仲間の決意⑬~仲間の決意~

 閉会式終了後に俺や花蓮さん、真央さんの3人が競技場の一室に集められていた。


 真央さんと会った瞬間に決勝は目立ちすぎと怒られたので、反論している。


「花蓮さんが予選で剣を折っちゃったんですよ」

「それで? なんであんなことになるわけ?」

「俺が最初に強そうな人と戦って、倒した相手の剣を花蓮さんに使ってもらおうとしました」

「どんな発想だよ……」

「花蓮さんも、予選の途中から奪った剣で戦っていましたよ」


 真央さんは顔を赤くして恥ずかしがっている花蓮さんを見ている。

 俺もビッグスライムと戦っている時から思っていたことがあり、花蓮さんへ聞く。


「花蓮さんって、熱中すると周りが見えなくなります?」

「……たまに」


 花蓮さんは指で少しというジェスチャーをしながらうつむいて答えた。

 真央さんがため息をつきながら、俺と花蓮さんを見る。


「2人には私がいないとだめだな」


 真央さんは俺と花蓮さんに向かって笑いながら言っていた。

 俺は真央さんが笑っている理由が分からず、真央さんにたずねてしまう。


「あたりまえですよ。今さらどうしたんですか?」


 花蓮さんも俺と同じ意見なのか、真央さんを見ながらうなずいている。

 真央さんは顔を赤くしてごまかすように大きな声を出す。


「それよりも、一也! 合宿ってどこに泊まるんだよ!?」

「言っていませんでしたっけ?」


 俺が2人へどこに行くのか伝えようとした時、この部屋の扉が開かれた。

 部屋にはギルド長と佐々木さんが入ってくる。


 扉を閉めて、佐々木さんが俺と花蓮さんへ話しかけてきた。


「待たせてすまない。2人の保護者には別室で待ってもらっている」

「そうなんですね」

「ああ、今は別の職員がこれからの大会の予定などを話してくれている」


 ギルド長と佐々木さんは椅子に座り、俺を見てくる。

 佐々木さんが真剣な眼差しで質問をしてきた。


「一也くん、合宿の場所を教えてほしい」


 俺は4人の目を受けて、言いづらいと思いながらも自分の考えていることを話す。


「伊豆高原フィールドでキャンプをしようと思っています」


 4人はそれぞれ俺の言葉で言葉を失い、かろうじてギルド長が重い口を開いた。


「……あのモンスターが出るフィールドでキャンプをしようと言うのか?」

「ええ、それに伊豆の先端へ向かってみたいと思っています」


 俺の言葉を聞いて、佐々木さんがテーブルを叩きながら俺へ叱るように言葉を投げてきた。


「きみは何を考えているんだ!! 伊豆の先端へ向かう森には凶悪モンスターがいるため誰も行こうとしない! なにかあったらどうする!?」


 佐々木さんはすごい剣幕で俺へ言葉を投げかけている。

 しかし、俺は佐々木さんの言葉を聞いて興奮を抑えられなくなった。

 思わず歓喜を表すように声を出して笑いそうになるのを我慢しても、俺からは笑みがこぼれてしまう。


「なにがおかしい……」

「さいっこうじゃないですか!! 凶悪なモンスターがいるなんて絶好のキャンプ場所ですね!!」


 俺が座りながらキャンプへの思いをはせていたら、佐々木さんが近づいてくる。

 佐々木さんは笑っている俺へ、困惑しながら話しかけてきた。


「他の2人をどうする? 必ず危ない目にあうぞ」

「そうなっても大丈夫なように鍛えます」


 俺は佐々木さんへ自信を持って2人を鍛えることを約束する。

 俺の言葉を聞いた佐々木さんは俺から目を離して、他の2人へ目を向けた。


「太田さん、きみは一也の言うキャンプへ行くのか?」


 太田さんは迷わずに佐々木さんへ覚悟を決めた目を向ける。


「ああ、行くよ。戦えないままってわけにもいかなくなった」

「そうか……きみは?」


 次に佐々木さんは花蓮さんを見て、意思を確認する。

 花蓮さんは佐々木さんに話しかけられて、うつむいてしまった。


 少し間が空き、花蓮さんは希望に満ち溢れた表情で佐々木さんを見る。


「私は一也くんに出会わなかったら今日の大会も優勝できていないし、ずっとお姉ちゃんと自分を比べ続けていると思います」


 花蓮さんは立ち上がって、俺のそばまで歩いてきた。

 俺の肩に手を置きながら、花蓮さんがはっきりとした口調で話し始める。


「一也くんは少し頭がおかしいですけど、全力で私を強くしてくれようとしているんです! 行かない理由はありません!」


 花蓮さんの言葉に俺は笑えなくなり傷ついてしまう。

 しかし、ギルド長は俺とは逆に笑い始めた。

 ギルド長は佐々木さんへもういいと言いながら、席へ戻るように言う。


「佐々木、確認はもういいか?」

「ええ、問題ないです。俺の方で当たり障りのない合宿の計画を書きます」


 いきなりギルド長が笑って、佐々木さんが落ち着いて話し出すので、なにが起こっているのか分からない。

 それは俺だけではなく、花蓮さんや真央さんも同じようにぼう然としていた。


 俺たちの様子を見てギルド長がまだ少し笑いながら俺たちに説明する。


「すまない、きみたちの意見を聞きたかっただけだ。しかし、伊豆高原でのキャンプか……」


 ギルド長の話を聞き、伊豆高原でのキャンプはできないのかと不安になってきた。


「できないですか?」

「やるんだろう? 佐々木を監督者として同行させるのはいいか?」

「ええ、大丈夫です」


 ギルド長からキャンプができると聞けたので、俺はほっと胸を撫で下ろす。


 もう話すことが無いと思い、外へ出るための準備をする。

 俺は次に話したい相手がいるので、佐々木さんへ聞いてみた。


「佐々木さん、もう話は終わりですよね? あの人はどこにいますか?」

「終わりだが……保護者の方とは話さないのか?」

「家で話をします。俺は用事があるから帰ったことにしてください」


 佐々木さんは、伝えるのは俺なんだがと言いながら、案内するように部屋を出る。


 花蓮さんと真央さんへ別れを告げて、佐々木さんと一緒に廊下を歩き始めた。


「どうしてあの人に会いたいんだ?」

「聞いてみたいことがあるんです」

「そうなのか……」


 佐々木さんは少し離れたところにある部屋に案内してくれた。

 その部屋の前に立って、俺を見てくる。


「この部屋なら声が外に漏れることはない。俺もすぐにここを離れる」

「ありがとうございます」


 俺は佐々木さんへお礼を言ってから一礼をした。

 直後に佐々木さんが立ち去ってくれたので、扉をノックする。


「どうぞ」

「失礼します」


 その部屋の中には、剣士第1中学校へ定期的にきてくれるというスキル鑑定士の男性が座っていた。


 俺はテーブルをはさんでその人と向かい合うように座り、待たせてしまったことの謝罪をする。


「お待たせして大変申し訳ありません」

「予選や決勝戦ですごいものを見せてもらえたし、気にしないでいいよ」

「ありがとうございます」


 俺はスキル鑑定士の人へ、椅子に座りながら頭を下げる。


 決勝戦の直前にたまたまスキル鑑定士の人を見つけることができた。

 こうして待ってもらっていたのも、スキルに関して聞きたいことが1つあったためだ。


 それを聞くために、俺はある1枚の紙を取り出す。


「これを見てください」


 俺はスキル鑑定士さんへ、昨日の夜に俺が鑑定したスキルシートを置いた。


「これは……」


 そこには体力回復力向上など、俺が習得したスキルが記載されている。

 しかし、俺が一番確認したい熟練度Lvが表示されていない。


 俺が購入したものは血液を染み込ませてスキルLvまで表示されるものなのに、結果には表示がない。


