拳士式ブートキャンプ編④~キャンプ初日~

 前日に準備を終わらせて、ギルドの前に7時に着くように朝に家を出る。


 父親がギルドまで車で送ろうかと言ってくれた。

 しかし、俺は朝の運動として走りたかったので、父親へせっかくの休みだから休んでほしいと伝える。


 俺は佐々木さんに言われたものと武器を数種類持って、ギルドへ向けて走り出す。


(キャンプ楽しみだな!)


 荷物があって遅くなると思い、早めに出たら30分前にギルドへ着いてしまった。

 俺は誰かいないか周囲を見回してみても、まだ誰も来ていない。


(どうしようかな……)


 時間を潰す手段を考えようとしている時に、一台のマイクロバスがこちらへ向かってくるのが見えた。

 俺がバスを眺めていると、いつもの運転手さんがマイクロバスへ乗っている。


(こんな時間にどうしたんだろう?)


 ギルドの前へマイクロバスが止まるので、運転手さんへあいさつを行うために運転席へ駆け寄る。

 俺が近づくのがわかり、運転手さんは運転席から出てきてくれた。


「おはようございます」

「おはよう、佐藤くん。早いんだね」

「少し早く着いちゃいました」


 運転手さんが感心するように言ってくれるので、少し照れてしまう。

 運転手さんと話をしている時に、ギルドの中から佐々木さんと清水さんが荷物を持って出てきた。


 俺がいることが意外だったようで、佐々木さんは驚きながらあいさつをしてくる。

 2人へあいさつをした後に、清水さんの持っている荷物が重そうだったので預かった。


 運転手さんがマイクロバスの荷台を開けて、佐々木さんが荷物をそこへ入れるように伝えてくる。

 清水さんから預かった荷物と自分の持ってきたものをそこへ置く。

 荷物を置いた佐々木さんは、淡々と俺へまだ荷物があると言ってきた。


 俺は意気込んで荷物を運び始める。

 運転手さんも手伝ってくれようとしており、これから運転があるからと佐々木さんは提案を断っていた。

 荷物を運び終わり、一緒に作業をした佐々木さんと清水さんと一緒にギルドで休憩をしている。


 その時になってようやく真央さんと花蓮さんが揃ってやってきた。


 2人とあいさつを交わすと、真央さんが花蓮さんを迎えに行っていたことを聞く。

 話をしている時に奥からギルド長もこちらへ歩いてくる。

 ギルド長は俺たちを見て驚きながら時計を見た。

 

