始動⑤〜初めての狩りへ〜
翌日の早朝、俺はメイスの入った袋を担ぎ、自転車で昨日の夜に調べた場所へ向かっていた。
スライムの核を回収するために大きめのリュックサックも自転車の前かごに入っている。
これから向かう先は、スライムが大量に生息しているといわれている場所だ。
移動をしながら、昨日の夜に調べたことを思い返す。
○
スライムは20cmほどの大きさがある水滴状の身体で、主に体当たりで攻撃してくるモンスター。
生息地により色が変わり、森林などでは緑、水辺では青色と変化する。
通常の3倍くらい大きなものや、翼が生えているものなどの特殊個体も存在している。
スライムを倒した後に落ちる白い小さな石は、スライムの核で1g1円で売れる。
買取場所は区役所に専用の窓口があるので、そこへ持っていけばいい。
家から自転車で1時間ほどの場所にスライムの巣のようなところがある。
○
逆に住宅地ではまったくスライムなどのモンスターはほとんど見かけない。
ゲームや昨日の夜に画像で見たが、早く本物を見てみたいと思う。
焦る俺は身体能力向上をかけて目的地へ急いだ。
自転車で1時間かかるとスマホの地図アプリでは表示されていたが、40分で着くことができた。
着いた瞬間、目の前の森林には緑色のスライムが一面に広がっている様子がわかった。
「どこをみてもスライムだ」
初めて生でスライムを見た感動で思わず言葉に出てしまう。
スライムはこちらが何かしない限り体当たりをしてこないノンアクティブモンスターである。
わかってはいたが、実際に目の前にスライムがいると緊張してくる。
(俺はここにスライムを眺めに来たんじゃない)
メイスを袋から出し、跳ねて移動しているスライムへ向かってバッシュを叩き込む。
ブシュっという音がすると、崩れるようにスライムの原型が無くなっていく。
(倒せた!)
ここで安堵してはいけない。
スライムは仲間が攻撃されるのがわかると、一斉にこちらへ向かってくる。
俺はメイスを握りなおすと、見渡す限りのスライムへバッシュを叩き込み始めた。
戦っていて分かったことがある。
バッシュを使えば一撃で倒せるスライムでも、魔力が切れて普通に殴っただけでは2発叩き込まないと倒せない。
1匹ずつならなんとか無傷で倒せても、2匹同時にきたら体当たりを躱せる自信がない。
(はやく、攻撃速度増加のスキルが欲しいな)
攻撃するスピードが速くなる攻撃速度増加は、剣熟練度Lv5と体力回復力向上Lv5が必要だ。
体力回復力向上はこれまでの丸太殴りで達成していると思うが、剣はまったく使っていないため条件を達成できていない。
倒したスライムの核を回収しながら考えていると、角が1本生えた大きなウサギが目の前を通過した。
「わっ!」
驚いてしりもちをついてしまうが、この一角ウサギもノンアクティブモンスターだ。
よく見ると、体長が40cmほどあり、角は10cmもある。
一角ウサギはこの角を突き立てるように攻撃してくるため、躱せなかったら大怪我になるだろう。
周りを見渡しても、他に一角ウサギはいない。
(最後の1勝負!)
スライムの核を回収するのを後にして、俺はバッシュを一角ウサギの横から叩き込む。
一角ウサギはバッシュを受けて2mほど吹き飛んだ。
しかし、一撃では倒れず、反撃しようと角を突き立ててながら跳んでくる。
一直線に向かってくる一角ウサギへ2発目のバッシュを振り下ろす。
「倒れろ!!」
2度のバッシュを受けた一角ウサギはその場から動かない。
命の危険を感じながら一角ウサギを倒すことで達成感を覚える。
しかし、倒れた一角ウサギが消えず、その場に残っているままだ。
(ゲームだと消えてアイテムを落とすんだけどな……)
スライムの核を回収しながら待っても一角ウサギが消えないので、スマホで調べてみる。
すると、一角ウサギを解体して持っていけば、1000円になると書いてあった。
また、一角ウサギなど動物を狩るときには、解体用のナイフを用意するのが一般的らしい。
(ゲームとは違って、消えてくれないのか……)
解体しないで持って行っても買い取ってくれると書いてあったため、そのまま区役所にもっていくことにする。
ウサギを前かごに入れ、パンパンになったリュックサックとメイスを担ぎ、自転車で区役所に向かう。
俺が家へ帰る時にはもう日が暮れ始めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます