夏休み編⑬~表ピラミッド制圧~
20発のウォーターミサイルが俺に群がる数十体のミノタウロスたちをなぎ倒す。
何時間か前に攻略のついでに探してほしいと言われていた男性を発見して、邪魔なので外へ放り投げておいた。
それが終わったので、今は表ピラミッドの頂上を目指して階段の捜索をしている。
(迷路みたいでどこにいるのかわからん)
表ピラミッドの1階は最初の構造こそ同じだが、途中からランダムに道を変えるため、階段を見つけるのが難しい。
大量に現れるミノタウロスを倒しながら進行して、半日以上経つものの発見できずにいた。
ミスリルの杖がミノタウロスを殴りすぎて変形してしまい、今は魔法主体で戦っている。
(杉山さんに手入れをしてもらったばっかりなのに……)
この杖だけは先に整備をしてもらっていたが、今はもう無残な姿になってしまった。
杖を眺めながらどうしようかと悩んでいたら、ようやく階段が現れる。
(やっと2階か……ここからこの武器でどうしよう……)
階段を上った先には、数千体の《ラミア》と《ナーガ》が待ち構えていた。
両方とも、蛇のような下半身をしており、上半身は人型で金色に光る武器を手にしている。
(ナーガは全身蛇だけど、ラミアの上半身は女性なんだよな……)
俺を発見した敵が、2メートルほどの体で地をはうように凄まじいスピードで俺へ向かってきていた。
はってくる敵が手にしている【様々】な武器が目に入るので、持っていた杖を家に戻す。
(杖を持った奴はいないか!?)
曲がった杖よりはましなため、必死に杖を持った敵を探すと、奥の方で俺に向かって杖を構えているラミアを発見した。
テレポートで真後ろへ移動して杖を奪い、ラミアの上半身を杖で叩き付ける。
黄金に輝く杖を手にして、俺を見失っている敵に向けて魔法を唱えた。
「ウォーターミサイル!!」
このピラミッドにいる敵は水属性の魔法に弱い。
ミサイルが何十体もの敵を貫通し続け、任意の場所で爆発して敵を蒸発させた。
(水属性に弱いからって、この威力はなんなんだ?)
それだけで数百体の敵を倒してしまい、持っていた武器を鑑定する。
【オリハルコンの杖】
手に入れた武器がオリハルコン製の武器であることを知り、同じように光り輝く武器を持つ敵を探す。
中央にある階段へ向けて進んでいたら数体見つけることができたので、モンスターが消える直前に回収している。
オリハルコンの杖の効果なのか、1階よりは苦戦することなく階段に到着することができた。
上りながら後ろを見たら、倒し残した敵がいないことを確認する。
(普通のファラオとご対面だ)
そう思いながら階段を上るものの、いくら歩いてもファラオの間に着かない。
適当に壁を杖で殴ってから上ると、俺がつけた印がまた現れた。
何度も同じところを上らされており、俺は自分の無計画さを自覚する。
(そうだ……孤独の逆だから、PTじゃないとダメなんだっけ……)
気づいた瞬間にため息が出るので、ワープホールを発動させた。
今度はみんなとこようと思いながらレべ天の家に着くと、珍しいことに誰もいない。
置いた覚えのない大き目の箱が部屋の中央にあり、その上に座った。
持っていた杖を壁に立てかけて、地面に落ちているくの字に曲がってしまったミスリルの杖を手に取る。
(杉山さんが戻ってきたら相談しよう……ふんっ!!)
佐々木さんも使うため、曲がった部分を殴り、まっすぐに直しておく。
杖の応急処置を行い、ピラミッドでの成果を片付けていたら、玄関が開く音がする。
時間を見たら15時で、レべ天の午後の部活が終わるような時間でもない。
(まさか泥棒か?)
近くに置いてあったオリハルコンの剣を持ち、隠密を使用してゆっくりと玄関へ向かう。
リビングに複数の人の気配がするので、集団犯と確信する。
(7人……多いな……ただ、持っていかれるわけにはいかない!)
この家には、俺がこれまでに獲得した戦利品のすべてがあるため、総額がいくらになるかわからない品物が置いてある。
気配を頼りにリビングへの扉のドアノブを握ると、中から声が聞こえてきた。
「天音ちゃん、最後に確認させて……一也様の目的は世界中にあるダンジョンの攻略で間違いない?」
「そうです。それと、すべてのフィールドにいるモンスターも討伐対象になります」
「そう……よくわかったわ」
声で判断すると、リビングにはレべ天と絵蓮さんがいるようだった。
気配をよく探ると感じたことのあるようなものばかりなので、おそらく佐々木さんたちもいるのだろう。
(話の内容的に、レべ天の正体がばれたのか? ……基本ドジだからな、なにかボロを出したんだろう)
泥棒ではないことがわかったので、このまま気配を消して立ち去ることにした。
このまま俺が出て話をするのも面倒なので、剣を部屋へ置いてから家に帰還する。
その日の夜。
家にレべ天が晩御飯を食べにきていたので、何が起こったのか説明してもらうことにした。
「ごめんなさい! みなさんへ私が人じゃないことがばれちゃいました!」
俺の部屋に入った瞬間、レべ天が頭を下げるので、構わず椅子へ座る。
予想通りなので特に驚かず、具体的にどのような内容の話をしたのか聞きたい。
「みんなっていうのは、絵蓮さんと花蓮さん、夏美ちゃんに真央さん、それに佐々木さんの5人?」
「そうです……佐々木さんが私のことを調べていると、明さんが教えてくれました……それで……」
「明が……そうか。どう話したの? 俺がこことは違う世界からきたとか?」
「それだけは言っていません!!」
レべ天が全力で首を振って否定している。
【だけ】と言っているので、それ以外のことは大体話してしまったのだろう。
詳しく聞くためにレべ天を床に座らせて、優しい口調で語りかけた。
「別に怒っていないから、話を合わせるために言ったことを教えてくれる?」
「はい……」
レべ天は自分が守護者なことと、俺へ人類を救うために世界中のモンスターを討伐しようとしていることを5人へ伝えたようだった。
それに加えて俺に変装するという能力も披露し、5人に信じてもらえたようだ。
「他に話したことは?」
「えーっと……一也さんの強さの秘密を聞かれました……」
「なんて答えた?」
レべ天は言っていいものかどうか迷っているのか、伏し目がちになりながら俺を見ている。
冷や汗をかき、ごまかすように笑顔を作った。
「一也さんは頭がおかしいから普通の人が考えられないような訓練をしていると答えました……」
「スキルについて全部知っているなんて言えないもんな。それでいいよ」
無言でレべ天の頭を優しく撫でて、今日の苦労を労う。
ほっとしながら撫でられているレべ天がゆっくりと俺を見上げてきた。
「そういえば、数日前に杉山さんが来て、装備が入った箱を持ってきてくれましたよ」
「ああ、あの箱がそうなのか」
大きな箱の謎が解けたので、レべ天を家へ送るついでに中身を確認する。
箱の中には、ピカピカになった黒騎士装備が入っており、新作の鞭も包装されていた。
装備を確かめているときにスマホが振動するので、画面を見たら晴美さんから電話がかかってきている。
晴美さんからかかってくるのが珍しいので、電話に出ることにした。
「こんばんは、晴美さんですか」
「え!? 出てくれたの!?
なぜか俺が電話に出ただけで晴美さんが驚いており、真さんという人を呼んでいた。
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