桜島攻略編①~桜島制圧~
俺は桜島フィールドにいるモンスターに対して、挑発の上級スキルである【宣言】を行なった。
この効果で桜島のフィールドにいるモンスターは優先的に俺を狙ってくる。
(このスキルの難点は、そのフィールドに向かって叫ばなければならないことだ)
叫んでいる自分を思い出すと少し恥ずかしくなってきた。
ワイバーンを倒している時に何度か名前を聞かれたが、俺のことを隠すために答えないようにしている。
俺はこの島から出ているワイバーンを倒した後、残りのワイバーンを殲滅するように島を回り始めた。
その途中で、ワイバーンが密集している中心にいた花蓮さんのお姉さんである絵蓮さんが倒れていたのを発見する。
(なんとか絵蓮さんを助けることができて安心した)
絵蓮さんはなぜか自分へ向けてナイフを刺そうとしていたため、意味が分からず少し焦った。
それでもワイバーンを倒しつつ島の外に出すことができたので、今はワイバーンを倒しながら島を走り続けている。
また、桜色をしたワイバーンの塊が見えたため、俺は右腕に魔力を込め始めた。
ワイバーンに近づいた時に右腕を思い切り突き出して、魔力を解放する。
「バーニングフィスト!」
俺の右腕から炎の塊が撃ち出されて、ワイバーンを焼きながら弾き飛ばす。
【バーニングフィスト】は拳スキルとファイヤーアローを同時習得しなければ覚えられないスキル。
ゲームのときにはスキル書を使用してLv5のファイヤーアローを覚えることで習得した。
拳のために何でもしようとした結果、このスキルに気付く。
しかし、このスキルはファイヤーアローの上限であるレベル5までしか上がらず、雑魚を弾き飛ばすくらいにしか使えなかった。
(今ではレベルが上がり続けて、ワイバーンでも焼き殺すことができる!)
俺の炎の拳は一定距離の敵を焼却しながら弾き飛ばす。
距離もレベルを上げるごとに伸びていくため、今は10mほどの拳を打ち出せる。
木々の死角からワイバーンが俺をはさむように飛び出してきた。
「旋風脚!」
俺の足から繰り出される風の刃で、周囲にいたワイバーンの首をはね飛ばす。
さらに蹴り飛ばして、俺の進路を確保する。
【旋風脚】は拳熟練度Lv5で習得できるスキル。
足へ魔力を込めて蹴ることで、風の刃を発生させて敵を攻撃できる。
俺は島を駆け抜けながら、この桜島の観察を行なった。
(地形こそ違うが、これは春に行われるイベントで桜色のワイバーンは【1万匹】いるはずだ)
ゲームで毎年春頃に行われていたイベントに現れるモンスターとそっくりだったため、俺はこの島のワイバーンをすべて掃討しなければならない。
なぜなら、1日でワイバーンをすべて倒さなければイベントの期間中、毎日この量のワイバーンが出現してしまう。
(すべて倒して今日でイベントを終わらせる!)
俺は島を1周走り、上空や島にワイバーンがいないことを確認した。
島を回り終わったため、次は桜島の火口へ向けて走り出す。
(まだワイバーンの次に現れるモンスターが出現していないから、ワイバーンが数匹残っている……)
山道を登り始めてからすぐに2匹のワイバーンが俺へ襲い掛かってきた。
すぐに1匹目のワイバーンの頭を粉砕、2匹目のワイバーンの羽を旋風脚で切断して瀕死にする。
俺は瀕死にしたワイバーンを右肩で抱えて、島を登り始めた。
ワイバーンは身をよじるように暴れるのを右腕で押さえつける。
火口にそれから何度かワイバーンを倒しながら着いた。
山の上から周り見渡しても他にワイバーンが見当たらない。
俺は抱えていたワイバーンを地面に落とし、足で押さえ付ける。
しばらく待っていてもワイバーンが現れないので、俺の足元にいるワイバーンが最後のワイバーンだ。
足を振り上げて、抵抗が弱くなったワイバーンの頭を踏み潰す。
すると、すぐに目の前の火口が赤く輝きだした。
俺はすぐに両手を空に向けて魔法を唱える準備を行う。
(俺がこれをやる時がくるとは……)
ゲーム内のイベントでは俺が確実に1匹ずつワイバーンを倒している時に、魔法使いどもが1匹でも多く倒せるようにモンスターの出現ポイントへひたすら魔法を唱えていたことを思い出す。
このイベントで現れるモンスターは少し通常のモンスターよりも強いが、経験値が非常に多く貰えた。
俺は魔法使いがのんきに魔法を使っていることに業を煮やし、魔法が乱発する中へ飛び込んで1匹でも多くのモンスターを倒した。
火口から放たれる光が収まり、火口から多くの桜色をしたドラゴンが現れ始める。
今火口から出ようとしているモンスターは、桜色をしたドラゴン【100匹】。
他にこんな色をしたドラゴンがいないため、ピンクドラゴンと呼ばれていた。
(富士山の前哨戦といこうか!)
俺はこれから目の前に現れたピンクドラゴン100匹を倒す。
ピンクドラゴンが火口から出ようとするのを止めるために上級魔法を唱えた。
「我が眼前に広がる敵を一掃せよ!! ライトニングストーム!!」
俺が魔法を唱え終わると、火口の上空から大量の雷が広範囲にわたって落ち始めた。
ライトニングボルト上級スキルであるライトニングストーム。
これはライトニングボルトのような一直線に進む雷ではなく、今使用したのは自分の指定した場所へ降り注ぐ雷の魔法だ。
1度では倒しきれなかったため、ピンクドラゴンがすべて動かなくなるまで魔法を唱え続ける。
俺は魔法を行いながら、なんて楽な作業なのかと思い始めてきた。
(これで倒せるなら、魔法使いたちは楽だっただろうな……)
楽に倒せると思っていた相手を俺に奪われてさぞ悔しかったことだろう。
俺はその時の魔法使いの気持ちを考えたら、少し笑えてきた。
火口から出ようとしていたピンクドラゴンがいなくなり、俺は魔法を唱えるのを止める。
(もう終わりか……)
ピンクドラゴンを倒しきってしまったため、このイベントが終了したと思われる。
俺は自分のやることが終わったため、帰還をするために防具を取ろうとした時、急に地面が揺れ始めた。
『まだ終わりじゃありません!』
いきなり頭の中からレべ天のような声が頭に響いた直後、火口が激しく光り出す。
(こんなもの見たことがないぞ!?)
光が収まる前に、火口から龍のようなものが身をよじるように這い出てきた。
そのまま龍は空中へ放たれ、俺を見すえるように宙に留まっている。
龍は桜色の鱗に覆われており、全長が何mあるかわからないほど長い。
大きさも先ほどまで相手にしていたドラゴンの数倍に感じられた。
突然現れた【見たことが無いモンスター】が自分へ敵意を向けてくるので、俺の全身が震え始める。
そのモンスターは威嚇をするように、尻尾を振るって山の一部を削った。
俺が震えたまま動かないので、またも頭の中から声が聞こえ始める。
『あれは今までモンスターを倒さなかったため、新たに生まれた……』
「俺の前に現れてくれてありがとう!!」
『えぇ……』
レべ天の声をかき消すように、俺の抑えられない気持ちが発せられた。
姿は見えないが、俺の行動にレべ天が引いているような声を出している。
俺は見たことがない龍から目を離せず、興奮を抑えることができない。
「見たことがあるモンスターばかりで飽き飽きしていたところだ!! お前と出会えただけでここに来た意味がある!!」
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