海底神殿攻略編①~攻略に向けて~

 入り口まで戻った俺は、近くにいたテントが張り終わって夕食の準備をしている3人へ声をかけた。


「戻りました」


 俺の声にすぐに3人は反応して、佐々木さんがすぐになにがあったのか聞いてくる。


「中はどうなっていた?」


 俺はダガーに刺していたスターフィッシュを見せながら、笑顔で伝えた。


「この先はダンジョンになっています。こいつは1層目の敵です」


 佐々木さんが俺の言葉をきいて硬直してしまう。

 花蓮さんがスターフィッシュを触ろうとするので、手を切らないように注意をする。


「尖っている部分が全部鋭利なので、気を付けてください」

「え!?」


 花蓮さんが手を止めたので、近くの岩にスターフィッシュを置いた。

 それを見ながら、真央さんが思わずつぶやいている。


「こんな凶器みたいなヒトデ見たことねえよ……」


 花蓮さんと真央さんが興味深そうにモンスターを見ていた。

 佐々木さんがさっきから動かないので、声をかける。


「佐々木さん、どうしたんですか?」


 俺の声を聞いた佐々木さんは目を見開いて、俺を見てきた。


「本当にこの中はダンジョンになっているのか?」

「ええ、説明しましょうか?」


 俺は螺旋状の通路や、海底にいる感覚になる空間など見てきたことを佐々木さんへ伝える。

 モンスターを見ていた2人にも聞こえていたようで、花蓮さんと真央さんが近寄ってきた。


 説明を聞き終えた佐々木さんが、すぐにスマホを取り出してなにかをしようとしている。


「どうしたんですか?」

「すぐにギルドへ連絡をして、この場所の確認をしてもらう」


 慌てながら作業をしている佐々木さんは、電話をかけようとして止まった。


「ここは圏外だ……」

「誰も来たことがないならそうでしょうね」


 事前の佐々木さんから受けた説明では、ここには森しかないということだった。

 そのため、このダンジョンは誰も入ったことが無いと思われる。


 佐々木さんは電話ができなくなり、洞窟を呆然と眺め始めた。

 花蓮さんがそんな佐々木さんへ声をかけている。


「太陽とかの位置で場所を確認することはできないんですか?」

「その手があるか!」


 佐々木さんはすぐに太陽を見つけて、その方角と角度を測った後に時間を記録している。

 時間を変えて何回か行えば正確な場所が割り出せるようだ。

 最後に、参考資料にすると言いながらスターフィッシュの撮影を行っている。


 佐々木さんが夢中になって記録を取っているので、俺は明日の予定を話し始めた。


「明日は4人でこのダンジョンの攻略を行います」


 3人が驚いて同じようなことを言いながら俺へ詰め寄る。

 3人は俺が正気かどうか疑っていた。


 俺は一歩後ろに下がり、洞窟を見ながら3人へはっきりと伝える。


「誰も入ったことのないダンジョンに入るとか、最高の冒険じゃないですか!」


 俺は驚いたままの3人に笑顔でダンジョンを攻略したいと意思を示す。


「目の前にダンジョンがあるのに、入らないで帰るなんてありえない!」


 俺の興奮した様子を見た佐々木さんは、深呼吸をしてから確認するように口を開く。


「全員、帰還石は持っているな?」


 佐々木さんが俺たちを見回すように聞いていた。

 帰還石を持っているのを確認して、俺へ1つ約束をしようと提案してくる。


「危なくなったらすぐに帰還石を使うこと。これがこの中へ入る条件だ」


 真央さんと花蓮さんは佐々木さんを見ながらうなずいている。


 佐々木さんがダンジョンへ入る許可を出してくれたので、今日はゆっくりと休みたい。


 俺は途中になっていた夕食の準備を手伝い始める。


 夕食が終わり、俺は佐々木さんと2人でたき火を見ていた。


 俺が洞窟からとってきたモンスターの名前をスターフィッシュにしようと佐々木さんへ提案している。


 佐々木さんは苦笑いで、この洞窟中にいるモンスターはおそらくほとんどが未確認モンスターだから、モンスターが現れたら名前が付け放題と言っていた。


 佐々木さんと会話をしている時に、アウトドア用のシャワーを使い終わった花蓮さんと真央さんがたき火の方へ戻ってくる。


 花蓮さんと真央さんがどうしても体を洗いたいと佐々木さんへ相談したところ、すぐにリヤカーに積んであった荷物の中からシャワーとプライバシーテントが出てきた。


 少し離れているところにシャワーを設置しており、お香が効かなくなることがあるため2人で行動している。

 ちょうど、花蓮さんと真央さんが戻ってきたので、次は俺と佐々木さんがシャワーを使うために向かう。


 俺と佐々木さんもシャワーを終えて、一緒にテントとシャワーの片付けを行う。


 荷物を持ちながらたき火の場所へ戻り、片付けを行ったら真央さんから温かい飲み物を渡された。

 お礼を言いながら座って、全員でたき火を囲む。


 飲み物を飲みながら、明日についての戦略を相談する。


「明日は俺がダガーを持って前に出ます」


 3人は黙って俺の言葉を聞いてくれていた。

 すべて俺がやっても3人が成長しないので、3人にやってもらうことを説明する。


「真央さんと花蓮さんは俺が引き付けたモンスターの処理をしてください」


 真央さんと花蓮さんがうなずいて、次に俺は佐々木さんを見る。


「佐々木さんは、杖で戦ってもらおうと思っているんですが……」


 佐々木さんは俺の言葉を待っていてくれているように俺の顔を見ていた。

 先ほどのたき火で2人で行った会話を思い出して、モンスターを記録したほうがいいと考えて佐々木さんへ提案をする。


「できれば、出てきたモンスターの写真を撮ってもらってもいいですか?」

「撮影? なるほど……」


 佐々木さんは俺の意図がわかってくれたようで、納得しながら俺を見る。


「この洞窟内の記録を取るんだな」

「お願いします」


 佐々木さんはわかったとうなずいてくれて、明日の相談が終わる。


 その後、誰がモンスターの名前を付けるのか雑談を行う。

 最初に倒した人が名前を付けることが決定してから、テントへ入って就寝した。


 翌日、起きてからすぐに朝食を取り、使っていたテントの片付けをする。

 リヤカーへダンジョンに入る時に必要ない物をしまって、戦闘をする支度を始めた。


 俺はダガーを2本持って洞窟の前に立つ。

 他の3人それぞれの武器を持ち、洞窟へ入る準備が終わったようだった。


「行きましょうか」


 3人は無言でうなずいて、先行する俺を追うように歩き始める。


(さあ、攻略を始めよう!)


 俺は両手のダガーを握り締めて洞窟を進み続けた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ご覧いただきありがとうございました。

現在カクヨムコン9に以下の作品で参戦しております。

ぜひ、応援よろしくお願いします。


【最強の無能力者】追放された隠し職業「レベル0」はシステム外のチート機能で破滅世界を無双する

https://kakuyomu.jp/works/16817330666662865599

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る