冒険者入門編②〜コカトリス討伐クエスト出発〜
清水さんは俺へ太田さんを紹介してから、太田さんへ呼んだ理由を説明していた。
清水さんに呼ばれた女性は、
太田さんは清水さんと少し言葉を交わした後、俺へ質問をしてくる。
「それで、いつ出発するの?」
「いつでもいいですよ」
俺は剣を常に持っているため、準備するものは特になにもない。
太田さんは俺へ何かを言おうとして、清水さんに止められていた。
出発しようとしている俺へ清水さんは最後にこれの記入をと、1枚の用紙を俺の前に出す。
中身を確認していたら清水さんは補足するように説明してくれる。
「これから行う討伐で得たお金の配分について記入するものです」
「半分半分じゃないんですか?」
俺がそう聞くと、清水さんは驚き、太田さんは少し笑っている。
太田さんを見たら、笑いながら俺へ話しかけてくる。
「半分も貰っていいならもらうよ」
「構いません、どうぞ」
俺はどこへ書けばいいのかと清水さんに聞く。
すると、清水さんは頬を膨らませた後、少し怒ったように俺へ指摘してくる。
「佐藤くん! 普通は危ないことをする討伐側が7割とか8割貰うんです! そうしてもらわないと解体する人ばかり増えちゃうんです!」
「なるほど」
太田さんを見ても、それでいいからと俺へ書くように促してくれた。
俺は解体が嫌いなので、控えめに7対3で俺が多く貰えるに記入する。
記入が終わり、清水さんからコカトリスの出るフィールドへ向かうバスの出発の時間を聞いた。
意外にも早く、1時間も待たないうちに出発するという。
太田さんは準備をするというので外へ向かった。
俺は特にやることがないので、受付の近くにある休憩フロアでのんびりと時間まで待っていた。
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ギルドから1時間ほどで富士山の南西部にある渓谷のフィールドに着いた。
清水さんはここでコカトリスが群れを作っていると言っていた。
バスから降りて周りを確認すると、太田さんがバスの荷台からリヤカーなどを取り出していた。
手伝おうとしたら、太田さんからこれはこっちの仕事と言われて手伝いを断られる。
ここへ向かうバスの中では、こちらから話しかけてもほとんど話をしてくれなかった。
しかし、バスの運転手さんとは話すことはできた。
○
このバスは定期便で、定刻になるか、乗った全員が揃ったら帰るようだ。
人がいなかったら少しは待つが、4時間程度で帰ってしまうらしい。
○
今回、ここへ来たのは俺と太田さんだけなので、マイクロバスが貸切だった。
(切り替えよう)
新しいフィールドとか、初めての解体専門の人と一緒に狩りへ行くことで気持ちが浮ついていた。
今からはコカトリスを狩るために全力で挑む。
太田さんはリヤカーを引きながら、渓谷の入り口を見ていた俺へ声をかける。
「準備終わったぞ」
「わかりました、行きましょう」
太田さんへそう伝え、俺は渓谷へ入っていった。
後ろを歩いている太田さんは、全身を覆うような防具を着けずに、胸やすね、腕などを守る比較的軽めの防具を着けていた。
しばらく歩いていてもコカトリスが現れないので、太田さんが何か知っているのか聞いてみる。
「太田さん、コカトリスはどこにいけばたくさんいますか?」
「あっちには大きな群れがあって危険だから逆の方がいいな」
太田さんは狩れて1匹でも上等だろうと呟いていても、俺にそんな気はない。
俺は太田さんが危ないと言っていた方へ歩き出す。
すると、後ろから太田さんが俺へ向かって声をかけてくる。
「お前、話聞いていたのか? そっちは危険だって!」
「大丈夫ですよ。行きましょう」
太田さんは頭を抱えて、ああもう!と言いながらも付いてきてくれた。
(案外良い人なのかもしれない)
そう思いながら歩いていたら、目の前にコカトリスの集団が見え始める。
太田さんはコカトリスに気付かれないように静かに俺へ話しかけた。
「ほらほら……こんなにコカトリスがいるぞ。引き返そう」
俺は太田さんの言葉に返事ができなかった。
見渡すと白い巨大な鳥が40羽ほど確認できた。
「太田さんはここで待っていてください」
俺は興奮を抑え切れることができず、コカトリスに向かって駆け出す。
太田さんはなにが起こっているのかわからなくなったのか、なにも言わなかった。
俺は自分へ身体能力向上と移動速度向上、攻撃速度向上をかけて思いっきりコカトリスに突っ込む。
1羽目のコカトリスに気付かれたが、声を上げる前に心臓へ向かって思いっきり剣を突き刺す。
剣を抜くと、コカトリスがグエっとうめき声をあげてその場に倒れる。
少し硬い胸の筋肉に邪魔をされそうになっても、推進力のすべてを剣に乗せたため、無事に一刺しでコカトリスを倒すことができた。
コカトリスと戦う場合、皮膚が羽毛で包まれているためなかなか攻撃が届かない。
しかし、胸の筋肉の隙間を狙って心臓を貫けばこのように倒すことができる。
倒れたのを俺が確認するのと同時に、周りにいたコカトリスが鳴き声を上げた。
鳴き声が渓谷に響き渡ると、見渡す限りのコカトリスが集団で俺へ向かい始める。
俺は剣を握りなおして、コカトリスの集団を迎え撃つ準備をした。
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