仲間の決意⑤~伊豆高原フィールドの盾無双~
次の日、俺は3時に家を出て自転車で全力疾走していた。
今日は10時に真央さんと会い、午後には花蓮さんの訓練に付き合う予定を入れているため、俺が自由に動けるのは朝しかない。
そのため、朝早くに起きて移動を始めた。
俺は自転車に乗って伊豆高原フィールドへ向かっている。
(前は車で2時間くらいだったから、今の俺なら同じくらいの時間で着くはず!)
移動速度向上を使用して、自転車でより早く目的地へ向かう。
信号で止まりそうなときには、テレポートをして止まらないようにしている。
途中で道に迷いそうなときにはスマホで進行方向を確認した。
走っていたら伊豆高原フィールドを仕切るフェンスが見えたので、監視室を目指す。
ゲートの入り口に着き、自転車から降りてゲートの監視室へ近づく。
監視室の中にいた男性から、おまえだけで入るのかと驚かれる。
俺は特に反応を気にせず、その人へ冒険者カードを見せてフィールドへ入れてもらう。
そこからまた自転車に乗り、伊豆高原フィールドの入り口まで向かった。
入り口の手前で止まり、今日使うものを荷物から取り出す。
俺は荷物からミスリルの盾を2枚出した。
(今日は盾の日だ!)
1度盾を使ってしまったので、今後に生かしたいと思って盾を使い込むことにした。
今日はこの時間を精一杯使って俺は盾の熟練度を上げる。
スマホを見て、予想通りにこの場所へ2時間ほどで着くことができたことを確認する。
(10時に真央さんと会うから、後3時間はここにいることができる)
俺は両手に盾を持って、伊豆高原フィールドへ歩き出す。
まだ薄暗い草原を見渡して、心地よい風を感じた。
草原を歩き出してすぐに、正面からウォーウルフが現れる。
俺は特に構えることなく、ウォーウルフを視界にとらえたまま歩き続けた。
ウォーウルフが近づいた時、俺へ飛びかかって噛みつこうとしていたので、盾で横へ振り払う。
それでもウォーウルフは何度も俺へ噛みつこうとしてくる。
(今日の相手はお前じゃないんだよ!)
俺は軽くあしらっていたウォーウルフを蹴り上げた。
そして、空中にいるウォーウルフへ盾を思いっきり叩き付ける。
地面に叩き付けられたウォーウルフがまだ動こうとしていたので、全力で盾を首に叩き付けて骨を砕く。
骨の砕けた感触が盾から伝わり、ウォーウルフが絶命したことが分かった。
邪魔者がいなくなったので、俺は再び草原の草を注意深く見始める。
(マンドラゴラはどこだ……)
今日はマンドラゴラを相手にしたいため、周りの草と違う種類の草を探していた。
この前は偶然踏むことができたのに、今日はまったく見当たらない。
時間が限られているので、強硬手段に出ることにした。
(この草原を駆け巡る!)
探すのが面倒になったので、草原を適当に走ってマンドラゴラが出てこないか試す。
俺は盾を持った状態で、草原を疾走する。
マンドラゴラを踏めることを祈りながら草原を走り回る。
すると、少し走っただけで、いくつか土が盛り上がってきた。
俺は走るのを止めて、盛り上がった土の1つへ近づく。
すぐに土を払うようにマンドラゴラが攻撃してくるので、1枚の盾で防ぎ、もう1枚の盾をマンドラゴラへ叩き付ける。
マンドラゴラは盾を数回叩き付けただけで、絶叫してしまう。
絶叫が終わり、周辺の土が大量に盛り上がってきた。
俺はその光景を見て思わず笑みがこぼれる。
(準備は整った!)
多少時間を使ってしまったが、ようやく準備をすることができた。
これからひたすらマンドラゴラを絶叫させ続けて、ここにいるすべてのマンドラゴラを倒し続ける。
俺は盾を振り上げながら、盛り上がってくる土へ向けて盾を振り始めた。
(今日の目標は、盾熟練度Lv10と【シールドバッシュ】だ)
俺がマンドラゴラを絶叫させ続けて、次々に出てくるものを盾で叩くのに熱中していたらすぐにスマホのアラームが鳴ってしまう。
アラームが鳴ったので、周りにいるマンドラゴラを絶叫させる前に倒して、すぐに帰る準備を始める。
無事に盾に魔力をまとわせて敵を攻撃するシールドバッシュを習得することができた。
ただ、本来盾熟練度Lv5で覚えられる【パリィ】は上級職のスキルのため、習得できていない。
盾をリュックサックへ入れて、マンドラゴラと戦っている時に何度かウォーウルフがきてしまったので、服に血がついていないか確認する。
自転車に乗り、ゲートに近づくと勝手にゲートが開いた。
管理室へ行き、フィールドにモンスターがいるので回収しておいてほしいことを伝えたい。
朝に監視室へいた人がいてくれたので、俺はゲート開閉のお礼を言ってから本題へはいる。
「すみません。フィールドへモンスターをそのまま置いてきたので、回収しておいてください」
「どのくらい?」
「数はわかりませんが、たくさんです」
監視室にいた男性はめんどうくさそうにため息をついて、俺へ書類に名前と連絡先を書くように伝えてきた。
俺が書いている時に、男性がだるそうに話をしてくる。
「引取手数料1割、解体手数料1割、オークションになったらさらに手数料1割だ」
「わかっています。お金の受取は振り込みにできますか?」
「数の確認が必要だから、それは区役所で言ってくれ」
「わかりました」
監視室の男性は俺へ手を振ってから電話を始めたので、俺は部屋を出て帰ることにした。
出る時に、子供が何かを倒したみたいなのですぐに終わるという言葉が聞こえてくる。
俺は自転車に乗り、区役所へ向かい始める。
(さっきのやり取りで少し時間を使ったから、少し遅れるかもしれない……)
俺は全力で真央さんと約束したお店へ向かう。
朝は移動速度向上とテレポートを使用したが、帰りは身体能力向上も使用した。
ペダルを足で押すたびに自転車が悲鳴を上げ始める。
なんとか、自転車が壊れる前にお店に着くことができた。
スマホで時間を見たら、5分ほど遅れてしまっている。
真央さんからも1度電話が来ていた。
(まずいな……)
俺はすぐにお店へ入り、お店の中にいるはずの真央さんを探す。
テーブル席に座っている真央さんが見つかり、俺は謝りながら真央さんの反対側へ座る。
荷物を自分の横へ置いて、真央さんの目をしっかりと見て謝った。
「真央さん、遅れてしまって申し訳ないです」
「いいよ。そんなに待ってないから」
真央さんはそう言って、アイスコーヒーを飲む。
俺が席に着くとすぐに店員さんが来てくれたので、真央さんと同じものを注文する。
注文が終わり、真央さんを見たら少しだけ懐かしさを感じた。
「真央さんと会うのは久しぶりですね」
「……ごめん」
「いいですよ。冒険者学校で解体の練習をしているんですよね?」
俺が話している時にアイスコーヒーが来て、店員さんへお礼を言ってテーブルへ置いてもらった。
アイスコーヒーを一口飲もうとしたら、真央さんがうつむいてしまっている。
どうかしたのか聞こうとした時、急に真央さんが頭を下げた。
「ごめん! 解体の練習はうそなんだ」
俺はその言葉にアイスコーヒーを飲むのを忘れ、真央さんは頭を下げたまま動かないので、どうしようか悩み始めた。
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