富士への樹海攻略編⑭~富士への樹海進行開始~
今回の富士への樹海行きのバスは、俺たち1組だけが乗っている。
佐々木さんはあの後、2人の男性を連れてきて紹介をしてくれた。
2人とも佐々木さんの部下で、元冒険者だという。
バスの中で佐々木さんが、今日の狩りを行っている時の様子を撮影したいと求めてきた。
俺と真央さんは相談して、真央さんが拒否をしたため、俺だけなら撮っても良いと了承する。
バスが樹海の入り口に着き、すぐに俺以外の4人は防具の装着や銃の確認などを行っている。
俺はバスの収納スペースから自分の杖を取り出し、新しいリュックサックを背負って狩りへの準備が終わった。
俺の様子を見ていた佐々木さんは、自分の防具を取り付けながら俺へ確かめるように質問をしてくる。
「佐藤くんは本当に防具をつけないのか?」
「つけませんね」
その後、まだ佐々木さんが何かを言いたそうにしていた。
俺と佐々木さんのやり取りを見ていた真央さんは、不機嫌そうに言葉を放つ。
「こいつ、絶対に防具つける気ないぜ」
「そうなのか?」
真央さんの言葉に佐々木さんが反応して、他の2人も俺を見る。
「できればつけたくないです」
「なぜ?」
佐々木さんが心配するように俺を見てきた。
俺はあまり答えたくないので、4人へ準備を急ぐように伝える。
佐々木さんは納得がいかないのか、不満そうに準備を進めていた。
4人の準備が終わり、俺が先頭となり樹海へ入り始めた。
今回の目的はバフォメットがいるのか確認すること。
(バフォメットと会うためには森を歩き続ける必要がある)
これがバフォメットのいる森だとすれば、この森の攻略法は簡単だ。
(ひたすらまっすぐに歩く)
方角のわからない森の中で、まっすぐに歩き続けることが難しいことは前回の時によくわかっている。
(4種類の出現するモンスターが同じで、ダンジョンだけ違うことはないだろう)
そう考えて、今回はただひたすらにまっすぐ歩くことだけを考えてみる。
これでバフォメットに会えなかったら、俺の持っている知識とは違う森ということだ。
(それはそれで面白そうなんだけどな……)
しばらく歩いていると、見たことがあるような空間が見え始める。
4人を制止させて、俺がゆっくりとその場所へ近づいていると、上から何かが落ちてきた。
俺は落ちてきたものを杖で振り払い、地面に着いた瞬間にファイヤーアローを唱える。
8本の火の矢がそれに当たり、落ちてきたものは飛散してしまった。
飛び散った中の1つを見て、落ちてきたものの正体を確認する。
(ポイズンスネイクだ)
緑色のまだら模様が見えたため、ポイズンスネイクと断定した。
俺は制止させた4人を呼び、塊の1つを見せながら、この後のことを提案する。
「ここからポイズンスネイクの巣に入らなければいけないので、少し待っていてください」
「待っていろって……佐藤くんはどうするんだ?」
佐々木さんは俺が何をするのかわからないのか、俺へ質問をしてくる。
ふと、佐々木さんの頭部につけている防具の右側にカメラのようなものが見えた。
(そういえば、動画を撮るって言っていたな)
佐々木さんは俺が戦っているところを見てみたいと言っていたので、ここで待っていられないのだろう。
そう判断して、佐々木さんだけ付いてくるように伝える。
他の3人には安全が確保できるまで、銃を持って周囲を警戒してもらう。
俺と佐々木さんはポイズンスネイクの巣へ入り、盛大な歓迎を受けた。
巣へ足を踏み入れた瞬間にポイズンスネイクが地面から俺に向かって飛び込んでくるので、正面へ杖を向けて魔法を唱える。
「ライトニングボルト!」
ファイヤーアローではうまくポイズンスネイクに魔法が当たらなかったが、有効範囲の広いライトニングボルトなら動きの早い敵にも当たりやすい。
ライトニングボルトが当たったポイズンスネイクは、俺のところまで届くことなく地面へ落ちる。
俺は巣の中心に進みながら、見渡す限りのポイズンスネイクへ向かってライトニングボルトを唱えた。
ライトニングボルトを唱えるたびに、後ろから小さく驚くような声が聞こえている。
見える範囲からポイズンスネイクがいなくなったので、巣の中央で待ってみることにした。
それでも俺のところへポイズンスネイクが来ないのを確認して、真央さんたちを呼ぶ。
巣の入り口で、この惨劇を見た真央さんは思わず口が開く。
「マジかよ……」
俺は休憩をかねてポイズンスネイクの解体をしてほしいので、その場に座る。
「それじゃあ、解体をよろしくお願いします」
俺の言葉に他の4人がすぐに反応して、ポイズンスネイクの解体を始めた。
その様子を眺めながら、俺は周囲の警戒を行う。
(この道が正しい道だったのか)
前回もなんとなくまっすぐ進んでおり、同じようなタイミングでポイズンスネイクの巣が現れたため、俺はこの道が正しいのか考える。
前の時は、真央さんに助けてもらったため、方向を意識することができなかった。
(今回は余裕を持って、自分の行く道を決めることができるな)
俺は解体が終わるまで、ゆっくりと休憩することができた。
解体が終わり、進もうとする俺へ佐々木さんが声をかけてくる。
「佐藤くん、まだ戦うのか?」
「もちろん、早く行きましょう」
真央さん以外の3人は、このポイズンスネイクの解体で終わりかと思っていたようだ。
4人は今まで作業してくれていたので、巣を出てから少し全員で休憩することにした。
佐々木さんの部下は、1度の狩りでこんな量のモンスターを狩ったことがないと言っている。
真央さんにポイズンスネイクの数を聞いたら、20を超えたくらいだと教えてくれた。
俺がそんなもんかとつぶやくのを聞いた3人は目を丸くする。
全員の息が整い、再度森を進行する。
しかし、今度はしばらく歩いてもなにもモンスターが出現しない。
佐々木さんが腕時計を確認して、歩き始めて2時間経ったことを報せてきた。
俺が後ろを見ると、4人の顔に疲労が見えている。
俺が再度休憩のために進むのを止めようとした時、前方から圧倒的な存在感を放つモンスターを発見した。
(やつがいた……)
俺が発見してしまったモンスターはバフォメット。
俺の知っているモンスターと同じ姿で、黒い大きな鎌を持っているように見える。
まだ遠くにいるが、バフォメットはもうこちらのことは分かっているように視線をこちらへ向けていた。
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