 現在のスキルLvが分からないため、スキル鑑定士さんと話をする時間を作ってもらった。


 俺が渡したスキルシートを見て、スキル鑑定士さんの顔が険しくなる。

 そして、つぶやくような声を出した。


「きみは……【超越者】なのか……」

「超越者ですか?」


 スキル鑑定士さんは俺に手を出すように言ってきた。

 俺が手を出すと、スキル鑑定士さんは俺の手を両手ではさむ。


「どうしたんですか?」

「直接触って、きみのスキルを読み取っているんだ」


 何かを確認したのか紙へ片手でペンを走らせながら、スキル鑑定士さんは思い出すように語り始める。


「スキルがLv10までというのは一般人の話だ」

「そうなんですか……」

「時代の節目には君のようなLv10を超える超越者が現れることがある」

「今までもいたんですか!?」


 レべ天は人類がスキルの知識を忘れてしまっていると言っていた。


(やはり俺のように鍛えた人がいたのか!)


 そんな俺の思いを打ち砕くように、スキル鑑定士さんは言葉を続ける。


「ああ、いたんだ。少なくとも数百年前までは」

「数百年前……ですか?」

「記録が残っている限り、それ以降超越者は現れていない」


 スキル鑑定士さんは俺から手を離して、俺へ落ち着いて聞くように言ってきた。


「きみが超越者となると、おそらく世界中の人がきみに興味を示す」

「世界中……」

「もう、人にスキルの鑑定をさせてはいけないよ」

「あなたは言わないんですか?」


 俺の目の前にいるスキル鑑定士さんは、目をつぶり懐かしそうに語り始める。


「私はあの日、きみのLv10のスキルを鑑定した時から、こうなることを予想していた」

「そうだったんですね」

「ああ、だからこうしてきみが超越者となって現れても、驚くことなく対応できている」

「ありがとうございます」


 俺はスキル鑑定士さんがそこまで考えてくれていることを知らなかったので、お礼を伝える。

 スキル鑑定士さんは、真剣な表情で俺を見る。


「スキルは近距離で見るか、しっかりと触らなければ誰にもLvを判定する方法はない」

「わかりました」

「スキルのLvを鑑定したい時は……きみのスキル保有数を見る限り、スキル鑑定もそのうち覚えるんじゃないか?」


 スキル鑑定士さんは少し笑いながら俺へスキルLvを知る方法を教えてくれた。


(その手があったか!)


 俺はわざわざ時間を取ってくれたスキル鑑定士さんへ再度お礼を言ってから、一緒に部屋を出た。


 部屋を出てからスキル鑑定士さんと別れ際にスキルの鑑定結果の走り書きを渡されて、たまに学校で話そうと約束をする。


 俺はスキル鑑定士さんが学校へくる日を聞いて、その場を走り去った。


(ダガーの練習をして、短剣熟練度をLv5まで上げよう!)


スキル


体力回復力向上Lv20

(Lv5) ┣[+剣熟練度Lv5]攻撃速度向上Lv20

(Lv10)┗キュアーLv20


剣熟練度Lv20

(Lv3) ┣挑発Lv20

(Lv5) ┣バッシュLv20

(Lv10)┗ブレイクアタックLv20


メイス熟練度Lv20

(Lv3) ┣[+ヒールLv3]身体能力向上Lv20

(Lv10)┗魔力回復力向上Lv20


ヒールLv20

(Lv10)┗移動速度向上Lv20


杖熟練度Lv20

(Lv3) ┣ファイヤーアローLv20

(Lv5) ┣ライジングボルトLv20

(Lv10)┗テレポートLv20


盾熟練度Lv20

(Lv10)┗シールドバッシュLv10


銃熟練度Lv1


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


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