剣士中学生編②〜スキル鑑定結果?〜

 谷屋さんの挨拶の余韻を蹴り飛ばすように、次に行われた恰幅の良い校長の挨拶はつまらなかった。


 剣士第一中学校の歴史や、昔は主に剣でモンスターと戦っていたため、全国にある中学校の専門校にはすべて剣士と名前がついているなど、中学校の話ばかりしている。


(話にうんざりしてきたな……)


 その最後にここである人を紹介しますと、壇上へ細身の男性を上げる。

 その人が笑顔で校長の横に立つと、校長は今まで以上に自慢げに話し始める。


「この方は我が校へ定期的にきてくれるスキル鑑定士の方です! 私たち教員一同は、みなさんの中から必ず数人が3年間でこの方からスキルを認定してもらえるよう教育します! 認定されたら後は卒業まで自由です!」


 その言葉で、会場からおーっという歓声と共に拍手が起こるが、俺はまったくついていけない。

 スキル鑑定だけできればこのように紹介されるようだ。


(でも、スキル鑑定は短剣熟練度Lv5で取れたな……普通のアイテムとかを調べる鑑定もLv3だったはずだ)


 壇上のスキル鑑定士の男性の体つきを見ても、あきらかにモンスターと戦っていたような様子はない。

 戦わないで短剣熟練度を上げる方法について考えてみる。


(なるほど。解体ナイフが短剣扱いなら覚えられるか)


 そうすると、あの校長の横で笑っている人は解体の達人かもしれない。

 俺は解体をするくらいならモンスターを狩りたい人間のため、周りとは別の意味で拍手をするようになった。


 拍手が鳴り止むと調子に乗った校長がこんなことを言い出した。


「この中でこの方にスキル鑑定をしてほしい人はいますか!?」


 先ほどまで鳴り響いていた拍手が止み、音がむなしく木霊する。

 誰も手を挙げようとしない。

 校長がしゃべりかけたとき、俺は手を挙げる。


「武器を持っていけばいいですか?」


 手を挙げながら壇上にいる校長へ聞こえるように言うと、体育館中の視線がすべて自分へ刺さるのを感じる。


「そうです……」

「はい」


 校長が信じられないものを見るように俺をみている。


(スキルシートに間違いがなければ俺にはスキルがあるはずだ)


 今の自分を見てもらうのが少し楽しくなってきた。

 俺は檀上ヘ上がり、鑑定士さんの前に立つ。


「どうすればいいですか?」


 鑑定士さんへ聞いてみるとその場で使うように言われた。

 俺は剣を取り出して、魔力を込めて軽く振る。


「どうぞ」

「ええ!?」


 俺がそう言うと鑑定士さんは訳が分からないと言わんばかりに声をあげ、他の人も少なからず驚いている。


「どうぞ鑑定してください」


 少し待っても鑑定士さんがスキル判定をしてくれないので、ちょっと疲れてきた。

 剣に魔力を流し続けて何度も振るのは辛い作業だ。


 すると、校長が鑑定士さんを助けるように俺へ近寄る。


「君、スキルをしろと言っているじゃないか。そんな感じで剣を振っていてもなにもわからないぞ!」

「スキルを使っていますよ」

「はぁ?」


 俺は校長の後ろにいる鑑定士さんをまっすぐに見つめる。


「スキル、できていますよね?」


 俺は再度確認するように言うと、鑑定士さんが口を開き始める。


「バッシュLv2です!!」

「なんで!?」


 校長が俺を檀上から下すように他の教員へ合図をした時、鑑定士さんが叫んだ。

 その内容に俺も思わず大きな声を出してしまう。


 俺の声と共に体育館全体でざわめきが起きる。

 しかし、バッシュスキルはLv10のはずなので、納得ができない。


 じゃあこれはと、鑑定士さんへヒールをかける。

 すると、鑑定士さんはさっきよりも大きな声で叫んだ。


「ヒールLv10です!!!!」


(この人は大声を出さないと鑑定できないのかな?)


 ざわめきがさらに増して、俺はヒールがちゃんとシート通りに鑑定されて安心できた。


 俺が最後に身体能力向上を鑑定士さんへかけると同時に、男性教員に抱えられ檀上を下される。

 それと同時に鑑定士さんがもう一度叫んでいた。


 俺は会場を抱え出される直前、その場にいる人たちを落ち着かせるように何人もの教員が、お静かにと叫んでいる姿が見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る