京都攻略編⑯~京都解放~
5本の青い光の柱が空へ向かって放たれ続けている。
建物を壊しながら【結界解放】を確認して、俺はレべ天へ連絡をした。
『レべ天! 合図をしたらこのドラゴンを富士山へ!! それと同時に姿を戻して【あの】装備を俺へ!』
『わかりました! ドラゴンの角は折ってくれると助かります』
『了解!』
俺はドラゴンを羽ばたかせて、持っていた剣を振り下ろしてそびえ立つ高層ビルを破壊する。
「一刀両断!!」
両手剣熟練度Lv5で習得できる【一刀両断】。
剣で届く範囲の対象を切断するスキル。
自分の能力と武器の攻撃力で判定され、この数値よりも耐久度が低いものはすべて切ることができる。
ビルを地上まで剣を降ろし続けて、ビルの中央をえぐるように切った。
地上に着くと、ドラゴンが目を輝かせて俺を見る。
『今の凄いね!!』
「ああ。でも、もうお別れだ」
『どういうこと?』
ビルが俺とドラゴンへ向かって崩れ落ちようとしていた。
ドラゴンが倒れてくるビルから逃げようとするので、俺は剣でドラゴンの角を叩き切る。
「ごめん!!」
剣がドラゴンの角に当たると、紫電が天へ向かって放たれた。
俺はドラゴンから離れて、レべ天へ合図を送る。
『今!!』
『はい!』
俺の手から剣が消えると同時に、黒い装備が全身を覆う。
ドラゴンも消えてくれており安心していたら、ビルが俺へ倒れてきている。
「五月雨旋風脚!!」
倒れてくるビルを粉々にして、瓦礫の上に立つ。
俺はこれから自らが率いていたモンスターをこの手で倒さなければならない。
(人間が利用してばかりで本当にすまない。最後は確実に殺してやる)
俺は拳に力を込めて、京都の街を暴れまわるモンスターを倒し始めた。
討伐中に、レべ天へイベント進行の手伝いをしてもらう。
『レべ天、ここの守護者と話をさせてほしい』
『それはできません』
『なんで?』
『ここはフィールドで概念的な存在なので、私が交信するのがやっとです』
『なら、伝えてほしいことがある』
『いいですよ』
各場所に現れていた鬼は結界を守る守護者のような存在で、今はそれをすべて倒した。
結界の守護者がいなくなり、京都を守っていた結界が破壊されて、また新たに結界を作らなければいけない。
それが行えるのは【陰陽道】を使える人物で、今後京都の守護をすることになる。
俺はレべ天へ現在この京都を守護している人物へ伝言を頼む。
『【安倍清明へ、お前がしたように、生き残った陰陽道を使える人に力を継承しろ】、こう伝えてくれ』
『安倍清明さん……ですか? ……わかりました。伝えてみます』
レべ天からの連絡を待ちながらモンスターを倒していたら、急に青い光に体を包まれる。
「何事!?」
テレポートを行なって光を振り払おうとしても、まったく離れない。
ワープホールを行おうとしたら、スキルが発動しないため、レべ天へ相談する。
『なんか青い光に包まれそうなんだけど』
『~~~』
魂で繋がっているはずのレべ天の声が遮断されたように聞こえなくなる。
動くのを止めて、頭の中へ神経を集中させたら、レべ天以外の声が響いてきた。
『あの子を頼む』
聞き覚えのない声が頭に聞こえた瞬間、なぜか俺は京都のはるか上空に投げ出されていた。
「ちょっと待って!! なんで!?」
移動系のスキルが一切使えなくなり、俺は自由落下しながら地面へ目を向ける。
(あれは……)
俺は下に見える光景を見て、抗うことをやめてこのまま落ちてやることにした。
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「巫女様! ここは危ないので早く離れてください!」
「私はここにいないと……」
「あなたは本家から見捨てられたんですよ! 分かってください!」
左手が折れた女性が私の手をつかんで、ギルドから出そうとしている。
その他にも、佐藤一也によって負傷させられた冒険者やギルド員がギルドから出ようとしていた。
(この人たちは私の防衛を任された人たちなのに……)
今日の夕方に神託があり、安倍一族【全員】がこの場所に集まる必要があると伝えられた。
しかし、今ここにいるのは本家では私だけ、他は分家の人と護衛の方々。
ここにいる人で陰陽道を使えるのは私しかいないため、必死になにが起こっているのか占う。
ただ、最近はどう占っても【佐藤一也が京都を壊滅させる】としか結果が出ない。
この騒動の原因も【佐藤一也という人物が原因】と出ていた。
(あの人がこんなことをすることがない……)
佐藤一也さんを直接見たが、私にはそんなことをするような人には見えなかった。
とてもまっすぐな心を持って、ギルドに来た時もすごく楽しんでいるように感じた。
「お、おい!! あれを見ろ!!」
外に出ていた人が空を見上げながら叫んでいる。
私もその人が叫ぶ方向へ目を向けると、青い光が空へ立ち上っていた。
「何あれ……」
光の柱は全部で5本あり、鬼が出ると言われる場所と同じところにあるようだ。
私が光の原因を占っても、【佐藤一也】としか出ない。
(占いがおかしくなってる……)
佐藤一也さんが京都に来てから、すべての占い結果に【佐藤一也】と出るようになった。
自分の力に不安を覚え始めていたら、地面が揺れるように震え始める。
「巫女様! 外へ!!」
