冒険者入門編⑥〜冒険者Rank2認定〜
ギルド長の部屋に入り、椅子に座るとギルド長から開口一番に聞かれた。
「お前たち、なにかあったのか?」
太田さんは目が少し赤いまま黙ってしまい、俺も特に言うことがないため何も話さないでいる。
それからすぐに清水さんが部屋に入り、テーブルにトサカの山を置く。
その量にギルド長が驚き、太田さんへ確認するように聞いていた。
「太田、本当に倒すのを手伝っていないんだな」
「ああ、解体でそんな余裕なかったよ」
「お前の腕でか……」
ギルド長は太田さんからそう聞き、考えるように腕を組みながら口元の髭を手でなでている。
「清水、これはいくつあった?」
「35です」
「そうか……」
清水さんから数を聞いたギルド長はさらに悩み始める。
うーむとギルド長がうなり始めた時、ドアをノックする音が聞こえた。
ギルド長が入るように指示すると、バスの運転手さんが入室してくる。
運転手さんは入室してからギルド長へ近づき、何かを耳元で囁いている。
ギルド長は運転手さんから何かを伝えられたようだ。
「わかった。もういいぞ」
「はい」
ギルド長は運転手さんへそう言い、運転手さんは部屋から出ていった。
運転手さんが出ていくのを確認したギルド長は、俺と太田さんへ複雑そうな顔で話し始める。
「今、報告があり、2人が持ってきたコカトリスの素材の状態は非常に良いそうだ」
清水さんはその言葉を聞いて驚いていた。
しかし、俺と太田さんからの反応はない。
ギルド長は清水さんの方を向いて話しを続ける。
「清水、コカトリスの1羽あたりの金額を討伐報酬10万、肉の買取価格50万で計算してくれ」
「わ、わかりました!」
ギルド長から言われて、清水さんが慌てながら部屋を出ていった。
俺は清水さんが出ていくのを見送って、それでとギルド長が言うので前を向く。
「羽毛の買取だが……ギルドでは不可能なため、オークションにかける」
「お、オークションだって!?」
ギルド長の言ったオークションという言葉に太田さんは驚いたようだった。
俺は聞くのは2回目になるのに、あんまり意味が分かっていない。
それをギルド長へ聞かなければいけない。
「オークションってどういうことですか?」
俺の言葉を聞き、ギルド長は親切に教えてくれた。
「オークションは価値が高いものや、貴重なものを公開して買ってもらうようにしているんだ」
「そんなことがあるんですね」
「そうなんだが……あまり活用されないんだ」
「ふーん」
そんなことを話している最中に、またもやドアをノックする音が聞こえた。
ギルド長が入るように言うと、清水さんがお金を持って入ってきた。
清水さんはそのお金を、俺と太田さんの目の前にどさっと音と共に置いた。
その音と同時に清水さんが口を開く。
「今回は7対3の割合での報酬分配となるので、佐藤くんが1470万円、太田さんが630万円です」
清水さんは淡々と説明してくれた。
俺の横では、目の前に置かれたお金を食い入るように太田さんが見ている。
清水さんは言い終えてから、またギルド長の横へ座った。
ギルド長はそんな様子を見て、太田さんへお金をしまうように言う。
太田さんはお金を持っていた鞄へ入れ始める。
「太田への話は以上だ。退室してもいいぞ」
「え、は、はい」
太田さんはギルド長からそう言われて、お金を入れ終えると退室していった。
俺の目の前にはまだお金が積まれていたので、持ってきたリュックサックの中へ入れた。
俺がお金を入れ終えるのを待つように、ギルド長は話を始めた。
「今回のクエストは予想以上の働きだった」
「太田さんのおかげでたくさん狩れましたからね」
清水さんは俺が太田さんを褒めたのが嬉しいようで、少し笑ってくれた。
しかし、ギルド長の顔は清水さんとは違って険しくなる。
「今回は、狩りすぎだな……」
「そうなんですか?」
「お前、目立ってしまうぞ」
「どうでもいいです」
俺の狩った成果でいちいち騒ぐような人の声なんて聴くことはない。
それを羨ましいと思うか、悔しいと思うかなんて俺にはどうでもよかった。
ギルド長は俺の言葉を聞き、深くため息をつきながらカードのようなものを俺の前へ置く。
「これはお前のギルド証だ」
「へー」
ギルド証と言われたものを手に取り、眺めるとそこには【Rank2】と書かれていた。
ランクについては太田さんから少し聞いていたけれど、ギルド長から詳細について教えてもらえるようだった。
◆
Rank8:偉業を成し遂げた英雄的存在。
Rank7:8ほどではないものの、超上級冒険者。
Rank6:かなりの腕の立つ選りすぐりの上級冒険者。
Rank5:いくつかの国の推薦で選ばれている冒険者。
Rank4:1国の精鋭のみがなれる冒険者。
Rank3:県では知らない人がいないほど強い冒険者。
Rank2:区内ではかなり強いという評価が得られる冒険者。
Rank1:登録して間もない冒険者。
◆
このRank制度でいうと、俺の評価は区内でもかなり強い評価が認められているらしい。
太田さんのRankも2だったので、そのことを聞くとギルド長は困りながら答えてくれた。
「基本的に騎士学校とかの上級学校を出た後に冒険者になるとすぐにRank2を与えるんだ」
「そうなんですか」
「まあ……Rank2と3では、壁があるからな」
俺にはよくわからなかった内容をギルド長は自分が納得するように言っていた。
その後、清水さんから詳しい説明を受けるように言われて、ギルド長の部屋を後にした。
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