028:冒険者登録テスト 適性試験②

 史上最高の魔術師と言われる偉大なる【大賢者】モンドール。

 ハイエアの英雄であり聖剣の異名を持つ光の剣士【大勇者】コーネリンと並ぶローランドの英雄だ。


 どちらも超大陸時代の英雄であり、今では神話上の存在だとも言われてるくらいに別格の最強……歴史上最強にして唯一のSSSランクパーティ『神々の黄昏』ラグナロクの主要メンバー。


 モンドールとコーネリンのどちらがパーティのリーダーだったかについては正確な記録がないため分かっていない。

 その議論は両国間の溝を深める一因になっているとかいないとか。


 とにかく【大賢者】とはそれくらいすごい人物だ。

 そんな人物にしか壊せないとは、その強度を例えるにしても大げさだろう。


 だがそれくらい壊れないと言うのなら手加減は無用である。


「じゃあ、やるぞ」


「どうぞ!」


 エナンが新しく黒いレンズのメガネを装備してメモを取る準備をする。

 メガネの上にメガネという不思議な姿になったが全く気にする様子はない。


 光の強さから測定する魔力量を正確に確認するための魔道具かなにかだろう。


 俺は言われたとおりに魔力を流し込む。


 ビシッ。


「ん……?」


 あれ?

 光らないな。


 どれくらいの魔力に反応して光るのか興味があったから少しづつ流し込もうと思ったが、予想より反応が悪いようだ。


 魔力が足りない……?

 それとも……この程度の魔力量では冒険者になる資格はないと、そういう事だろうか。


 よし、だったら一気に全力で……!!


 ビシビシッ……。


「ん? んん……?」


 バリィィィィィン!!


 あ、壊れた。


「んんんんんんんんんん!!??」


「んなぅっ!?」


 そしてそれを見たエナンが奇声を上げた。

 スーがビックリして俺の後ろに隠れる。


 いや俺もビックリしたんだけど。

 水晶よりエナンにね。


 エナンはさっき「絶対に壊れない」とか「壊せるのは伝説の【大賢者】だけ」だとか大層な事を自信満々で言っていたからな。

 その水晶がバラバラに砕けてしまったという衝撃が奇声になったのだろう。


 だが予想外の事態に驚きながらもエナンはギリギリ耐えていた。


 笑顔である。


 奇声は上げたし眉間にシワが寄ったり冷や汗が出たりしているが、ギリギリの所で笑顔の形だけは保っている。


 すごいな、受付嬢。


「えーと、なんか壊れたんだが……ごめん?」


「え? あっ、い、いえ……えーと、経年劣化? ですかね? あはは。ずっと壊れない水晶なので、ずっと使い続けられていましたからね! うん! そう、かなり古い物ですから。大丈夫です、予備の水晶がありますので! あはは……」


 バリィィィィィン!!


「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!??」


 やっぱり2つ目の水晶も俺が魔力を込めると砕けてしまった。


「なんでええええええええええええええええええ!!??」


 やばい、エナンのキャラが崩壊している。


 でも笑顔だけは保たれている!


「ハァ、ハァ……。こんなことは初めてなのでわかりませんが……うーん、ルードさんの魔力がかなり特殊なのでしょうか? かつて【大賢者】様が魔見水晶を破壊し時には太陽のように強烈な光で記録係が失明したそうですけど……なので今はこのサングラスという装備で測定するんです」


 マジか。

 そこまで行くと怖いな、大賢者の魔力量。


 というかそれだと俺とスーは失明する可能性があったんじゃないのか……?


 サングラスなんて装備してないけど……って。

 いやいや、【大賢者】くらい魔力がある人なんて普通はいないから良いのか。


 でも、俺も魔力の量には自信あったんだけどな。

 測定不可じゃ仕方ないんだけど……興味あったな、自分の魔力量。


「それから光の色で適性を判断するのですが……光らなかったですね」


「そうだな」


 割れる以外には何の反応もなかった。


「ということは、属性適正はゼロ……に、なるのでしょうか」


 まぁ、そうなるよな。


 だが水晶が適性を示さなかった理由は察しが付いている。

 確かに俺の魔力の性質によるものだろうが、別に特殊でもなんでもないハズだ。


「これは「そんなのおかしいのです!!」


 俺のテストだからか今まで黙って見ていたスーが、俺の言葉をさえぎる勢いで声を荒げた。


「ご主人さまはすっごくたくさんの魔術を使えるのです! なのにどの属性にも適性がないなんてあり得ないのです! 遺憾の意を表するのです!」

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