ウルススがカリスト山とアルカス山の頂上を破壊しなければ魔獣横溢は起こらなかったのだぞ、知っておろう」


「はい、確かにその通りではございますが、この島に溢れる妖怪達をマギナスホールに閉じ込めなくてはこの島に我々は住まうことが出来なかったのも事実です、ウルスス様は破壊神ではございません、それに伝承では、


『ワレ、コノクニニ、ハカイヲモタラスモノヲ、ハカイス、クニノヌシトナルモノナリ』


それで、破国主と呼ばれているのです、決して破壊神などではございません」


「其方は何を言っておる、ミツバはそんなこと言っておらんかったぞ、嘘を申すでない」


「嘘ではございません、バジャー様にお聞きしたいことがございます」


「なんだ、申してみよ」


「ありがとうございます。ウルスス様の赤い魔石はどこにあるのです。」


バジャーは鼻で笑ってスヴァルを見下し得意げに語りだした。


「あぁ、あの赤い石かぁミツバの助言道理に破壊させようとしたが、傷一つ付かなかったからな、海外に売った、イイ金になったよ、其方もこのバジャー様の役にたてて嬉しかろう」


悲痛な面持ちで顔をあげた。


「なんでことをなさるのです」


バジャーが眉間に皺を寄せた。


「なんだその顔は、余に立て吐くのか、気に食わんな、やはりミツバが言った通りお前は余には靡かんか、ならばお前も、いらないな、余が直接手を下してもよいが、ミツバの獲物だからなぁ 」


バジャーが持っていた紐を引いた。


すると床が開きスヴァルは落ちていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る