029:冒険者登録テスト 適性試験③
「ご主人さまはすっごい魔術師さんなのです! 適性がないなんてあり得ないのです! きっと水晶が割れたのもご主人さまが【大賢者】さんよりもっとすごい魔力を持ってるからなのですー!!」
「そ、そうなのですか?」
「まぁな。使える魔術の数には自信がある方だよ。魔力量もね」
世界中の魔術を調べまくったからな。
さすがに「【大賢者】よりすごい」なんてのは言いすぎだと思うけど、スーの気持ちを否定するのも可哀そうな気がするから言わないでおく。
エナンも真に受けたりはしないだろう。
「……そうですねぇ。少なくともルードさんが魔術を使えないという事はないのは私も理解しています。実際に魔術を使う所を見ていますからね。それもかなり高度な魔術展開でした」
エナンは笑顔のまま少しだけ首をひねると、何かを閃いたように指をピッと立てた。
「……おそらく割れてしまったので正常に作用しなかったのだと思います。どんなに弱い魔力でも反応するものですから、全く光らないなんてありえませんし」
「なるほど」
それも考えられるか。
理由はもっと別にあると思ったのだが、気にしてないようだからわざわざ説明する必要もなさそうだ。
わざわざ指摘して間違えていた時が一番恥ずかしいからな……!
それにローランドの魔術研究はハイエアよりもかなり進んでいるらしいから俺の知らない情報もたくさんある。
余計な事は言わないでおこう。
「高等な魔術が使える事はわかっていますし、魔力量がなんだか尋常ではない事もわかりました。魔力に関しては問題ない……というより測定不能の高レベルだと判断するしかないでしょう」
そう決定するとエナンは用紙に「0」を書いて、笑顔のままでじっと見つめた。
「何か違いますね。これではルードさんのすごさを表現できていません……」
少し悩んでからその横にもう一つ「0」を付け足した。
それは「ゼロ」というよりは丸のような形で……
* * * * *
受験者:ルード
観測者:エナン
推定魔力量:∞
属性適性数:∞
* * * * *
「……
「さすがなのです! ご主人さま! ムゲンです! すごいのです!」
「……良いのか? そんな感じで」
スーは喜んでくれているが、結果がかなり雑というか、エナンの思いつきでやってしまっている気がするのだが。
こんなので大丈夫なのか不安になる内容である。
「私がそう判断したのでOKです! これでも私、人を見る目には自信があるんです」
エナンはメガネをクイっと上げて胸を張った。
ギルドの人間が良いというのなら良いのだが。
ふむ……。
胸元のフリルでわかりにくかったが、よく見るとエナンはなかなかのボリュームを誇っている。
いや、よく見たらダメか。
あ、やべ。
スーがすっごいジトっとした目で見てる。
「ふっ……」
ごまかそう。
俺は意味もなく天井を見上げた。
この建物、結構デカいんだな……。
「むぅ~……」
スーはペタペタと自分の胸を確認して、それからエナンの立派な双子山と見比べてプクーっと頬を膨らませている。
かなり悔しがっているご様子である。
こらこらスーちゃん、人前で自分の胸を揉むんじゃない。
そんなことをしても急には増えないから。
それにまだスーは理解できていないようだな……。
おっぱいとは比べる物じゃないのだよ。
みんな違ってみんな良いんだ。
おっぱいとはそういうものなんだよ。
俺は小さいおっぱいも大好きだよ。
「それに、ルードさんの実力は間違いありませんからね。魔見水晶以外に魔力測定できそうな魔道具が見つかったら、その時にまた測定してみましょう」
「わかった」
そんなこんなで俺の測定結果は良く分からない事になったのだった。
* * * * *
受験者:ルード
観測者:エナン
適正試験:合格
* * * * *
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