剣士中学生編⑨〜モンスター引取システム〜
車へ戻ると父親がスマホを車から取り出して、どこかへ電話を始める。
俺は積んであるマンドラゴラの横に座り、父親の様子を眺めていた。
しばらくすると、話している父親の声が少し大きくなる。
「本当に成体のグリズリーを倒したんです! 早く来てください」
父親は誰かにグリズリーのことを説明しても、信じてもらえていないようだった。
そして、父親が電話を終えてから、俺はどこへ電話しているのか聞いた。
「どこへ電話していたの?」
「区役所の伊豆出張所だよ。そこで狩ったモンスターを引き取ってもらえるんだ」
「ここまで来てくれるんだ」
この世界ではモンスターは勝手に消えないので、回収してくれる人が派遣されるシステムが出来上がっていた。
待っている間に両親は防具を取り、その場に座って一言も話さない。
俺は暇なので、もう1度フィールドへ行こうとしたら両親に止められた。
その時、丁度2台のトラックがこちらへやってくるのが見える。
トラックが見えると両親は立ち上がり、トラックが止まるのを見届けている。
トラックが止まると、中から人が数名降りてきた。
先頭には、顎に髭を蓄えた体格の良い男性がおり、その後に4名続いてくる。
先頭にいた男性と父親が軽く挨拶を交わしてから話が続く。
「それで、グリズリーはどこですか?」
「グリズリーはフィールドの方に置いてあります」
それを聞くと髭の男性は少し舌打ちをして、後ろにいる人たちにフィールドへ行く準備をするように声をかける。
髭の男性も準備を始めるのか、少し待つように父親へ言っていた。
トラックから出てきた人達が準備を始めようとすると、マンドラゴラの山を見つける。
その中の一番若そうな男性がマンドラゴラを見ながら、髭の男性へ声をかけている。
「これもですよね」
「そうだな。状態は?」
「土が付いていますが、きれいですよ」
髭の男性は軽くため息をつくと、マンドラゴラに近づく。
そして、マンドラゴラを見ながら、若い男性の頭を軽く小突いていた。
「お前は現場が初めてだからわかっていないだろうが、モンスターをちゃんと鑑定しろ」
「うす……」
若い男性は怒られて落ち込んだようだった。
それから、髭の男性がマンドラゴラを指差しながら若い男性へ話しかける。
「これは劣化マンドラゴラだ。死ぬ寸前に声をあげると、マンドラゴラは劣化するんだよ」
「そうなんですか」
「劣化していないマンドラゴラなんてここ数十年みたことがないが、そういう個体もあることを知っておけ」
「はい……」
次にこれはと髭の男性が見だすと、表情が変わる。
そして、他のマンドラゴラを見てさらに表情が曇っていく。
「これは……」
髭の男性が呟くと、他の全員に鑑定をするように言っていた。
すると、若い男性がマンドラゴラを見ながら髭の男性へ尋ねていた。
「この7体全部、劣化していないマンドラゴラですよね」
髭の男性を含むその場にいた5名がそれから話さなくなり、若い男性が間違えていますかともう1度髭の男性へ聞いていた。
それからすぐに髭の男性が父親に近づき、マンドラゴラを見ながら話しかけてきた。
「あれはあんたがやったのか? どうやって!?」
「いや……私は……」
父親がそう言うと、髭の男性が今度は母親の方を向く。
「じゃあ、彼女か?」
「そうでもなくて……」
それなら誰がと髭の男性が父親に聞こうとしていた時、俺のことが目に入ったようだ。
父親も髭の男性が俺を見ているのを分かったのか、話を続ける。
「あの子が倒したんです」
「冗談だろ……」
そう言いながら、髭の男性は俺へ近づいてくる。
髭の男性は座っている俺を見下ろして、戸惑いながら聞いてきた。
「あれはどうやって倒したんだ?」
「叫ぶ直前に、口のあたりを切ればいいんですよ」
「そんなことできるのか?」
「やった結果があれです。遠くからウォーウルフも来ていたので、早く処理するためにやりました」
それを聞いた髭の男性は困惑した様子で俺を見つめてくる。
すぐに踵を返し、マンドラゴラを運び込むように4人へ指示をした。
マンドラゴラを積み終えると、フィールドに行く準備を終えたのか、防具を着込んで銃を持った男性が5人こちらへやってきた。
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