海底神殿攻略編③~海底神殿~

 1匹目のソードフィッシュを倒してから、ソードフィッシュとボンバーアーチンが同時に現れる場面が何度かあった。


 俺はボンバーアーチンを迎撃することに集中し、3人にはソードフィッシュを倒してもらう。

 モンスターが現れるたびに、真央さんが新しいモンスターがいないか聞いてきていた。


 何度目かわからないモンスターの群れを倒した後、3人を休憩させるために見通しの良い場所で休んでもらっている。

 周囲を警戒しながら進んでいたため、3人は予想以上に疲労しているようだった。


 簡単に疲労が取れるヒールを行ってしまうと、体力回復力向上が上がらなくなってしまう。

 そのため、ぎりぎりに動けなくなるのを見計らって、ヒールを行うようにしている。


 花蓮さんの疲れる回数が多かったので、周りを見ながら花蓮さんへ声をかけた。


「花蓮さん、大丈夫ですか?」

「……平気」


 息も絶え絶えに答えていたので、さすがにと思いながらヒールをかける。

 管理が面倒なので他の2人にもヒールを行い、全員の疲労と体力の回復を行う。


 俺のヒールを受けた真央さんは、自分の体を見てあきれながらつぶやく。


「あんなに疲れていたのに……」


 佐々木さんもこんなヒールは受けたことが無いと言い、周囲の警戒を始めてくれた。

 花蓮さんが急に立ち上がって、俺を見る。


「これって、ヒールのLv10なんだよね?」

「えーっと……」

「入学ガイダンスの時に鑑定されていたでしょ?」


 花蓮さんの言葉に、なぜか佐々木さんも俺がヒールのLvが10なのを知っていると言っていた。


 俺を置き去りにして、3人はヒールのLvが10になるとこんなに効果があるのかと話を始める。

 俺はスキル鑑定士さんに言われた通り、スキルのLvが10以上あることを誰にも話していない。


(伝えるべきだよな……)


