京都攻略編⑱~ぬらりひょん討伐戦~
走り出すのと同時に、巫女の前に盾を2枚持った俺の姿に偽装しているレべ天が立つ。
「この人の守りは僕に任せて、みなさんは鬼をお願いします」
レべ天のスキルによって俺と同じ姿ができると説明しているため、4人はその言葉に答えることなく散開した。
ぬらりひょんは、苛立つようにどす黒い
「ゴミどもが集まったからと我を倒せると思うなよ!!」
俺は【黄】色い魔力を身にまとい、ぬらりひょんへ拳を突き付ける。
「ライトニングフィスト!!」
雷の塊が拳から撃ち出されて、触れるものすべてを感電させていた。
ぬらりひょんも例外ではなく、体が硬直して動けなくなっている。
「ぐぅ……」
「お前がゴミと呼ぶ人の力をなめるなよ」
拳をぬらりひょんへできる限りの速さで打ち付ける。
炎の拳がぬらりひょんの体をとらえ、最後に炎の塊を撃ち出す。
「ソニックバーニングフィスト!!」
「ば、ばかな!!」
炎の塊と共にぬらりひょんが建物へ向かって吹き飛ばされていった。
追撃をしようとした時、俺の前に鬼が現れる。
鬼の進行を阻止する影が2つ俺の背後から飛び出してきた。
「あなたはあいつの所へ!」
「ここはいい! さっさと行け!」
花蓮さんと真央さんが俺を見ることなく鬼を倒し始めている。
矢や魔法も飛んできて、援護されているのがわかった。
「ここはお願いします」
俺は茶色の気に切り替えて、ぬらりひょんを最高速度で追いかけ始めた。
ビルの中でようやく炎の拳から解放されたぬらりひょんが、俺を迎え撃つように刀を振るってきている。
茶色の気にさらに魔力を込めて、刀を迎え撃つ。
「アースガード!!」
「なんだと!?」
俺の体に刀が弾かれて、ぬらりひょんの胴ががら空きになった。
普通の錬気を全力で行い、手刀を振り抜いた。
「五月雨一刀両断!!」
ぬらりひょんがビルの瓦礫と一緒に地面へ沈んでいく。
俺はテレポートを行い、隣のビルの屋上へ移動する。
錬気を止めて、崩れ落ちるビルを注視した。
消耗速度が速くなるが、錬気に属性を纏わせることができるようになっていた。
バーニングフィストやライトニングボルトなど放つ魔力を身にまとっているだけ。
それにより、戦闘方法の選択肢が大幅に増えた。
ただ、持っていない魔法の属性は使えないため、早く他の魔法を覚えたい。
ビルの瓦礫からぬらりひょんが出てくる気配が無い。
止めの拳を振り下ろそうとしたら、ビルの瓦礫全体から黒い気が溢れだしてきた。
ビルの瓦礫がすべて吹き飛び、それに巻き込まれた周辺の建物や俺の立っているビルが崩壊を始める。
俺はぬらりひょんがいる黒い気の中心へ向かってビルから飛び降りた。
ぬらりひょんは地面に倒れたまま動かず、黒い気を放出させ続けている。
俺が警戒をしながら近づくと、いきなりぬらりひょんの体が震え出す。
(なんだ?)
こんな反応を見たことが無いため、後ろへテレポートして様子をうかがう。
すると、ぬらりひょんが黒い気を周囲から集めているように見える。
『一也さん! 私たちの周りにいた鬼が一斉に消えました!!』
『消えた……ね……』
俺は目の前で集まっている黒い気が街中にあふれていた鬼の力だと判断した。
ぬらりひょんの上空へテレポートして、黒い気を集めている主に拳を振り下ろす。
「五月雨バーニング……」
「もうゆるさんぞ!! 絶対に殺してやる!!」
「ぐっ!!」
黒い気が中心から弾けるように衝撃が放たれて、俺は空中で無防備になってしまう。
必死に地面を探して、テレポートを行おうとした。
(地面は……どこだ!?)
俺の体は高速で回ってしまっているため、地面を見ることができない。
すると、俺の頭の中にレべ天以外の優しい声が聞こえてきた。
『あなたを召喚します。よろしいですか?』
このままではどんな風に衝突してしまうかわからないため、この優しい声の主に身をゆだねる。
『頼む』
頭の声に返事をしたら、上空へ放り出された時と同じように青い光が俺を包んだ。
次の瞬間には、レべ天が俺の前に立ち不思議そうに周りを見回していた。
「どうなっているんだ?」
「ひゃ!?」
レべ天が俺の姿で悲鳴を上げるので、頭を軽く叩いてしまう。
「その姿でその声を出すな」
「なんでいきなり現れているんですか?」
「知らん」
俺がレべ天と話していたら、後ろから移動直前に聞こえた声を同じ声が聞こえてくる。
「私の力です」
「ん?」
俺の後ろには【巫女】がおり、笑顔で俺を迎えていた。
俺が顔を向けたら、急に険しい顔をする。
「来ます!」
巫女が視線を送る先にはビルよりも大きくなった巨大なぬらりひょんが現れていた。
4人の仲間もここへ集まりながら、ぬらりひょんを見る。
真央さんが俺へ詰め寄ってきた。
「次はどうする!?」
他の4人も俺を見て指示を待っているようだった。
その時、ある声が俺の耳に届いてくる。
「負傷者はあちらへ! 戦える人は集まってください!」
絵蓮さんが一瞬こちらを見るものの、指示を止めずに1人でも多くの人を救おうと動き続ける。
『レべ天、あっちを頼む』
『……わかりました』
レべ天へ負傷者の回復をしてくるように心の中で指示をして、ぬらりひょんへ視線を戻した。
(できることを精一杯やる……それだけでいい)
俺にできることは拳を振るうことだけ。
真央さんを押し退けて、俺は皆の先頭に立つ。
「俺が先駆けを務めます。後はあいつを倒すために全力で戦ってください」
巨大化したぬらりひょんがこちらへ向かって歩き始めていた。
ひるまずに走り始めようとした時、巫女が祈るように俺たちを見ている。
「京都の守護者として願います……この街を救ってください!!」
俺たち5人の視線を受けて、頭を深く下げながら巫女が思いを託してきていた。
また巫女が言葉を間違えているので、ぬらりひょんへ視線を戻しながら訂正させる。
「違うだろ……一緒に戦おう。きみは守られるだけの存在なのか?」
「え……」
巫女は頭を上げてから、驚いたような目で俺を見続けたまま動かない。
ぬらりひょんは確実に俺たちへ近づいてきているので、強制的に連れていくことにした。
「真央さん、彼女を背負ってください」
「どういうこと?」
真央さんは言われたことがわからないのか、聞き返してきている。
そんな時間はないので、俺が抱えようと動こうとしたら、巫女が口を開く。
「私は自分の足で行きます!!」
「そうか、なら行くぞ」
「はい!!」
俺たちは6人で巨大化したぬらりひょんへ向かって走り始めた。
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