海底神殿攻略編②~海底への螺旋洞窟~
俺は3人のペースに合わせるように螺旋洞窟を進む。
佐々木さんは俺たちが写らないように洞窟内の写真を撮影していた。
しばらく何もない洞窟を進み続けて、昨日スターフィッシュに襲われた場所に近づいてきている。
(そろそろスターフィッシュが現れるな)
洞窟を進んでいる俺は、壁に注意を向けながら足を動かす。
しばらくしてから、壁からスターフィッシュが俺へ飛んでくる。
ダガーで迎撃を行い、3人へ警戒するように声をかけた。
「スターフィッシュが飛んできます。少し時間を稼いでください」
俺は前日と同じように両手に持ったダガーを壁に向けて、魔法を唱えようとする。
スターフィッシュが俺へ向かってくるのが見えても、俺はダガーを動かさずに魔力を込め続けた。
すぐに花蓮さんが俺の前に出て、盾を使ってスターフィッシュを弾く。
他の2人も飛んでくるスターフィッシュを地面へ弾いている。
俺はいつもよりも多く魔力を込めて、魔法を唱えた。
「ライトニングボルト!」
俺が見える範囲の壁に稲妻が走り、大量のスターフィッシュが地面へ落ちる。
その威力を見て、3人が俺の顔を見てきた。
花蓮さんが不思議そうに俺の持っているダガーを覗き込んでくる。
「どうかしました?」
「ずっと聞きたかったんだけど、杖じゃないのにこんなに強い魔法を使えるの?」
「杖を使ったらもっと強くなると思います」
ダガーには魔法攻撃力を上げる効果がないことを鑑定で調べていたため、花蓮さんの疑問へすぐに答えることができた。
(もっと強くする方法があるけど、教えるのはまた今度にしよう……)
俺はスターフィッシュが壁に見えたらライトニングボルトを唱える作業を集中して行い、螺旋洞窟を進む。
螺旋洞窟を抜けた先には、昨日見た光景と同じように周りが海に囲まれていた。
淡い光が全体を包み、本当に海底にいるような感覚になる。
俺は風景に興味を示さず、足を進めようとした。
俺の足が地面へ予想以上に飲み込まれて、慌てて地面へ目を向ける。
昨日は足を踏み入れなかったので気付かなかったが、地面は砂浜のような細かい砂でできていた。
(ここは歩きにくそうだな……)
俺が足で地面を探り終わっても、3人を見たら口を開けながら周りを見渡している。
佐々木さんが急に風景の撮影を始めて、花蓮さんと真央さんは同じように綺麗とつぶやいていた。
風景を見て感動している3人へ声をかけようとした時、前方から黒い塊が漂ってきている。
(やばい!)
俺はすぐに3人へ声をかけて、漂ってきた黒い塊へ走り始めた。
「身を隠してください!」
黒い塊に近づくと、ボーリング玉よりも大きな黒い塊には覆うように鋭くて長い針がある。
(やっぱり、【ボンバーアーチン】だったか!)
持っていたダガーで思いっきりブレイクアタックを行って、直接攻撃を当てないようにボンバーアーチンを吹き飛ばす。
遠くに飛ばせたのを確認してから、入り口までテレポートを行う。
3人は入り口のそばにある岩に身を隠してくれていたので、ボンバーアーチンに向かってファイヤーアローを唱える。
「ファイヤーアロー!」
ファイヤーアローがボンバーアーチンに当たると、ボンバーアーチンが内部から弾けるように爆発して針を飛ばしてくる。
俺は爆発と同時に顔を守るように両腕を上げて、針を腕に受ける。
3人はなにが起こっていたのか分からない様子だったので、腕から針を抜きながら説明をする。
「今の黒い塊は、爆発するウニです」
真央さんが俺の腕から抜いた針を手に持って、俺を見てきた。
「今のがウニ……?」
「ええ、爆発するウニなので、名前はボンバーアーチンにしませんか?」
佐々木さんが心配そうに俺の腕を見ながら、話しかけてくる。
「名前はそれでいいが……佐藤くんは昨日もさっきのやつと会ったのか?」
「どういうことですか?」
「私たちへ隠れるように言っただろう? 1回目じゃないと思ったのだが」
「え、ええ……昨日も会いました……」
俺は佐々木さんの言葉に反応しながら、腕に刺さっている針を全部抜いたのでヒールを行って腕を治す。
佐々木さんから言われたことをうまくごまかすことができなかったので、次に会う敵は初めて会ったようにふるまうことにした。
また、ボンバーアーチンが急に目の前に現れたら困るので、慎重に進み始める。
遠くに黒い物が漂うのが少しでも見えたら教えてもらうようにした。
ボンバーアーチンは少しの衝撃を与えただけで爆発をしてしまう。
そのため、先ほどのように風を起こして遠ざけるか、遠くへ逃げないと針で思いっきり全身を刺されることになる。
佐々木さんの目が良くて、ボンバーアーチンが視界の隅に現れたらすぐに教えてくれた。
佐々木さんの指示する方向へファイヤーアローを唱えると、ボンバーアーチンが爆発している音が聞こえる。
先を見ていた佐々木さんの足が止まり、すぐにカメラを構えようとしていた。
「あれは……なんだ……」
佐々木さんがカメラを向けた先には、長細い棒のようなものが空中に浮いている。
俺はボンバーアーチンが現れたら対応しなければならないため、花蓮さんと真央さんへ指示を出す。
「花蓮さんと真央さんであれの対応をしてください」
花蓮さんと真央さんが俺の指示を聞いて、一言答えてからすぐに前へ走り始める。
「わかった」
「行くわ」
俺はその背中を見送りながら、撮影の終わった佐々木さんへ周り警戒を行うように伝える。
花蓮さんと真央さんが戦おうとしているのは、全身が剣のようになっている魚だ。
敵を見つけたら、体を突き刺すように勢いよく向かってくる。
名前もその体を示すように【ソードフィッシュ】と呼ばれていた。
(どっちかが名前をつけることになるんだよな……)
ソードフィッシュに見つかったのか、空中に浮いていたソードフィッシュが2人へ向かって加速する。
ソードフィッシュは花蓮さんを突き刺すように向かっており、それに気付いた花蓮さんは盾を構えた。
花蓮さんはソードフィッシュを盾で弾くも、衝撃で後ろへ弾き飛ばされてしまう。
しかし、ソードフィッシュがとまったことで、その長い体に真央さんがメイスを思いっきり叩き付ける。
真央さんにメイスを叩き付けられて地面に落ちたソードフィッシュは、再度浮上しようとしたところを花蓮さんに胴体を切られて倒された。
周りにはほかにソードフィッシュやボンバーアーチンがいないため、こちらへ戻ってくるように声をかける。
戻ってくるときに、花蓮さんが誇らしそうにソードフィッシュの上半分を持ってきていた。
「これで、この魚の名前は私が決めてもいいのよね?」
「ええ、お願いします」
花蓮さんは少し考えた後、剣のような形をしていると言いながら名前を思いついたようだった。
「ソードフィッシュと名付けるわ」
俺は名前が変わらないのかよと心で思いながら、いいですねと花蓮さんへ笑いかける。
花蓮さんの横には、仕留められずに悔しそうな表情をしている真央さんがいた。
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