 目の前にいる3人は信頼できる仲間なので、隠し事はしたくなかった。

 俺は雑談をしていた3人へ声をかける。


「すみません、話を聞いてもらってもいいですか?」


 話を止めて、3人とも俺へ顔を向けてくれる。

 俺は自分のスキルがほとんどすべて熟練度Lv10以上となっていることを3人へ伝えた。


 それを聞いた真央さんと花蓮さんは信じられないという表情をする。

 しかし、佐々木さんだけは俺を見つめて、口を開く。


「それで、大会の後にスキル鑑定士と話していたんだな?」

「そういうことです」

「きみが超越者であることを他には誰が知っている?」

「スキル鑑定士さんだけです」

「そうか……」


 うつむいた佐々木さんへ、花蓮さんが疑うような表情で聞いていた。


「佐々木さん、超越者ってどういうことですか?」


 真央さんも知らないのか、会話を聞こうとしている。

 佐々木さんは花蓮さんへ顔を向けて、説明を始めた。


「超越者というのは、文字通り人の枠を超えた人のことだよ」

「人の枠ですか?」

「すまない、言い方が悪かった。スキルLvが10を超えているものを取得した人のことを超越者と呼ぶ」

「そんな人いたんですか!?」


 花蓮さんは佐々木さんの説明をきいて、信じることができない様子だった。

 佐々木さんが花蓮さんへなだめるように言葉を続ける。


「いたんだ……数百年前とだいぶ昔になるが……」

「えっ……」


 花蓮さんと真央さんは言葉を失い、佐々木さんは周囲を警戒している俺の肩へ手を置く。


「一也くん、教えてくれてありがとう」

「仲間なので知っておいてもらいたかったんです」


 佐々木さんはそうかとつぶやいて、自分の腰に両手をそえて深呼吸をしている。

 真央さんがうろたえながら佐々木さんの顔を見た。


「一也が超越者ってばれるとどうなるんだ?」


 佐々木さんは不安そうな真央さんの顔を真剣に見つめる。


「おそらくだが、日本……いや、世界中の冒険者の注目の的になるだろう」

「そんなにすごいことなのか……」

「最近の研究では、残されている過去の資料を検証して、有識者から超越者などありえないと判断されようとしている」

「やばいな……」


 佐々木さんが真央さんのつぶやきに同意しながら、なんとか隠し続けようと言っていた。

 しかし、花蓮さんが俺の頭を指で軽く突きながら口を開く。


「私はこの子が隠し続けられるとは思えないんですけど」


 花蓮さんはそう言いながら俺の頭をずっと指で突いてくる。

 佐々木さんが少し笑いながら花蓮さんの指を止めてくれた。


「ああ、俺もそう思う。だから相談してくれてよかった」

「どういうことですか?」


 笑っている佐々木さんを花蓮さんが不思議そうに見ている。


「事前に知っていれば対応できる」

「対応なんてできるんですか?」

「ああ、彼が俺を信頼して打ち明けてくれた。その信頼を俺は必ず行動で返す」


 花蓮さんも佐々木さんの言葉を聞いて、嬉しそうに顔を向けた。


「世界中で5人しか知らないなんて、すごいことですよね」


 3人は笑いながら俺が超越者であることを受け入れてくれた。

 俺も話せたことに安堵し、視界の端に見えたボンバーアーチンへファイヤーアローを放つ。


 敵が現れ始めたので、3人へ先に進もうと提案することにした。


「休憩はもういいですよね? 先へ行きましょう」


 3人は返事をしながらそれぞれの武器を持つ。

 再出発の準備が終わり、俺はゆっくりと歩き始めた。


 しばらく進んでいるとモンスターが現れなくなる。


 代わりに俺たちの行く手を阻むように、巨大な白い建造物がそびえ立っていた。

 建造物は神殿のような形をしており、中央には扉のようなものが2枚見える。


 俺は慎重に右側の扉を押して、神殿の中へ入ろうと試みた。


(まったく動かない!)


 俺が全力で扉を押してもまったく動く気配がしない。

 3人に手伝ってもらっても、一向に動かなかった。

 扉を押すのを止めて、佐々木さんから杖を貸してもらう。


(こうなれば力技で開けさせてもらう!)


 俺は両手で杖を持ち、扉の中央へ思いっきりバッシュを叩き付ける。

 すると、扉が微妙に動いたため、俺は人が通れるように広がるまで扉を叩き続けた。


 数分後、ようやく中へ入ることができるようになる広さまで扉が開く。


「これで入れますね」


 笑顔で扉を開くのを待っていた3人へ言うために後ろを向いたら、俺から少し離れた場所まで移動していた。

 3人はゆっくりとこちらへ近づいてきて、花蓮さんが苦笑いをしている。


「一也くんの凄さが改めてわかったわ……」

「どういうことですか?」


 真央さんも開いた扉を見て言葉を失っており、佐々木さんが驚愕しながら俺を見た。


「石を相手にあそこまで全力で殴り続けるなんてこと、普通の人間では無理だ……」


 3人がそれぞれ扉を見ながら驚いている。

 俺は気にせずに佐々木さんへ杖を返して、ダガーを持って神殿の中へ入ろうとした。


「さあ、行きましょう」


 神殿の中は学校のグラウンドよりも広く、石の椅子や柱がある。

 奥へ進んでいくと、俺たち以外の声が聞こえてきた。


「もう諦めてもいいかな……でも、頑張ってくれってあいつに言われたからなー……」


 俺はその声をはっきりと聞き、後ろにいる3人を見る。


「今、声が聞こえませんでしたか?」


 突然俺が向いたため、驚きながらも3人はなにも聞こえていないと言う。


(はっきりと聞こえたのになぜだ?)


 頭に疑問を抱えたまま足を進めたら、神殿の奥になにかがいる。


 青い鱗で覆われており、尻尾やヒレのある魚人のようなものが神殿の奥にある椅子に座っていた。

 大きさは人とあまり変わらないが、そばには金色に輝く三又の槍がある。


 俺はそのモンスターを【見たことが無い】ので、3人には待ってもらうことにした。


「あそこに何かがいるので、3人は待機していてください」


 気付かれないように3人へ静かに伝えて、俺は身を隠しながら魚人に近づく。

 すると、はっきりと魚人から言葉が聞こえてきた。


「あー、もうここで待っていても誰も来ないし、モンスターを抑えるのを諦めようかな」

「諦めないでください!」


 声を出した俺を魚人が座っていた椅子から飛び上がり、遠くにいた3人は何事かと声を少し出していた。


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