京都攻略編⑫~1年前の京都より~
(お母さんと喧嘩をして、お家に戻れなくなっちゃった……)
お家から出たことが無かったので、お母さんに自由に空を飛んでみたいと言ったら、怒られてしまったので反抗するように家を出てしまった。
初めて見る家の外の風景を楽しみながら飛んでいたら、いつの間にか私は自分のいた場所が分からなくなっていた。
(あそこで休もう)
お家と似ている雰囲気の場所があったので、少しそこで休むことにした。
私が地面へ降りたら、後ろから何か声が聞こえてくる。
「きゃああ!」
大きな声を出されて驚いてしまい、声が聞こえた方を見ると小さな人間が倒れていた。
お母さんから人間は弱い生き物と聞いていたので、助けてあげるために近づく。
「その子から離れろ!!」
女の子と私の間に入ってきた人間が私へ向かって、棒のようなものを向けてきている。
叩かれて痛いのは嫌なので、ここから離れるために翼を広げた。
その時、私や小さな人間たちの周りを青い光が漂い始める。
(きれいだな……)
初めて見る幻想的な光景に見惚れてしまい、飛ぶのを忘れてしまった。
光が強くなってきたら、急に後ろから嫌な気配を感じる。
お母さんが怒った時と同じように地面が揺れると、僕と小さな人間の間に赤い大きなモンスターが現れた。
そのモンスターはお母さんの言っていた悪意のある力をともない、僕たちを敵視してきている。
(こいつが攻撃したら小さな人間が死んじゃう!)
お母さんから弱い者は守ってあげなければいけないと教えられていたので、僕はその赤いモンスターへ向かって【力】を使う。
僕の赤い雷が赤いモンスターに当たると、そのモンスターはこちらを見る。
(お母さんよりも弱い力だから1回じゃ倒せない)
小さな人間を守るために、自分よりも大きな赤いモンスターと戦い始めた。
赤いモンスターが大きな棒を振るってくるので、当たらないように注意しながら力を使う。
なんとか赤いモンスターを倒したら、棒を持った小さな人間が近づいてきた。
「大丈夫?」
小さな人間が心配しているような目を向けてきてくれていた。
力を使いすぎて今すぐ飛べなくなってしまったが、小さな人間を守ることができて良かった。
(お母さん……褒めてくれるかな?)
問題ないとその子へ伝えるために、顔で小さな胴体を撫でてあげた。
これをお母さんにしてもらうと安心するので、その子の不安を取ってあげたい。
棒を持った子の後ろから、違う声が聞こえてきた。
「このままだとその子が殺されちゃいます!」
別の子が声を出したら、ここへ大量の人間が集まり始めている。
何かを持った人間が僕たちに向かって走ってきていた。
棒を持った子が僕の腕を引き、その集団から離れようとしている。
顔を見たら必死に僕を助けようとしているのがわかった。
「きみはここにいたらだめだ!」
その子に引かれた方向へ進み始める。
僕たちが離れ始めたら、後ろでもう1人の子が大きな声で何かを言っていた。
「あの子は私を助けてくれたんです!! 殺さないでください!!」
「【巫女】様退いてください! モンスターは倒さなければいけないんです!」
「だめです!! お願い!!」
僕の手を引く子が必死に走っていたので、その子を抱きかかえて飛び立つ。
胸に抱えられた子が下を見ながら小さく何かを言っていた。
「すごい……」
飛び立ったものの力を使いすぎていたようで、少しだけしか飛べず、あまり人間のいない森へ降りた。
その子を地面へ降ろしたら、僕へ抱きついてくる。
「きみ凄いね!」
小さな目を見開いて、何かを言ってきていた。
遠くから何か騒がしい音が聞こえてくる。
その子もその音を聞いたのか、ゆっくり僕から離れた。
「ここで待っててね!」
その子は僕に向かって白い歯を見せながら何かを言って、どこかへ行ってしまった。
もう守らなくてもよくなったので、少し休んでから飛び立つことにする。
しばらくここにいたら、なにかが集まってくる気配を感じた。
力を使わないために森の奥へ身を隠す。
様子をうかがっていたら、さっきの集団がここまで追ってきていた。
「あの方々の話ではこの周辺にいるはずだ! 探せ!!」
中心にいた人間が何か叫んだ後、その場から集団が散らばる。
僕のいる方向にも来たので、見つからないように慌てて隠れた。
(見つからないかな……)
もう少しで飛べそうになるまで休めた時、僕が抱えていた子が戻ってきていた。
「どこにいるの!? 戻ってきてよ!!」
その子は何かを持って、走りながら呼ぶような声を上げている。
(もしかして、ここに戻ってきたということは僕を探しているの?)