「え!? 駄目です!!」
私の抵抗もむなしく、数人の人に抱えられながらギルドから出てしまった。
震動は徐々に大きくなり、私がギルドの外へ連れ出されたらさらに大きくなる。
この震動の原因も【佐藤一也】と出ているため、私は力に憤りを感じた。
やがて震動が収まると、周りから安心したような声が聞こえる。
いきなり、ギルドの地下から何かが吹き出すように現れた。
そこから大量に鬼のようなモンスターが街中に放たれてしまう。
私たちの近くにも鬼が現れて、護衛の人が簡単に振り払われてしまった。
私は逃げることしかできず、鬼を避けるように走っていたら人に当たってしまう。
「すみません! 早く逃げましょう!」
「なぜ逃げる必要がある?」
その人は私を笑顔で見つめていた。
長くて白い髪をなびかせて、暗い灰色の皮膚と額には小さい角のような突起物があった。
人とは思えない容姿をしており、その人は顔を大きくゆがめながら高笑いをする。
「結界は消え、血の印が刻まれた!! 百鬼夜行の復活だ!! ハハハハハ!!!!」
私はその人から逃げるように少しずつ離れ始めた。
2mほど離れたら急に笑うのを止めて、私をにらみつけてくる。
「後は、お前が死ねば我らが再び封印をされることはない!!」
その人は刀のような物を抜き、私へ向けてきた。
ゆっくりと歩き始めるので、私が逃げようとしても退路を鬼に塞がれている。
「嫌……嫌……」
「受け入れろ。これが運命だ」
これが私の運命だとしても、最後まで受け入れたくない。
安倍家の汚点として生まれたが、幼くして【力】に目覚めたため私は巫女として祭り上げられた。
それからは人形として生きるように強いられ、自分の意思というものを持つことがほとんどできなかった。
(あの人に……私と同じくらい小さいのに、私を守ってくれようとした勇気を持っている男の子へ私の気持ちを伝えたい)
私が夜に鬼の出ると言われていた場所へ放り出された時に救ってくれた男の子。
小さなドラゴンと一緒に逃げてからのことはわからないため、この気持ちをずっと心の中に留めていた。
目の前に刀を突きつけられ、刀が振り下ろされようとしている。
私は最後まで生きるのを諦めたくない。
「まだ死にたくない!!」
すると時が止まったように、刀が私の頭上で止まっていた。
自分の身に起きていることが分からない。
『ようやく自分の気持ちをさらけ出すことができたな』
「いっ!?」
激しい頭痛に襲われ、頭が声のようなものが鳴り響いてくる。
頭の中へ無理やり何かをねじ込まれているような痛みが続き、私は膝と頭を地面へ着いてしまう。
「ぐぅ!?」
『心の底から望むのだ。お前は誰に助けてほしい?』
痛みを無視するように、声が脳内へ送り込まれてきていた。
周りに護衛をしてくれる人がたくさんいるものの、あくまでも【巫女】としての私しか守っていない。
(力が使えない私をどれだけの人が守ってくれるのだろうか……)
私のことを助けてくれる人について、いくら考えても1人しか思い浮かばない。
(背中しか見たことが無い、名前さえ知らない男の子)
私の願いが見通されており、より痛みが強烈になり叫ぶような力強い声が届けられた。
『叫べ! その名と願望を!!』
耐え難い痛みを乗り越えるように立ち上がり、私は空に向かって顔を向ける。
周りも動き始め、私が居た位置に刀が振り下ろされていた。
何度も行なった占いの結果を信じて、私はあらん限りの力を込めて名前を叫んだ。
「佐藤一也さん!!!! 私のことを助けて!!!!」
私の声を聞いて、刀を振った人は驚くように周りを見るが、なにも起こらない。
安心したのか、笑みを浮かべながら私を見下す。
「我らを封じていた力を感じたが、お前が未熟でなにも起こらんな!!」
「うそ……」
信じて助けを求めたのになにも起こってはいないようだった。
自分の力を振り絞った反動で、場へ膝から崩れてしまい、頭を垂れてしまう。
「我ら復帰の祝いだ。一瞬で首をはねてやろう」
「……」
私は希望から絶望へ一気に落とされて、もう何もする気が無くなってしまった。
力を使ってなにも起こらない悔しさで涙が溢れてきてしまう。
『諦めるな。もう来ている』
「え!?」
先ほどと同じように声が聞こえ、本当に佐藤一也さんが来てくれたのか期待してしまう。
私が顔を上げたことが意外なのか、刀を振り下ろそうとしていた人が私を見る。
「なんだ娘、遺言か?」
「う……」
圧倒的な力を持つ存在に見下されて、私は思わずすくんでしまった。
ただ、今から助けが来ることを信じてその人へ言葉を返す。
「今から私は助かります」
その人は不気味に頬を上げて、私の言葉を笑っているようだった。
「それはない。死ね」
刀が振り下ろされようとする瞬間、上空から赤い光が降り注いでくる。
赤い光は私を囲うように地面を吹き飛ばす。
刀を持っていた人も、その炎に当たらないように離れている。
「お前が俺を呼んだんだな」
「なんであなたが……」
私を守るように立つ人は、全身が黒い防具で覆われて赤い布をはためかせていた。
私でも知っているその姿は、世間で【黒騎士】と呼ばれている人だった。
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