剣士中学校職員会議

 入学ガイダンス終了後、静岡県立剣士第一中学校の会議室では臨時の職員会議が行われていた。


 議題は、今日のガイダンス開会時に起こった事案だ。


 その後の調査で、帰宅した生徒の名前が【佐藤一也】ということが判明した。

 職員の手元の資料には、鑑定士の用意した鑑定結果などが配布されている。


佐藤一也 様

スキル鑑定結果

バッシュLv2

ヒールLv10

身体能力向上Lv10


以上を認定します。


 全員がその資料をみながら黙っている。

 こんな入学生はここにいる全員が見たことがなかった。


 スキル一覧だけを見ると、騎士学校などの上級学校を卒業した者の鑑定結果ならまだ納得ができる。

 しかし、Lv10のものなど、12歳の少年が持てるようなスキルではない。


 事前に回収した病院の血液検査による鑑定結果には、鑑定されたスキルが記載されていなかった。

 そのため、教頭が病院に確認したが個人情報のため回答できないと連絡されたことを報告する。


 次に、校長が静岡県の教育委員会へ相談のために連絡を行った。

 剣士中学校の教育内容は1人でも多くのスキル取得者育成のため、スキルを習得した生徒への対応は校長の判断に任せるということだった。


 最後に対象生徒の対応をした男性教員は、本人はいたって冷静で校長が言ったことだから自分はこれから自由に過ごすと言っていたことを報告する。

 

 教頭がなにか意見がある方はどうぞと言われている。

 しかし、その場にいた職員が誰も手を挙げなかった。

 教頭が校長を見ると、校長はそれではこうしましょうと言ってから全職員へ告げる。


 校長の案を聞いて、会議室がすこしざわつく。

 そんな中、20代で小柄な女性が手を挙げると教頭に指名された。


「私の担当するクラスの生徒なのですが、先ほどの場合どのような指導を行えばいいんでしょうか?」


 校長は少しうなずき、教員全員へ聞こえるように話し始める。


「先ほどの条件で彼に学校生活をしてもらう前提で、これから話し合いを始めましょう」


 この会議は遅くまで行われ、1人の生徒への対応が決定した。

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