仲間の決意①~日常の変化~
バフォメットを討伐してから少し時間が経ち、今はもう4月の下旬になった。
俺はあれから毎日早く起きて、40キロほど離れているギルドへ走って向かっている。
最初は3時間ほどかかっていたけれど、今はもう1時間もかからない。
今日も身体能力向上や移動速度向上を最後まで使って、1時間以内にギルドに着いた。
(レべ天の言っていたように、格が上がる前よりもスキルによる向上能力が上がった)
今日は鉄とミスリルのメイスを持って、車に乗って樹海へ向かっている。
ある時、家から直接樹海へ行こうとも思った。
しかし、移動時間が休憩になっているので、バスには乗るようにしている。
今日の早朝に出る樹海行のバスが俺だけのため、普通の車で向かう事になった。
楽しみにしている運転手の人との話をしてから、車の中で睡眠を取る。
眠る直前に、最近のことを振り返ってしまう。
バフォメットを倒してから、真央さんと1度も狩りへ行けてない。
何度か狩りへ行くための連絡をしたけれど、すべて断られた。
今、真央さんは解体技術を見直すために冒険者学校へ練習に行っているらしい。
(最近、家族や運転手の人としか話をしていない……)
早朝だとギルドの受付に清水さんがいないことが多いため、名前がわからない受付の人にバスの対応をしてもらっている。
それに、自分の能力を上げることに専念してしまい、最初に授業を受けてから学校に1度も行っていない。
俺の乗った車が樹海に着き、運転手さんへお礼を言ってから車を出た。
袋からメイスを2本出して、右手にミスリル、左手に鉄のメイスを持つ。
今回はバフォメットと戦うつもりはないので、いつものように防具は何も用意していない。
俺は軽い足取りで樹海へ入り、目的地であるポイズンスネイクの巣を目指す。
ポイズンスネイクの巣へ行く道中には、ほとんど他のモンスターが出現しないため、俺は少しだけ周囲の様子を気にしながら樹海を歩いている。
ポイズンスネイクの巣が目の前に見えてきたので、携帯のアラームを2時間後にセットをした。
それからすぐに巣に向かって進み、毎回落ちてくるポイズンスネイクをメイスで巣の方へ吹き飛ばす。
すぐに俺が吹き飛ばしたポイズンスネイクが俺へ向かってくるので、巣に入ってからそいつに自分の腹を噛ませた。
俺は噛まれたことを気にすることなく、ポイズンスネイクを引きずりながら巣の中央へ進み始める。
すぐに2匹目のポイズンスネイクが現れて、俺の足に噛みついてきた。
キュアーのレベルを上げすぎてしまい、一匹の毒ではすぐに回復してしまう。
そのため、今は2匹同時に自分を噛ませている。
2匹目のポイズンスネイクに噛まれてからは、俺へ襲ってくるポイズンスネイクを両手のメイスでバッシュやブレイクアタックを行なって吹き飛ばす。
ポイズンスネイクは魔法攻撃には弱いが、打撃攻撃はほとんど効かない。
その特性を利用して、打撃系の武器の熟練度を上げるためにメイスでポイズンスネイクを殴っている。
(スキルを使って思いっきり殴れる分、丸太よりも熟練度を上げやすい)
メイスで攻撃を行いながら、ポイズンスネイクの毒が回り始めた感覚がした時にキュアーを行う。
ポイズンスネイクは俺の傷口を広げるように体を動かすため、最初はヒールをその度に使っていた。
しかし、傷口が広がるとポイズンスネイクの牙が深く刺さってくれるため、今は深く差し込まれてからヒールで治している。
また、噛みついているポイズンスネイクは俺の体に巻きついてこようとするので、たまに胴体を殴って巻きつくのを止めさせる。
全方向から俺を狙ってくるポイズンスネイクを本気で殴り続けている最中に、携帯のアラームが鳴り始めた。
(もう2時間か……)
メイスを振り続けた体にまだ余裕を感じている。
ただ、この後にも樹海でやることがあるため、昼休憩を取るために俺を噛んでいるポイズンスネイクの口へメイスをねじ込んで口を開けた。
