剣士中学生編⑪〜両親の決断〜

 片付けが終わる頃には夜になっていたので、晩御飯はピザを宅配してもらうことになった。

 待っている間、両親が聞きたいことがあるというため、3人でテーブルを囲んでいる。


 主に両親から聞かれたのは、なぜこんなに強くなっているかということだった。

 誰かに教えてもらっているだろうと聞かれても、そんな人はいないので誰の名前も答えられない。

 その代わりに、両親に丸太やスライムのことを話してみても、納得してもらえない。

 最後に父親がため息をつきなが、聞いてくる。


「それで、これからどうするんだ?」

「どうするって?」

「お母さんから、学校はもう行かないと言っていると聞いたぞ」

「行かないとは言っていないよ。自由にするってだけ」

「同じ意味だろう……」


 両親は話が終わり、顔を見合わせて困っている。

 俺は特に伝えたいことがあったので、両親に伝えなくてはならない。


「俺はまだまだ弱いんだ。もっと強くなりたいから自由にさせてほしい」


 俺はお願いしますと、両親に頭を下げる。

 両親が何も言ってくれないので、頭をテーブルに付くくらい下げ続けている。


 母親から頭を上げるように言われ、頭を上げて両親を見ると諦めたようにこちらを見ていた。

 父親はもう何も言うことがないのか、母親が俺へ話しかける。


「毎日必ず連絡をすること。これが守られなかったら、ちゃんと学校へ通いなさい」

「ありがとう!」


 俺はこれから毎日思う存分拳を使うための時間が取れる。

 その感謝の気持ちを心から両親へ伝えた。


 そんな時に家の電話が鳴り響き、母親が対応するべくテーブルを立つ。


 母親は電話をしながらお辞儀をしたりしているので、相手は友達とかからではないようだ。

 電話を終えて、母親は慌ててテーブルに戻ってくる。

 そして、電話の内容を教えてくれた。


 電話は学校からだったようだ。

 明日の朝に1度学校に来てほしいということだった。

 詳しくはその時話すと言われたそうなので、なんの話だろうと3人で悩む。


 そうしていると家のチャイムが鳴り、母親が対応するとピザが届いたので晩御飯を食べた。


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 次の日の朝、俺と母親は朝の指定された時間に学校へ着くように歩いていた。

 俺は母親へ今日から学校に行く気がないと伝えたため、制服を着ずに普段通りの服装で向かっている。


 学校へ近づくと校門のところに小柄で短髪の女性が立っており、俺たちをみると声をかけてきた。

 母親が少し話をしてから、女性はこちらへどうぞと言いながら道案内をしてくれた。

 俺と母親はその後についていき、最後は校長室へ入室するように言われる。

 小柄な女性がノックをしたら中から野太い声が聞こえた。

 校長室へ入ると入学ガイダンスの時につまらない話をした校長が待っている。


 校長から椅子に座るように言われた。

 俺と母親はテーブルを挟んで校長と向かい合うように座る。

 小柄な女性も同席するようなので、校長の横に座っている。

 校長から自己紹介をされて、小柄な女性は学校で俺のクラスの担任ということだった。

 校長が咳払いをしてから、今日来ていただいたのはと言いながら言葉を続ける。


「一也くんの対応について学校で会議をいたしました」

「対応ですか?」


 母親が少し怪訝そうに聞き、校長は手を振って慌てて訂正をする。


「すみません。決して悪い意味ではなく、これからについての提案です」

「どういうことでしょうか?」

「一也くんはすでにスキルを取得しているため、学校で学ぶことはほとんどないと思います」


 校長はそう言いながら、1枚の紙を俺と母親に見せてきた。

 そこには鑑定結果と書かれている。

 俺がガイダンスの時に言われたスキル名が書かれていた。

 そして、校長から2点の提案がされた。


授業の参加は自由

静岡県冒険者ギルドへの推薦状をくれる


 この条件で学校には在籍してほしいとのことだった。

 俺はそれならいいですよと伝えると、校長は安堵したようだ。

 校長の話を聞いていたら、俺は学校を辞めようとしているように受け取られていた。


(辞めるという気はなかったけど、これから授業に出席するのも自由というのは本当にありがたい)


 俺は推薦状を校長から受け取り、親と2人で学校を出た。

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