「10分前なのにもう揃っているのか」


 佐々木さんが荷物を運び終わったことをギルド長へ報告していた。

 真央さんと花蓮さんは清水さんに案内されて、マイクロバスへ荷物を置きに行っている。


 ギルド長が椅子に座っている俺へ近づいてきて、近くの椅子に座る。

 俺はギルド長の顔を見るために顔を向けて、微笑んでいるギルド長がそこにはいた。

 微笑みながら、ギルド長が話しかけてくる。


「佐藤、お前は今回のキャンプで何を目標にしている?」

「花蓮さんと真央さんの2人でグリーンドラゴンを倒せるくらいまで強くします」


 俺の言葉を聞いたギルド長と、そばにいた佐々木さんが耳を疑うような目で俺を見てきた。

 そんな2人へ俺は自分の目標も伝える。


「俺は富士山にいるドラゴンの群れを突破できるようになります」


 言い終わった直後に俺のスマホへ電話がかかってきたので、2人へ失礼しますと言ってからギルドを出る。

 ギルドを出てからスマホを見て、知らない番号から電話がきていた。

 通話ボタンをタップして、相手の声を聞くために耳をすませる。


「おはよう、佐藤か?」


 スマホから野太い声が聞こえてきたので、杉山さんからだとすぐにわかった。

 電話の相手が分かって安心したため、あいさつをしてから要件を聞く。


「杉山さん、どうしたんですか?」

「鎌を溶かして、お前が言っていたものができたぞ」

「本当ですか!?」


 杉山さんはバフォメットの鎌が非常に硬い鉱石である【アダマンタイト】でできていたことを突き止めてくれていた。

 それを聞いた俺は、将来自分が欲しいものをそれで作ってもらうための相談を行いに何度かお店へ通った。


 それが完成したという連絡を受けて、心が躍る。

 しかし、今からキャンプへ行かなければならないので、受取に行きたい気持ちを抑えた。


「すいません、今からキャンプへ行かなければならないので、後日取りに伺います」

「そうか……待っているぞ。会心の出来だ!」

「本当にありがとうございます」


 作ったことが無いと言っていた無理な注文を聞いてくれた杉山さんへ向けてお礼を伝える。

 その場に杉山さんがいないのに、お辞儀をしてしまった。


 電話を切ってマイクロバスの方を見たら、真央さんがマイクロバスの中へ入るようにとジェスチャーをしてくる。

 俺は軽く走りながらマイクロバスへ乗り込み、先に乗っていた4人へ待たせてしまったことを謝る。


 俺が座ったら、すぐにマイクロバスが動き始めた。

 バスが動き始めてすぐに、花蓮さんが話しかけてくる。


「ねえ、一也くん。これ見て」


 花蓮さんはそう言いながら、カードのようなものを俺へ渡してきた。


【冒険者Rank1 谷屋花蓮】


 俺はそれを見て、すぐに花蓮さんへなんでこれを持っているのか聞いた。


「花蓮さん、登録したんですか?」

「ええ、昨日のスライムを倒した後に真央さんに連れていってもらったの」


 俺はその言葉ですぐに真央さんを見たら、真央さんが苦笑いでこちらを見ている。

 前に乗っていた佐々木さんが説明をするように俺へ声をかけてきた。


「本当はこの前の大会で優勝したからRank2にしたかったんだ。しかし、本人が1からで良いと言ったためにRankが1となっている」

「あれは私の実力じゃないので……」


 花蓮さんはそう言ってから、俺からカードを受け取る。

 そして、俺へ宣言するように言ってきた。


「キャンプで必ず強くなるから!」

「必ず強くします」

「よろしくね」


 花蓮さんが笑顔で俺へ頼んでくるので、徹底的に指導することを決意した。


 佐々木さんが話しかけてきてくれているので、俺は気になっていたことがある。


「そういえば、佐々木さん。俺が倒しちゃったマンドラゴラってどんな処理がされたんですか?」

「ああ、あれか……あれは自然災害として処理した」

「自然災害ですか?」


 佐々木さんは思い出すまでもなく、すぐに俺に教えてくれた。

 しかし、その答えが予想外で俺は思わず聞き返してしまう。

 真央さんと花蓮さんも興味があるのか、佐々木さんに顔を向けている。


「ほとんどすべてのモンスターが打撃により倒れていたため、グリズリーの集団が高原であばれたと報告を行った」


 佐々木さんの言葉にいち早く反応したのは真央さんで、俺へ興味深そうに聞いてきた。


「ほとんど打撃って……一也、なにを使ったんだ?」

「全部盾でやりました」


 真央さんはあきれるような顔になり、ため息をつく。


「ずっと思っていたんだけど、盾って武器じゃないからな」

「そんなの知っていますよ」


 佐々木さんは笑いながら真央さんとの会話を聞いており、俺をフォローしてくれた。


「それがあったおかげで、今回は伊豆高原フィールドを貸し切りにできたんだ」

「そういえば、ニュースでグリズリーの群れが現れているって放送されていましたね」


 花蓮さんが思い出すように佐々木さんと話をしていた。

 俺はテレビをほとんど見ないため、ニュースのことはまったく知らない。

 それを聞いて、真央さんはなぜか悲しそうな顔で下を向いている。


 佐々木さんは俺の様子を見て、説明するように話を始めた。


「マンドラゴラの件は誰も確認ができないからグリズリーの行ったこととなり、報告の書類も受理されたし報道もされた」


 俺がうなずいて感心しているのを見て、あきれながら佐々木さんが話を続ける。


「そんなものが現れるフィールドへ誰も近づかない。現に、報道されてからあのフィールドへ入ってた人数は0人だそうだ」


 それを聞いた花蓮さんが佐々木さんへ興味深そうな目を向けていた。


「ちなみに、どれくらい倒していたんですか?」

「マンドラゴラ357体、ウォーウルフ36匹を回収した」


 佐々木さんが肩を降ろしながら俺を見て、数を伝えてきた。

 数を聞いた花蓮さんと真央さんは言葉を失い、運転手さんが驚きの声を上げている。


 そんな話をしているうちに、バスは目的地の伊豆高原フィールドへ着く。


 マイクロバスを降りて、荷物を降ろしながら俺は考えていた今日のプランを2人へ伝える。


「今日は、真央さんがメイス、花蓮さんは剣を持ってフィールドを進みます」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


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