富士への樹海攻略編⑯~VSバフォメットPT戦~
俺はバフォメットに近づき、俺へ攻撃するように挑発を行う。
バフォメットは俺の後ろにいる2人のどちらかを狙っていたのか、俺が挑発を行ったと同時に俺へ鎌を振り上げてきた。
バフォメットの鎌を盾で弾き、空いている右手の杖で魔法を唱える。
「ライトニングボルト!」
(バフォメットの攻撃を弾いた左腕がしびれているが、問題はない!)
それよりも、盾を使うことで杖による攻撃ができるようになり、バフォメットに対して防戦一方ではなくなった。
ライトニングボルトでバフォメットがひるみ、佐々木さんの援護によりバフォメットの体へ銃弾が食い込む。
(佐々木さんは良いタイミングで正確な援護をしてくれる)
後ろからの援護により、バフォメットの注意が逸れることで俺は自分の攻撃がやりやすくなっていた。
バフォメットが俺を振り払って佐々木さんのところへ向かおうとするので、がら空きになった脇腹へバッシュを叩き込む。
俺の攻撃を受けたバフォメットはその場でよろけて、再度俺へ鎌を向けてきた。
(脇腹には効くのか!?)
バフォメットには杖による打撃があまり効かないと思っていたため、攻撃を受けてよろけるバフォメットを見て、胴体へ集中的に攻撃を行うことにした。
バフォメットの攻撃を盾で上へ弾くことにより、胴体へ攻撃しやすいようにする。
数回バッシュを受けたバフォメットが膝をついて崩れたので、俺はバフォメットと距離を取った。
「真央さん!」
「わかってる!」
真央さんは呼ぶ前から準備をしていてくれて、俺が離れた瞬間にロケット弾を発射した。
ロケット弾とともに、俺も魔法を唱える。
「ファイヤーアロー!」
今までは頭を狙っていたが、今回は胴体へ向けてファイヤーアローを放つ。
10本の火の矢がバフォメットへ向かっていく。
ロケット弾の爆炎の中にファイヤーアローが吸い込まれて、バフォメットに当たったのか確認ができなかった。
ロケット弾が当たったバフォメットの周囲にはまたも土煙が立ち上り、バフォメットの姿が見えなくなってしまう。
俺はバフォメットがいつでも来てもいいように杖を構えた。
バフォメットが土煙の中から上へ飛び出す。
バフォメットは樹海の木の上まで飛んでいってしまったため、俺はバフォメットの姿を見失ってしまった。
周囲を警戒していると、木の葉がこすれる大きな音が聞こえてくる。
その方向には真央さんがおり、頭上にバフォメットが飛びかかろうとしていた。
「真央さん、上!」
俺の言葉に真央さんは上を見上げて、バフォメットを避けようとするが、もう遅い。
すでにバフォメットは鎌を振り上げており、そのまま地面へ向かうと真央さんへ攻撃が届いてしまう。
(まずい!)
俺は先ほどファイヤーアローが10本発射されたのを確認したので、新しい魔法ができることを祈りながら唱える。
「テレポート!」
魔法を唱えた俺は、真央さんのところまで瞬間的に移動することができた。
もう頭上までバフォメットがきており、俺は攻撃を弾くべく盾を構える。
バフォメットが振り下ろす鎌を盾で弾き、そのまま勢いのまま胴体へバッシュを行う。
攻撃が当たったバフォメットはその場にうずくまった。
俺はすぐに杖をバフォメットの胴体に当てる。
「ライトニングボルト!」
魔法を受けたバフォメットはその場に倒れ、体全体から黒い煙を出しながら消えてしまう。
その場には、バフォメットの持っていた大きな鎌が落ちる。
俺はバフォメットが倒せたことで気が抜けて、その場に座り込んだ。
その時、俺の頭上が光り、レベルアップ天使が現れた。
(レべ天か……)
俺はその姿を確認して、目の前の真央さんを起こそうと立ち上がって手を差し伸べようとする。
まるで時が止まっているかのように、俺が手を差し伸べても真央さんは動かず、さらに周りから音も聞こえない。
(ん? レべ天!?)