ポイズンスネイクが体から離れたことを確認して、周囲にいるポイズンスネイクをブレイクアタックで振り払う。
俺は巣の出口に行くためにテレポートを使い、移動を確認したら巣から離れるように走る。
しばらく走り、周りにモンスターがいないことを確認して止まった。
その場に座って、背負っていたリュックサックから母親に作ってもらったおにぎりを3つ取り出す。
食べる前に、朝早くに起きて用意してくれた母親へ感謝をする。
(お母さん、作ってくれてありがとう。いただきます)
樹海でおにぎりを食べ始め、木々がこすれる音などの森の声が聞こえてきた。
それを聞きながら、母親がおにぎりを作ってくれた経緯を思い出す。
母親はこのおにぎりを俺の朝食のつもりで用意してくれていた。
しかし、俺の朝食はバスを待っているときにギルドの食堂を使わせてもらっているため、これを昼食として食べている。
昼食が終わり、少し休んでから立ち上がった。
これから樹海を出るまで走り続ける。
樹海は1度入ったら、一定時間移動しなければ出ることができない。
(逆に言うと、一定時間移動すれば出ることができる)
今日の朝に確認を行って、午後のバスに1PTの申し込みがあったので、帰りはそれに乗れば今日は帰還石を使わないでギルドへ帰れる。
俺は全力疾走を行うために準備を行い、樹海を出るまで走り続けた。
途中でグリーンドラゴンに出会ってしまい、追いかけられたが樹海を無事に出ることができた。
時計を見て、まだバスが来る時間ではないことを確認する。
周りを見渡しても誰もいない。
俺はリュックサックから着替えを出し、今着ている服を新しい服に着替える。
(最近の悩みは、樹海に入ると必ず服がボロボロになることだな……)
家族に怪しまれないために、毎日新しい無地のTシャツとデニムのパンツを購入しなければならない。
1度で大量に購入しようとしても、家のタンスに入れたら母親にばれてしまう。
(ん?)
俺は着替えてからその場に座って、バスが来る道を眺めていたらいつもよりも早くバスがきている。
(毎回同じ時間だったのに珍しい……)
午後に予約がある時には帰る時に毎回使っているため、早めに着くバスに何かあると感じた。
俺は嫌な予感がして木の陰に身を隠した。
バスが到着する前から、バスの中の雰囲気がいつもと違うことが分かった。
(バスが大きいし、あきらかに冒険者ではない人が大量に乗っている)
大型のバスが停車し、中から30名以上の人が出てきた。
その様子を見ていたら、バスの荷台からテレビで見たことがある撮影用のカメラを取り出している。
それも1台ではなく、複数のカメラが荷台から取り出されていた。
(こんな光景見たことが無い)
異常事態だと思った俺は、バスから出てきた人に見つからないように運転席へ近づいて中を確認する。
(よかった。いつもの運転手の人だ)
俺は運転席にいつもの運転手の方が乗っているのを見て、運転席の窓を軽く叩いた。
音に気付いた運転手さんが窓を開けてくれて、俺へ小声で話しかけてくれる。
「佐藤くん、今日バスに乗るのはやめておいた方がいい」
「この人たちがいるからですか?」
「そうだよ。このせいで予約をしていたPTも来るのを止めたんだ。後、この人たちが帰るまでバスは出ないから、佐藤くんは帰還石で帰ったほうがいいよ」
「わかりました」
運転手さんは何も悪くないのに、俺へごめんねと謝りながら窓を閉めた。
俺は得体のわからない集団に見つからないように身を隠す。
リュックサックから帰還石を取り出して、ギルドへ帰還をした。
ギルドへ帰還した俺はさらに衝撃的な光景を目にする。
「なにが起こっているんだ……」
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