冒険者入門編①〜冒険者ギルドへ〜

 母親と帰宅した後、俺は校長からもらった推薦状を持って、静岡県の冒険者ギルドへ向かっている。

 冒険者ギルドは静岡県庁の中にあるようなので、電車で県庁のある第2地区へ移動した。


 県庁の中に入ると受付の女性がおり、冒険者ギルドの場所を教えてもらった。

 冒険者ギルドは県庁に併設してある建物内にあると説明されたため、一旦外へ出て案内された方向へ歩く。


 県庁を回るように歩いていると、2階建ての建物が見えてきた。

 建物の入り口には大きく【静岡県冒険者ギルド】と看板が掲げられている。

 その建物の中に入ると県庁の受付とは違い、笑顔で迎えられた。


「ようこそ、冒険者ギルドへ! ご用件はなんですか?」

「すみません、これをお願いします」


 そう言ってから、元気な受付の人へ推薦状を渡す。

 俺に渡されたものを確認して、元気な受付の人は少しお待ちくださいと言ってから奥へ行ってしまった。


 受付のカウンターでしばらく待ちながら、周りを見ると俺を興味深そうに見ている人がたくさんいる。

 しかし、様子を見られているだけでこちらに来る人は誰もいない。

 つまらないので、カウンターに肘を置きながら待っていると奥から白い髭をたくわえた初老の男性が現れた。

 その初老の男性は俺を疑うような目で見ていた。

 いきなり見つめられたので、俺はなんだろうと思っていると初老の男性が口を開く。


「君が、佐藤一也くんかな?」

「そうです」

「奥で話をしよう」


 奥へ来るように言われたのでカウンターの奥へ入り、初老の男性を追う。

 しばらくついていくと部屋に入るように言われ、部屋に入るとさっきの受付の人もいた。

 初老の男性が受付の人の横に椅子に座ると、どうぞと促されてテーブルを挟んで向かい合うように座る。


 初老の男性がテーブルに肘をつきながら、俺をまじまじとみてくる。


「なにかありましたか?」

「いや、君のような子供がスキルを3つ持っているのが信じられなくてね」


 初老の男性の言葉に、受付の人が驚いていた。

 俺は特に気にせず、ここに来た目的を話す。


「ここへ推薦状を渡したら冒険者になれると聞きました」

「そうだね、普通はなれる」

「普通?」


 初老の男性は考えるように腕を組みながら、俺へ話す。


「私はここのギルド長として仕事をしているが、君のような子供が冒険者になるのは初めてのことだ」

「初めてですか」

「そうだ。だから、1つ試験をさせてほしい。その推薦状をそのまま信じていいものか迷うんでな」

「試験……わかりました」


 俺の返事を聞き、ギルド長は横の受付の人へ俺にクエストを紹介するように言っていた。

 受付の人は、それではこちらへどうぞと言いながら俺を再び先ほどのカウンターへ案内する。

 こほんと小さな咳払いをした後、元気に自己紹介をしてくれた。


「本日あなたの担当をする清水晴美しみずはるみです。よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


 清水さんは、それではと言いながらこちらを向いているパソコンの画面へクエスト一覧を表示してくれる。

 俺は提示された画面を見つめた。


(なんかゲームを思い出すな)


 そんなことを思っていると、清水さんは困った様子でこちらを見ている。


「どれかできそうなのはありますか?」


 清水さんは俺が悩んでいるように見えたのか、不安そうに聞いてきてくれる。

 俺はその中で1番楽しそうなクエストを選択した。


【コカトリス討伐】


 コカトリスは鳥型モンスターで、頭から脚のあたりまでが雄鶏の姿をしており、蛇のような尻尾を持っている。

 大きさは2mから3mほどあり、どの個体も大きく性格がとても獰猛だ。

 俺がコカトリスの討伐クエストを選択するとは思わなかったのか、清水さんは大きな声で俺へ尋ねてくる。


「コ、コカトリスの討伐ですか!? 本当にいいんですか!?」

「構いません。お願いします」

「わかりました。解体はどうされますか?」

「どうと言うと? 倒すだけじゃダメなんですか?」


 清水さんはえーっと困りながら言い、俺へ説明してくれる。


「コカトリスのお肉は人気があるため、狩れたら解体して持ってきてくれると嬉しいです」

「解体は好きじゃないですけど……」

「それなら、解体専門の方を雇う方法もありますよ!」

「それでお願いします」


 俺の言葉を聞くと、清水さんは笑顔で返事をしてからフロアにいる人を呼び始める。


太田おおたさ~ん! ちょっと来ていただけますか!?」


 清水さんが声をかけた方向をみると、なにかふてくされたような顔をしながら女性がこちらへ向かってきている。

 その女性は、俺よりも少し背が高く体格はすらっとしていて、短髪だった。


「はるちゃん、急になに?」


 太田と呼ばれた女性は、カウンターに着くなり清水さんへ声をかけていた。

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