ヴァーサスオンラインでキャラクターのレベルが上がった時に出現する天使。
その通称を【レべ天】と呼び、PTで一斉にレベルアップを行うことをレべ天祭りと呼んでいた。
俺は最初、ゲームで頻繁に見たレべ天に違和感を覚えなかったが、今はゲームの中ではない。
俺は再度頭上を見ても、もうレべ天の姿はなかった。
その代わりに俺の後ろから透き通るような声が聞こえてくる。
「ようやく会えましたね。佐藤一也さん」
俺は声の聞こえた後ろを振り向き、声の聞こえた方向を確認する。
そこには、俺よりも少し背の高い見慣れた無駄にかわいい天使がおり、体のまわりがキラキラと輝いていた。
俺は目の前にいる天使がレべ天かどうか確かめたい。
「……レべ天か?」
「レべ天か? じゃありません! なんでゲームに熱中しすぎて死んじゃうんですか!?」
この世のものとは思えない美人が、いきなり俺に対して思いっきり怒り始めた。
俺が反論しようとする間を与えず、レべ天は俺に対して不満をぶちまける。
「ゲームのやりすぎで死にかけるって、もう少し自分のことを大切にできなかったんですか!?」
「あの……」
「せっかく私が世界を救ってもらおうとあなたの前に出たらいきなり死にかけているし、私の計画はめちゃくちゃよ!!」
天使は泣きそうになりながら取り乱して、頭を抱えていた。
長い髪を振り回し、その様子が痛々しくてせっかくの美人が台無しだ。
俺はもう見ていられなくなり、レべ天をなぐさめる。
「大丈夫か?」
「あんたが原因よ!」
レべ天はそう言いながら、いきなり俺の鼻の先端を指で押してきた。
その勢いに、俺はあやまることしかできない。
「ごめん……」
レべ天は俺を整っている顔をゆがめて、俺の鼻を押している。
そして、ため息をついてから指を離す。
「でも、よくここまで頑張りましたね」
俺へ微笑むレべ天を見て、俺はすぐに聞きたいことがあった。
「この世界にもレベルアップがあるのか?」
「レベルではなく、【格】が上がりました」
「格?」
レべ天は俺の質問に丁寧に答えてくれた。
「格というのは、能力の限界のようなものです」
「能力の限界?」
「あなたは今、スキルの熟練度Lvはいくつまでだと思っていますか?」
「10じゃないのか?」
「今のあなたは20になりましたよ」
レべ天はなぜか胸を張って、誇るように俺へ言っていた。
格というものが上がったという俺は、自分のスキルを見ながら疑問に思っていたことをレべ天へ聞く。
「なら、もう上級職のスキルも覚えられるのか!?」
「それは……」
レべ天はあきらかに残念そうな顔をして、俺を見る。
俺が一番使いたい拳熟練度は上級職のスキルのためか、いくら使おうとしても使えなかった。
それに、剣のスキルもブレイクアタックの次に発生するはずのスキルが使えない。
どう考えても制限があるとしか思えなかった。
レべ天の表情を見て察したが、まだ俺は拳で戦うことができないようだ。
「まだ使えないのか……」
「ごめんなさい」
落胆する俺へレべ天がなぜかあやまってくれた。
しかし、レべ天は【まだ】ということを言っていたので、俺はいつ使えるようになるのか気になる。
「なら、いつ使えるんだ?」
「次に格が上がった時に使えます」
「じゃあ、どれくらいで格が上がる?」
「それはわかりません……」
レべ天はわからないことが多いような気がする。
俺は質問に答えられずに委縮してしまっているレべ天が不憫に思えてきた。
(そもそも、なんのために今レべ天はここにいるのだろう?)
俺はレべ天が答えられそうな質問をしてみることにした。
「レべ天はどうしてここにきたんだ?」
「あ!」
レべ天は何かを思い出したかのように声を出して、急に真剣な表情になる。
「佐藤一也さん、あなたに頼みたいことがあります」
「なんでしょうか?」
急にレべ天がかしこまったので、俺も態度を正してしまう。
レべ天は俺へ深く頭を下げながら頼みごとをしてきた。
「あなたの力でこの世界を救ってください」
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