北海道解放編⑪~グリズリーキング討伐戦~

「ふたりとも、ちゃんとつかまっていてくださいね!」


 最大火力で攻撃を行うために、オーラを赤色に染めた。

 爆煙が収まらない中、水の盾を解除して大地を歩くグリズリーキングに向けて拳を振り抜く。


「五月雨バーニングフィスト!!!!」


 爆煙を吹き飛ばすように炎の拳が地上へ降り注いだ。

 攻撃が当たったキングの毛皮が赤色になり、次の攻撃を受け付けなくなってしまう。


 地上にいるほとんどのキングの色が赤に変わったとき、一緒に落ちている花蓮さんが何かを言っている。

 風を切る音で聞こえないので、目を見ながら首を振ると、俺の耳元に顔を近づけた。


「ねえ!! あいつ色が変わったんじゃないの!!??」

「そういう敵なんです!! 同じ属性の攻撃は2回効きません!!」

「私たちはどうするの!?」

「効かなくなるのは魔法攻撃だけなので、武器による通常攻撃は大丈夫です!!」

「ならよかった!!」


 よかったと安心していた花蓮さんは、落ちているうちにみるみる表情を曇らせていった。

 地上にいる敵がはっきりと見える距離になると、真央さんも俺の耳元に顔を近づける。


「なあ!! 見間違いじゃないと思うけど、あいつデカいよな!!??」

「大きいですよ!! 50メートルくらいあるんじゃないですかね!!」

「確認だけど、武器だけで戦うんだよな!!??」

「ふたりはそれでお願いします!!!! 魔法は僕に任せてください!!!!」


 地面からは白い煙が立ち上り、土が焼けて地表が熱を持っているようだった。

 両手を上げて水の力を極限まで溜め込む。


 俺の頭上には水の塊が現れはじめて、どんどん大きくなっていった。

 地面まで残り数秒で着きそうな時、溜め込んだ水をクレーターへ叩き落とす。


 水は俺たちを飲み込むことなく、地面でクッションになり受け止めてくれた。

 水の塊の中に圧迫死したキングが現れる中、熱によってみるみる水が蒸発していく。


 すべての水がなくなると、残っていたキング数十体がこちらへ向かってくる。

 まだ俺の体にしがみついているふたりへ指示を出す。


「ふたりで1体ずつ確実に倒してください。数体に囲まれたら臨機応変に対応をお願いします」


 俺の言葉でようやく体から離れて、それぞれの武器を抜き放つ。

 白色のオーラをまとい、迎撃態勢に入る。


 キングが近づいてくると、思わず上を見上げてしまった。


「やっぱり大きすぎだな……」


 俺の知っているキングよりも大きくなっており、強くなっている可能性がある。

 今の色が赤色なので、黄色にオーラを変化させて、脚を蹴りあげた。


「五月雨ライトニング旋風脚!!」


 雷をともなったかまいたちが迫りくるキングたちに襲いかかってくる。

 攻撃を受けたキングたちの毛皮が黄色になり、俺たちに覆いかぶさろうとしていた。


「あとは作戦通りにお願いします!!」


 巨体をよけるように散開して、キングとの戦いを始める。


 キングは魔法攻撃を防ぐのに特化しており、攻撃の属性で毛皮の色が変化する。

 赤は火属性、黄色は雷属性と次々と変わるため、2種類以上の属性を持っていないと魔法攻撃が効かない。

 

(炎の拳や、雷の刃を受けても倒れないか……俺には殴り続ける以外にやることはない!!!!)


 自分の拳を信じ、オーラから属性を消して戦う。

 黄色に染まったキングの足を殴り、骨を砕いた。


(よし! 戦える!)


 すべての熊を倒すために長期戦を覚悟して、キングを殴り始めた。


 花蓮さんと真央さんは、声をかけながらキングを誘導している。

 キング同士の体が衝突して、倒れたところを攻撃しているようだ。


(うまいな。真似をしてみよう)


 キングは同じフィールドに数体いるようなモンスターではないため、複数体現れた時の戦い方を知らなかった。

 ふたりに教えられて、俺も同じようにキングを転倒させる。


 転倒したキングの脳天をぶち抜くように手にオーラを集中させて、破壊力を上げた。

 拳を振り下ろし、キングの頭蓋骨を粉砕する。


(上級モンスターを一撃? 格もまだ5なのに……)


 体を痙攣させてキングが動かなくなるので、次の標的に取りかかった。

 キングを拳で倒しながら、自分が強くなっている理由を考える。


(そうか! 身体能力向上とかのバフ魔法もLvが50まで上がっているから、ゲームのときよりも俺は強くなっているんだ!!)


 強くなっているという実感がわいてくると思わずにやにやしてしまい、敵を倒すために握る拳に力が入った。



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 辺り一面にキングが倒れており、少し離れたところから様子を見ても、他に敵がいない。


「こっちはいないです」

「こっちも」

「こっちもだ」


 俺の後ろには花蓮さんと真央さんがいて、ふたりも周りに敵がいないことを確認したようだ。


「終わりです」


 緊張を解いて、その場へ崩れるように座って深く呼吸をする。

 花蓮さんも同じように地面に座って休んでいるのに、真央さんはそのままふらふらと歩いてどこかへ向かっていた。


「真央さん、どうしたんですか?」


 真央さんが反応することなく歩き続けるので、見守っていたら、地面を見つめながら崩れ落ちる。

 見ている場所へ目を移すと、真央さんが引いていたリヤカーの残骸らしき部品が落ちていた。


 手で顔を覆って震えはじめるので、俺が近づこうとする前に花蓮さんが駆け寄る。

 花蓮さんは真央さんの背中をさすりながら寄り添って、何かを聞いているようだった。


 話の内容が気になったので、俺も近づくと真央さんが声を震わせながら部品を手にしている。


「これは……みんなとの……思い出がつまったリヤカーだったのに……」

「いつも荷物をこれに載せてくれていましたよね」

「リヤカーの上で寝たこともあるし、モンスターの攻撃からも守ってくれたんだ……」

「そうですね」


 真央さんの言葉に花蓮さんが悲しそうに相槌を打っていたので、このまま任せることにした。

 しばらくすると真央さんが落ち着き、俺に顔を向ける。


「なあ、一也」

「なんですか?」

「私にリヤカーをプレゼントしてくれよ」

「いいですけど、どんなのがいいですか?」

「…………一也と一緒に選びに行きたい」


 真央さんが顔を赤くしながら言っており、そばにいた花蓮さんが驚いていた。

 俺が返事を口にしようとしたら、花蓮さんが慌てて俺を見る。


「私の意見も聞いてほしいから一緒に行きたい……だめ……かな?」

「俺は大丈夫です。あとはふたりで相談しておいてください」


 立ち上がって、防具の中から中年男性から回収した帰還石を取り出す。


「俺はこれがどこに繋がっているか確かめてから帰ります。ふたりを送りますね」


 ふたりが何かを言う前にワープホールを発動させて、静岡ギルドへ返した。

 俺はどこにいくのかわくわくしながら、持っている帰還石に力を込める。


「ここは…………いくか」


 俺は何度か見たことがある建物の前に立っていた。

 驚きと同時に落胆の気持ちが沸き上がるが、ぐっと飲みこんで建物へ入るために歩く。

 建物に近づくと、入り口に大きな木の立札に達筆な文字が書かれていた。


【世界冒険者協会 日本支部】

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