空で大きな音が聞こえると、その子は持っていた物を地面へ置いてここから離れていく。
その子が置いたものが気になってしまった。
(何を持っていたのかな?)
その子の匂いがする白い物の上に、美味しそうな匂いのする食べ物が乗っていた。
匂いに釣られて一口食べてみたら、口の中で幸せが弾け飛ぶ。
(これ凄い!)
夢中でそれをすべて食べていたら、人間に囲まれそうになっていた。
飛び立つために翼を開いたら、大きな音と共に翼が痺れてしまう。
同じような音が聞こえて、僕の体に何かが当たり続けている。
(飛べない!?)
翼がうまく使えないので、地面を走り始めた。
人を殺さないように気を付けていたら、なぜか破れない物に覆われてしまう。
力を使ってそれをなんとかしようと思っても、僕は身動きが取れなくなってしまった。
それから、苦痛の日々が続くことになる。
よく分からない場所へ連れてこられて、様々なモンスターと戦わされたり、人間からも攻撃されたりした。
いつからか、自分へ近づくものすべてを拒否するように力を使うようになる。
拒否するように力を使い続けていたら考えることもできなくなり、お母さんのことや初めて食べた美味しい物の味さえも思い出すことができなくなる。
(すべてを破壊したい)
自分のいる場所さえも気に入らないので、力を全力で放出して壊そうとした。
力が足りないのか、何も破壊できない。
(モウドウデモイイ……)
心を閉ざし、自分へ干渉しようとするすべてを拒否することにした。
誰も僕に近づかなくなって、ひたすら見えない壁の向こうから観察されるようになる。
動くことすらも諦めた時、ある人間が近づいてきた。
(殺す殺す殺す殺す殺す殺す)
その小さな人間は僕に向かって何もすることなく近づき続ける。
【力】を受けてもこちらへ来るので、噛みついて息の根を止めようとした。
僕が噛んだ瞬間、何か嗅いだことのある匂いがしてきたような気がする。
なんとかしてその人間の肉を千切ろうとしたら、ある声が聞こえてきた。
『もう大丈夫だよ。安心して』
心の中に直接声が聞こえてきた。
でも、今の自分にはそんなことが起きても関係ない。
この声の主さえも殺すために自分はここにいる。
『お前のことなんて知らない!! 殺してやる!!』
『俺だよ。覚えてない? あの時は助けてくれてありがとう』
『殺す! ころ……』
その声を聞いていたら、赤いモンスターから助けた人間と美味しい記憶が蘇ってきた。
思い出そうとしていたら、僕の噛んでいる人を見る。
(この子は!)
僕の体にぐったりと寄りかかっていた人間は、僕が助けた人間だった。
噛むのを止め、死んでいないか心配をする。
死なないように傷口をなめてあげて、血を止めた。
その子がしばらく動かないのを見守っていたら、ゆっくりと動き出してくれた。
「治してくれてありがとう……」
『痛くない? 大丈夫?』
「ああ、心配ないよ。ここから出よう」
『ここは見えない壁があるから出られないよ』
「テレポート」
その人が何かを呟いたら、見えない壁の向こう側に移動していた。
見えない壁を越えたら、自分の中の破壊衝動が湧き上がってくる。
それを抑えようとしていたら、その子の後ろから声が聞こえてきた。
「嘘でしょ!? 今さら手伝えないなんて!? ちょっと!!」
そこには守護神様のような方が、何もいない上へ向かって泣きながら叫んでいた。
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