第13話
黒の魔石
促されるままに東屋に向かい、半分思考停止状態で東屋に着いた。
そこには蔦に覆われところどころ苔が生えている白っぽい東屋が建っていた。
月に照らされてほのかに白っぽい石が鈍く光っている。
東屋の中に落ち葉が積もっている。
落ち葉を払って座る場所を確保して、ペタンと座った。
ーーシナンの旦那さん余程のことがあったんだろうなぁ
このことをシナンさんに直接聞く訳にはいかないなぁ、辛いことを思い出させちゃうもん。
この森は公爵家の管理する森だったはずだ。
凶暴な生き物がこの森から出ないようにするための守り石に高価な紫色水晶が何ヶ所も設置されているわけだし、公爵様とどう繋がっていたのかはよく分からないけど、考えても分からないから、まぁ、いいか。
ーーあれ? ここで何すればいいんだろう?
元々ここに魔石があるとしか聞いてないのに、直接湖に潜るつもりだったし?
困った時は魔力を流してみる?
東屋の真ん中まで進んで、魔力をながした。
ーーでもダンジョンとかでやたら魔力を流すと罠に嵌っちゃうんだよね。
アレ?ここが罠だったらどうしよう。
ん?何も起こらない?
ガンと音と一緒に床が下がった。
「きゃぁぁ」
体制を崩してペタンと座り込んでしまった。
ーー罠だった!!
5分位床が下がり続けた。
ズンと床が止まった。
スズランを模した3連のランプが上に3箇所、下に3箇所パッと灯りが灯った。
目の前の2本の木にロープをゆったり渡し、その真ん中に二人ゆったり座れる位の椅子が取り付けられているブランコがあった。
ーー遊具ひとつしかない公園?
保存の魔法術具で保存された空間に、一面小さな色とりどりの花が咲き乱れていた。
正面は暗く何も見えない。
正面の暗い所ギリギリまで進んで下に目をやると、暗闇の中、遥か下の方にキラキラと光漂うものがいくつもあり、それはまるで夜空の星のようだった。
ーーここは素敵なデートスポットに違いない。
タリスマンが光って正面の暗闇を差すと
耳飾りが共鳴し光って目の前の暗闇を光が右から左に指して消える、それを何度も繰り返した。
スズランのランプを持って暗闇を照らす。
すると暗闇の中にスズランのランプが等間隔に真っ直ぐ並んで2本のラインを作って灯った。
その光に照らされて現れたのは10mはありそうな茶色いいかつい顔の魚がこっち側と対岸の間を円を書く様に泳いでいる。
正面の壁は水面で、手をそっと差し入れた。
ランプの光の中に魚の群れが現れて直ぐに手を引っ込める。
歯をむき出しにした小さなが10匹水面の壁に飛び込んできた。
魚をよけると、地面でピチピチと跳ねている。
ーー水に潜ってあの魚を捕まえることは出来なさそうだ。
ん? 魚が持っているよね、魔石。声かけてみよう。
「すいませーーーん、黒の魔石持っていますか」
魚は悠々と泳いでいる。気づいた様子はない。
「すいませーーーん」
ーー水の中に入れない、声も届かない、どうしよう。
あっ耳飾りの青い魔石で水の渦で捕まえられるかも。
早速青の魔石に魔力を流してみた。
魚を捕まえる水流のロープのイメージ
私の周りにロープの細さの渦が出来てしばらくして消えた。
ーーだめだぁ。じゃあ緑の魔石に魔力を流してみる?
緑の魔石を触った、頭の中に木が生えるイメージが湧く。
緑の魔石に魔力を流すと、あの大きな魚を木の幹で捕まえるイメージ。
スヴァルの影から木の幹がニョキニョキと伸びていかつい顔の魚を捕まえ、水面の壁の前まで引っ張って来た。
幹の部分にびっしりと小さな魚がかみついている。
魚の頭の骨板の皮にクマが瓶ビールを持った形にへこみがあった。
耳飾りが共鳴して光り、瓶ビールの蓋部分から黒の魔石が飛び出して耳飾りに納まった。
幹を外して魚を自由にすると、魚は泳いで行ってしまった。
花の上でピチピチ跳ねている小さな魚に影から出てきている幹を齧らせて水の中に戻し、
動く床に行き、魔力を流して元の東屋まで戻ってきた。
「ちょっと、疲れてしまいましたね」
ふぅ
と一息ついて東屋の椅子にドカッと座り、空に浮かぶ月をしばらく眺めた。
ーー次がいよいよ最後、オッソ領主城地下、きっとミツバちゃん居るんだろうなぁ
しばらくぼんやりと月を眺めた後、スッと立ち上がりシナンの所に戻った。
シナンと翼竜の所に戻ると、竈の火を囲んで寝ていて、武闘狒々2匹が見張りをしていた。
竈の火にあたってポカポカしてくるとウトウトし、スヴァルもスヤスヤと眠った。
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