海底神殿攻略編⑤~海底神殿の主クラーケン~
神殿を出てから、すぐに佐々木さんが話しかけてくる。
「佐藤くん、きみはこの先になにがいるのか知っているのか?」
「はい。さっきあの人から教えてもらいました」
「信じられない……」
佐々木さんがそれから言う言葉が見つからないのか、黙ったまま俺の横を歩く。
(ポセイドンが諦めそうになるくらいだから、世界中のいたるところで同じようなことが起きようとしているんだよな……)
俺は少し考えて佐々木さんにだけ、俺が託されている希望について話をすることにした。
「佐々木さん。待ってください」
「なんだい?」
「ちょっと、話を聞いていただけますか?」
「この先へすぐに行かなくてもいいのか?」
「ええ、少しなら」
佐々木さんは立ち止まって、俺の話を聞いてくれるようだった。
俺は最初に一言伝えてから佐々木さんへ話し始めることにする。
「佐々木さん、これから言うのはすべて真実です」
「……話してくれ」
俺は佐々木さんに信じてもらえるように、真剣にダンジョンやフィールドからモンスターがあふれそうになっていることを伝える。
俺が小さくなったことやレべ天のことは話さずに、すべてポセイドンから聞いたことにして佐々木さんへ話をした。
話を聞き終わった佐々木さんは、信じられないと言いながらも何か身に覚えがあるようなことを言い始める。
「最近になって世界中でモンスターの被害が出始めたのはそのせいなのか……」
「おそらくそうです」
佐々木さんは俺の話を静かに考え込みながら聞いてくれた。
まだ、佐々木さんの中で納得ができないことがあるのか、少し謝りながら俺へ口を開く。
「佐藤くんの話をすぐにすべて信じることは難しい。しかし、頭には入れておこう」
「よろしくお願いします」
佐々木さんは話が終わっても俺を見ていたので、俺は首を傾げる。
「2人には……伝えなくてもいいのか?」
「まだ伝えるのは早いと思うので、佐々木さんにだけ先に伝えておきます」
「わかった。黙っておこう」
再び俺と佐々木さんは歩き始め、ポセイドンの言っていたクラーケンが閉じ込められている場所へ入るための入り口に向かう。
神殿の端まで歩いたら、すぐにどこかへ繋がってそうな入り口が見つかる。
俺はその入り口を見つめながら、佐々木さんへこの先で行うことの説明を行う。
「おそらく、この先にダンジョンの主がいるはずです」
「俺はどうすればいい?」
俺が先にこの中へ入って、クラーケンを十分に引き付けてから佐々木さんへ入ってきてもらいたい。
(今の俺ならクラーケンに対して一番効率が良い方法で戦うことができる)
自分の考えているクラーケン対策を行うために、佐々木さんには待機してもらう。
「俺が入ってから、1分後に佐々木さんが入ってきてください」
「1分?」
「はい。そして、入ったら最低限動かないでほしいです」
俺のプランを聞いて、佐々木さんは低い声で話しかけてくる。
「……それでいいんだな」
「何かあればすぐに言います」
佐々木さんは納得がいかないのか、地面を蹴りながら俺を見てきた。
俺は右手に杖、左手にダガーを持って入り口へ入る準備を始める。
(身体能力向上、攻撃速度向上、移動速度向上……よし!)
準備を終えて足を踏み出そうとした時に、佐々木さんが俺の肩をつかんできた。
「1分経たずに死ぬなよ」
俺は佐々木さんの顔を見ることなく、その言葉を返す。
「1分経つ前に倒しているかもしれませんよ」
「今から計る」
佐々木さんが肩から手を離して、時計へ目を移した。
俺は足を進めて、なにか薄い膜のようなものをくぐるような感覚を全身で受ける。
進んだ先には、タコなのかイカなのかわからない白くて巨大な頭足類のモンスターが浮いていた。
(こいつがクラーケン……でかい……)
全長30m以上ありそうな海の化け物と呼ばれているクラーケン。
まだ俺には気付いていないのか、ポセイドンの作った結界を何本あるかわからない足で殴り続けている。
俺は杖をクラーケンに向けて、全力で魔法を唱えた。
「ライトニングボルト!」
黄色い雷がクラーケンに向かって走り、巨大な胴体に直撃する。
クラーケンは一瞬硬直してから、俺を発見したようにこちらへ巨体に見合わないような速度で突っ込んできた。
すぐにクラーケンを避けるために疾走を始める。
俺のいた場所の近くにあった5mほどの岩がクラーケンの突進によって簡単に砕けた。
(あいつだけ宙に浮いていていいな!)
俺は足場の悪い地面を走るしかないので、空中を漂うクラーケンが卑怯に思える。
ただ、負ける気はまったくしない。
すぐにクラーケンが再び突進をしてくるので、巨体に合わせるように跳躍して杖でバッシュを行い、俺は宙に舞う。
俺が宙にいる時に、佐々木さんが入ってくるのが見えた。
クラーケンは俺を見失い、動きが止まる。
(勝った!)
すぐに地上へ降りるためにテレポートを行い、クラーケンの近くへ立つ。
杖とダガーをクラーケンに向けて、杖とダガーで交互にライトニングボルトを行う。
(雷ハメが完成した)
クラーケンは雷系の魔法を受けると一瞬硬直したように動かなくなる。
そのため、クラーケンに対して近距離で雷系の魔法を連続で行うと、クラーケンはまったく動くことができないまま攻撃を受け続ける。
ゲームでは、数人の魔法使いが魔法を唱えることでようやく完成する攻略法。
(今の俺なら交互に魔法を行うことで、1人でもこの攻略法を使えてクラーケンを簡単に倒せる!)
海底神殿のダンジョンがあると聞いた時からずっとこの倒し方を実践してみたかった。
前の俺では全力で何度も殴ってようやく倒せた相手を、こうも簡単に倒せる方法が今の自分にできることが嬉しい。
(しかし、一向に倒せそうにない)
魔法を始めてから10分ほど経っても、ライトニングボルトを受けるクラーケンが弱っているように見えない。
魔法を行いながらクラーケンを観察すると、ようやく怒るように全身が赤くなっていた。
(激昂状態ってことはまだ3割しか削れていない……)
クラーケンは全身を赤く染める激昂状態と、体力が半分以下になった時に本気でこちらを殺しに来る覚醒状態がある。
覚醒状態では全身を淡い緑色の光を放ち、回復しながら戦ってくるので非常に倒しづらかった。
(俺の魔法でクラーケンの回復速度に勝てるのか?)
自分の無詠唱で行っているライトニングボルトに不安を覚えたため、佐々木さんへ声をかける。
「佐々木さん! 今から俺がやることはすべて忘れてください!」
俺はクラーケンが覚醒状態になってから、魔法を全力で行う覚悟を決める。
ただ、俺の戦いを見守ってくれている佐々木さんにはこれから行うことを覚えておいてほしくない。
「わかった!」
佐々木さんが返事をするのと同時に、クラーケンの色が赤色から淡い緑色に発光へ変化した。
変色を確認した俺は叫ぶように魔法を唱え始める。
「うなれ雷!! ライトニングボルト!!」
俺が魔法を唱えると、無詠唱で行っていた時よりも太い雷がクラーケンへ向かう。
クラーケンが動かないように、連続で全力の詠唱を始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ご覧いただきありがとうございました。
現在カクヨムコン9に以下の作品で参戦しております。
ぜひ、応援よろしくお願いします。
【最強の無能力者】追放された隠し職業「レベル0」はシステム外のチート機能で破滅世界を無双する
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます