剣士中学生編⑧〜グリズリー戦決着〜

(何度グリズリーの攻撃を躱したのだろうか)


 数回、避ける距離が足りずに爪に当たり、服がボロボロになってしまい、所々流血もしている。

 俺はそれでも魔力を温存するためにヒールを行わないで、できるだけ多くのバッシュをグリズリーに打ち込む。


(もっと速く! 少しでも速く攻撃を打ち込むんだ!)


 グリズリーが1回攻撃をすれば、こちらは2回剣を振り切る。

 こちらは一撃でも攻撃を受けてはいけない状況で、ぎりぎりの判断が求められた。


 少しでも速く攻撃を繰り出さないと一向に勝機をつかむことができない。


 グリズリーを切りつけている最中、少しずつ俺の攻撃を行う速度が速くなってきた。


(攻撃速度向上が取得できて、徐々に俺の攻撃が速くなってきている)


 グリズリーの動きも確実に鈍くなってきており、余裕を感じるようになる。


(今しかない!)


 そう判断して、俺はわざとグリズリーの正面に立つ。

 すると、予想通りにグリズリーは両手を振り上げてくれた。


 グリズリーが手を振り下ろす直前、避けられる程度に後ろへ飛び、目の前をグリズリーの両手が通過する。

 グリズリーの手が地面に着く前に、グリズリーの首をめがけてバッシュを2発叩き込む。


 それでもグリズリーの首が切れないため、グリズリーの攻撃が地面についてから、首の傷口に向かって剣を突き刺す。

 剣は肉を押しつぶしながら食い込み、グリズリーの首を貫通した。


 俺はそれでもまだグリズリーが動きそうなのを確認して、喉を切るように横へ剣を振り抜こうしても剣が動かない。

 いつまでも剣を持っているとグリズリーの攻撃が来るため、剣から手を離して距離を取った。


 グリズリーの方を見ても、グリズリーはまだ倒れずに立ち上がる。


(拳で戦わなければいけない)


 今の俺には何も拳のスキルもない。

 ただ、それでもこの拳で戦わなければ負けてしまうので、俺は両手を握って覚悟を決める。


 俺は攻撃を避けるためにタイミングをうかがっているものの、グリズリーはその場を動かない。


 お互いが動かないまま数秒経つと、グリズリーが後ろへ倒れた。

 グリズリーが倒れると土ぼこりが舞い、俺はなにかが来ると思い後ろへ跳ぶ。


 少し様子を見ても何も起こらないので、土ぼこりが収まるのを待ってからグリズリーに近づく。

 俺がグリズリーに近寄っても、グリズリーは動かない。


 俺はグリズリーの首に刺さっている剣をゆっくりと抜き、グリズリーを倒したことを確認した。


 剣から血を払い、両親がいる方向をみると2人ともこちらをみて固まっている。

 両親へ近づいても俺をみつめて動かない。

 俺はグリズリーを指差しながら、両親へ相談する。


「あれ、どうすればいい?」


 両親は俺がそう言っても動かなかった。

 俺が父親の横に座ってから、やっと父親が口を開く。


「グリズリーを倒したのか?」

「見ての通り、あそこで動かないよ」

「ああ……」

「見に行ってみる?」


 父親は両手を振って否定すると、1度車に戻ろうと提案してきた。

 グリズリーはあのままでいいのか聞いたら、大丈夫のようだ。


 俺はグリズリーをもう1度見に行き、両親の後についていった。

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