第13話 祝福と呪い

 ホッとしたのか、ラァムは目を細めて言う。

「あなた……本当に強かったんですね……」

「だから言っただろ? ドラゴンだって一発って!」

「……普通それを言う人は大嘘つきですし、まともな人は信じませんよ」

「そういうものかぁ。……でも、なんでこのタイミングで力が戻ったんだろう……。まあなんにせよ、一番必要な時に実力を見せられてよかったよ!」

「実力は認めますが、なんでしょうか……殴りたいですね」

「やめて!?」

 ラァムは何やら考え込むような顔をしてから、何かに気付いた様子で話し出す。

「……もしやレットが倒したドラゴンは、カースドラゴンではありませんでしたか?」

「なんだよ急に。……確かにギルドの受付嬢が、そんなようなこと言ってたな」

「なるほど、わかってきました。カースドラゴンはその名の通り、呪いの魔法を得意とします。そして自らを倒した者にも、死の呪いをかけるとも」

「それも受付嬢から聞いたよ」

「レットはカースドラゴンを倒したことで、即死の呪いをかけられた」

「いや生きてますが!?」

「ちゃんと聞いて下さい。本来であればカースドラゴンの最期の呪いによって、倒した者は死にます。ですがその呪いを超えるほどの強さを持つ者であれば弱化で済むと、そうは考えられませんか?」

「確かに、そういうこともあり得るのか……」

「そして極めつけは、祝福です」

「あっ、さっき俺を逃がそうとしてくれた時に言ってたね!? 祝福があらんことをって」

「気付いてましたか。……実は私は修道院の僧侶でしたので、祝福による解呪もできるのです。……もっとも、先程はそのつもりはありませんでしたが」

「つまり俺は何日もずっと呪いをかけられたままで過ごしていただけで、聖堂に行けばとっくに祝福で解決した問題だったと?」

「はい。普段から神へ祈る習慣をつけておくべきでしたね」

「マジかぁ……」

「迂闊にドラゴンに手を出すからです。無知とは恐ろしいですね」

「……一生弱いままかと思って、また一からやり直す気になってたよ」

「恐ろしい程にハートも強いですね。普通なら絶望しそうなものですが、神経の図太さも規格外とは……ポジティブの権化ですか?」

「……まさか、褒めてる?」

「どう受け取るかは勝手です」

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