全国大会編⑪~リバイアサン遭遇戦~
《合衆国埠頭》
俺はモンスター討伐のために、国際連合の要請によって集まった全艦隊に号令をかけた。
「これより海の怪物退治へ出発する。全艦出撃」
俺の声が届き、港に停泊していた軍艦や沖合にいた船が動き始める。
軍艦の数はここにいるだけでも50隻を超えており、
自分の乗っている船は、装甲がすべてミスリルでできており、モンスターなど相手にならない。
今回の討伐戦は世界中の航路を脅かすモンスターを倒すためと聞いている。
(モンスターがこの船を落とせるはずがない)
俺の乗っている船以外にも、各国が一隻しか持っていないと思われるミスリル装甲の軍艦を出してきていた。
それらを見ながら、出発直後にもかかわらず今回の勝利を確信してしまう。
(貨物船や漁船などは破壊することはできても、この艦隊で倒せないモンスターはいないだろう)
俺はこの討伐戦の報酬でなにをしようか考えてしまい、思わず頬が上がってしまった。
国際連合に加盟するほとんどの国から討伐報酬が支払われるため、自分のところにいくら入るのか想像もできない。
(任命してくれた大統領には感謝しかない)
手に入った金で何か送ろうと考えていた時、海から勢いよく水柱が現れる。
その水柱は空の見えない高さまで到達しており、目視で上まで確認できない。
突然の出来事に動揺してしまい、思わず突如現れた噴水に見入ってしまった。
通信官が大量の連絡を受けて戸惑っており、私へ指示を仰いでくる。
「艦長! 停止しますか!?」
「そんなことっ……なにが起こった!!??」
通信官へ目を移した一瞬で、何かが起こり数十隻の軍艦が【切られた】ように海に沈んでいた。
息を飲んで沈んでいる軍艦を眺めてしまう。
すると、再び海から現れた水柱が海上にいる軍艦を薙ぎ払うように振るわれた。
水柱に巻き込まれた軍艦は当たった場所から切断されており、ミスリル艦も沈んでいる。
世界中の海で暴れていたモンスターは、今までのものとは違い、軍艦がまったく通用しない。
その事実だけでも世界に伝えられるように、全回線を使用して今後のために動く。
「なんとしてもこの映像を世界中に送れ!! 今までのモンスターとは違う!!!!」
「分かりました!!!!」
既に半分以下になってしまった軍艦に撤退命令を出してから、撮影を始める。
軍艦に急な方向転換は難しく、逃げようとしている最中にも次々と沈められてしまっていた。
俺はなんとしても生き残って、このことを伝えられるように天へ祈る。
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絵蓮さんを樹海に放りこんできて、俺は空に乗ってスカイロードを探していた。
空は外に出られて嬉しいのか、歌いながら雲の上を飛んでいる。
「ふふ~ん♪ えっ!? なんだ!?」
上機嫌に翼を動かす空の胴体を急に何かが貫いてきた。
突然のことに、対応が遅れてしまう。
俺が何もできない時間で攻撃が終わり、空が落下を始める。
『天音!! 空を家で治療してくれ!!』
『急にどうしたんですか!?』
『分からない!! 空が死ぬ前に早く頼む!! 後、念のために黒の装備を送ってくれ!』
『空ちゃんが!? わかりました!!』
白い光に包まれて空がいなくなり、俺の体に黒騎士の装備が装着された。
自由落下で雲から抜けると、眼前には海と沈没している船が多数見受けられる。
(なにが起こって……まさか!!)
海でこんなことが起こるのは1つしか思い浮かばない。
先ほどの空への攻撃も、【リバイアサン】の高水圧噴射だと考えることができる。
船が切断されたように半分になったものや、何度も攻撃を受けて原型を留めていないものが海に広がっていた。
まだ動いている船をリバイアサンから守るために、戦闘を開始しようとする。
全身に魔力を巡らせた瞬間、俺の腹部へ今まで受けたことがないような衝撃が伝わってきた。
海から噴射されていた攻撃を、魔力を茶色に変えて全身で受け流す。
「ぐぅ!? アースパリィ!!」
水をなんとか弾くものの、俺の体はまだ落下している。
まだ沈んでいない適当な船の残骸に向けてテレポートを行なった。
気配察知でリバイアサンのいる場所を探るものの、移動する気配が速すぎて位置が特定できない。
範囲が絞られていないと、戦うことすら困難な敵だとは思わなかった。
足元の船が沈もうとしているので、気配察知で発見した人を救助しながら攻略法を考え始めた。
(落ち着け……相手はモンスター、必ずなんとかできる……)
残骸の中に残っていた人や、沈んでしまった船の中に残された人を救援ボートへ乗せる。
リバイアサンは最初の攻撃以降、まったく近づいてくる気配が無い。
ポセイドンの加護により自由に海の中を捜索できるので、死んでいない人をできる限り見つけようとしていた。
突如、後方より急速接近してくる気配がある。
後ろを向こうと思ったら、海の中にいたはずの俺が海上へ放り出されていた。
軽い脳震盪を起こしたのか、体が自由に動かない。
そのまま金属のようなものに打ち付けられて、数秒間立ち上がることができなかった。
ホーリーヒールをかけて立ち上がり、リバイアサンに備えて周りを見回す。
俺はまだ残っていた船の上に放り出されていたようだった。
気配察知でリバイアサンがこの軍艦の周辺を移動しているのが分かる。
(攻撃をするときは止まるはずだ……そこを叩く!)
錬気と気配察知を最大出力で行い続けて、リバイアサンが止まるタイミングを見逃さない。
何体もいるかのような錯覚を起こすほど気配が多方に存在していた。
俺の頭だけでは処理を仕切れない情報量に頭が熱を上げる。
気配察知一旦止めようとした時、リバイアサンが急に止まった。
(そこか!!!!)
もうこの一瞬しか姿をとらえられないため、気配の上空にテレポートを行う。
真下の海中に向かって全魔力を放つように拳を振り下ろす。
「五月雨ライトニングフィスト!!!!」
40個の雷の塊がしぶきを巻き上げながら海の中へ吸い込まれていった。
着弾までは確認できないため、俺は戦うためにそのまま海へ入ろうとする。
しかし、海に近づいた時、海中から巨大なものが現れた。
「でかい!?」
リバイアサンの尻尾のようなものを全身に受けて、俺は宙に向かって弾かれた。
クラーケン程度だと思っていたリバイアサンは、尾ひれだけでも数mほどあることが確認できた。
(全長はぬらりひょん以上あるかもしれない……)
想像以上に苦戦しそうな相手へ思いをはせて、海の上へ着地する。
海底神殿の敵を倒しすぎたおかげで、俺は意識すれば水の上に立つことができる。
反撃を行おうと拳を振り上げると、リバイアサンはこの場所からいなくなってしまった。
振り上げたこぶしを下ろして、一番近くにいた救援ボートへ近づいた。
「今からみなさんをあの船へ乗せます。いいですね?」
1隻だけ残った船を示しながら救援ボートの人たちへ言葉をかける。
その後、動いていた船を停止してもらってから、複数の救援ボートを回収してもらう。
回収中にリバイアサンが来ないように警戒をしている。
何人もの人にお礼をしたいと船の中へ入るように言われたが、絵蓮さんを樹海に残したままだということを思い出した。
「そういうのはいらないので、もう帰ります」
「そう言わずに」
「では失礼」
複数の人に囲まれながら、偽造帰還石を取り出してワープホールを行なった。
樹海の入り口について、レべ天に黒騎士の装備を家に戻してもらうことにした。
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