京都攻略編⑳~旅館で休息~

「寝た後じゃだめ?」

「私はずっと我慢してきました! 今すぐじゃないとあなたに毎日必ず転ぶ呪いをかけますよ!!」

「なんだよそれ……」


 レベ天が本気かどうかわからないが、面倒な呪いをかけられるのは勘弁してほしいので身を起こす。


「それで、お前はなんで怒ってんの?」


 レベ天は俺の言葉に我慢ができなくなったのか、姿を戻してから顔を真っ赤に染めて俺へ馬乗りしてくる。


「あなたが私のことを何度もレベ天と呼んだことを謝ってください!!」

「……はい?」

「私には照屋天音という名前があると何度言えばわかるんですか!?」


 レベ天が俺の上で烈火の如く怒り始める。

 俺は無意識にレベ天と言葉にしていたことを悔やみつつ、レベ天の要望を聞くことにした。


「ごめん天音、これからは気をつけるよ」


 前からレベ天と呼ばれるのを嫌がっていたので、少しだけ謝罪の気持ちを込めて謝る。

 しかし、レベ天は俺を解放せず、まだ何かを訴えようとしていた。


「謝っただろ? まだ何かあるのか?」

「後10回です」

「は!?」

「私は11回もレベ天と呼ばれたので、後10回は心を込めて謝ってください!」

「お前、本気か!?」

「本気に決まっているでしょ!!」


 レベ天は俺の胸に手を叩きつけてきた。

 あまり痛くないが、レベ天には色々助けてもらったり無理を言ってしまったので謝り始めた。


 途中、心がこもっていないとか、言い方が雑など言われながらも、指定された回数謝ることに成功する。


 レベ天へ直接レベ天と呼ばないことを心に刻んでから寝ることにした。


 レベ天がテレビを見ながら、寝ている俺へ声をかけてくる。


「花蓮さんから電話がきていますけど、どうしますか?」

「天音が出ていいよ。適当に休んで帰ってもらって。俺は寝る」

「はあ……一也さんがそれでいいならそう連絡しますね」

「よろしくー」


 よく分からないことを含めて、長い1日が終わったことに安心しながら俺は眠りに就いた。

 俺のスマホに出たレベ天が焦るように俺へ何かを聞いているような気がするが、俺の意識はその直前になくなっていた。



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「天音ちゃん! 馬鹿はどこにいるの!?」

「すみません、ここの名前がわかりません」

「どういうことなの!?」


 一也さんのスマホには花蓮さんから電話がかかってきており、一也さんから言われた通り私が対応している。


 後ろで寝始めてしまった一也さんを気にしつつ、必死にこの旅館の名前を探す。

 しかし、見つけることができず、花蓮さんへ申し訳なく謝る。


「ごめんなさい、部屋の中に名前が分かりそうなものが見当たらないです」

「場所くらい分かるでしょ!?」

「えっと……私も連れてこられただけなので地名はちょっと……」

「……天音ちゃん、一也のことを匿ってない?」


 花蓮さんが私の言葉を疑ってきているので、私は急いで弁解にする。

 一也さんを見たら、寝息を立てているので起きたら必ず文句を言うことを決めた。


「そんなことはないです。本人が寝ちゃっているだけで……」

「は!? あいつこんなことがあったのにもう寝てるの!!??」

「はい……みなさんへ、適当に休んで帰ってもらえと伝言が……」

「絶対見つけ出してなぐってやるから待っていなさい!!!!」


 花蓮さんが怒鳴ると同時に電話が切られてしまった。


(一也さん、どうなっても知りませんから)


 私は机へスマホを置いて、テレビへ目を向ける。

 テレビではほとんどのチャンネルで同じニュースが報道されていた。


 先ほどまで行われていたモンスターとの京都防衛線について流れており、京都府ギルドの崩壊現場から中継されているような内容ばかりだった。


 どこを見ていても内容が似ているので私も寝ようとしたとき、花蓮さんたちがテレビに映っている。

 マイクを持っている人から、巨大な人型のモンスターと戦った英雄と紹介されていた。

 

 カメラを向けられても不機嫌そうな花蓮さんのかわりに、佐々木さんが殺気立ちながら質問へ答えようとしている。


「私たちは観光にきただけで、そんな風に呼んでもらう資格などありません」

「しかし、皆さんがいなければあのモンスターは倒せませんでしたよね?」

「主に戦ったのは、黒騎士ですよ。私たちは付いていっただけです」


 何かを考えているのか、答えている佐々木さんが手を握り締め始める。

 中継をしていた女性はそれを疑問に思わずに、佐々木さんへの質問を止めない。


「黒騎士と呼ばれる人物は今どこに?」

「さあ……私たちも知りたいくらいです」

「本当ですか? 私たちにだけ教えてください」


 中継の人の言葉を聞いて、後ろにいた花蓮さんや真央さんがその人をにらみ始めていた。

 その表情を見て、テレビ越しに一也さんに対する殺意を感じてしまう。


「ひっ!?」


 私は激しい怒りを感じ取り、思わず悲鳴を上げてしまった。

 私の後ろで気持ちよさそうに寝ている一也さんを見て、私が危機感を覚える。


(みんなをこの状態で放置したままにして一也さんは平気なのかな……)


 さすがに中継の人も4人の表情に気づいたのか、後ずさんでいた。

 マイクを持つ手が震えるものの、仕事を全うしようと質問を止めない。


「えっと……最後に何か一言お願いします」

「特にありません」

「あ……ありがとうございました」


 中継の人がお礼を言っている時、後ろで和服を着た女の子が花蓮さんたちへ声をかける。


「見つけました!! あっちの方向です!!」

「でかした明ちゃん!!」


 中継の人をにらむように見ていた真央さんがそれを聞いた途端に走り出す。


 その表情は獲物を見つけた獣のように猛っており、4人全員がテレビの中から姿を消した。

 私は見ていられなくなったので、テレビの電源を切る。


(どうしよう、どうしよう! 陰陽道でここがわかっちゃったんだ!!)


 見つけたと言っていた女の子のことを一也さんが巫女と呼んでいた。


 おそらく一也さんの場所を見つけるために陰陽道が使われたのだろう。

 私は巻き込まれたくないので、急いで一也さんを守る方法を考える。


(えっと……えっと……) 


 考えるために部屋の中をぐるぐる回っていても、何も思い浮かばない。


 布団で気持ちよさそうに寝る一也さんを見たら、私だけ焦るのもおかしいと思い始めた。

 一也さんに近づいて、頭へ手を添える。


「私はあなたを見守っております」


 私も一晩中行動して眠いので、家に戻って寝ることにした。

 私が帰る直前、部屋の電話が鳴り始めていたが、嫌な予感しかしないので出ずに家に戻る。


 家では私が用意をした快適なベッドが待ってくれており、思い切り飛び込んだ。


『守護神、話があります。すぐに来てください』

『はい……』


 しかし、私は寝ることができず、富士山にいる白龍が私を呼んでいた。

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