プロローグ②〜18年前へ〜

 部屋に戻ると、勉強机の上に置いてある大きな封筒が目に付いた。


佐藤一也さとうかずや 様へ】


 ご入学案内と書かれた封筒には俺の名前が書いてある。


 消印で日付を確認すると、18年前のものが書かれていた。

 俺は慌てて中身を見たら、一冊の冊子が入っている。


【静岡県立剣士ケンシ第一中学校ご入学案内】


(剣士中学校?)


 再度、封筒の宛名に自分の名前が書いてあるのか確認した。

 何度見ても、住所や名前が合っているため自分宛で間違いない。


(30年間の人生で、剣士中学校なんて聞いたことは一度もない……)


 俺は冊子の中身を見るために、冊子を手に持つ。

 どんな内容が書いてあるのか恐る恐るページをめくり、ページの一部を見て固まる。


進学実績(前年度)

・静岡県立騎士学校……3名

・静岡県立魔法学校……2名

・静岡県立支援学校……5名

・静岡県立冒険者学校……11名

その他普通高校進学……219名


(騎士とか魔法の学校なんて日本にあるのか……)


 この進学実績が目立つように書いているため、思わず目に入ってきた。

 俺がこれまでの人生で見たことがない項目に目が止まり、何度も見直してしまう。


 他のページには、校長のあいさつや校内の様子などが紹介されていた。

 一通り学校案内を読み終わったので、冊子を机に置いて椅子に座る。


(冷静に今の状況を整理してみよう)


ここは実家

今は18年前の世界で、俺は中学校へ入学予定

騎士とか魔法、冒険者などを勉強する学校?がある

モンスター?がいる


 俺は考えたことを目の前に置いてあったノートへ書き出した。

 書いたものを見直すと、本当かどうかあやしいものもある。


(この情報で間違いないか確認する必要があるな……)


 これから買い物へ行く予定のはずだから、その時にさり気なく聞くことにする。

 リビングで行われた会話を思い出し、慌てて服を着替える。


 着替え終わって下に降りると、出かける準備の終わった父親が待っていた。


「遅かったな。また寝たかと思ったぞ」

「ごめん、準備に手間取ってさ」

「あのゲームが売り切れちゃうかもしれないな」


 笑いながら玄関へ向かう父親を、俺は平然を装って追いかける。

 前にも一度、同じようなやりとりをしたようなことを思い出した。


 俺はこの時の入学祝いにヴァーサス・オンラインを買ってもらった。


(父親は今日購入するゲームの名前を知っているのだろうか……)


 玄関を出て車に乗ってから、父親へ聞いてみた。


「今日買うゲームの名前ってなんだっけ?」

「毎晩言っていたゲームの名前を忘れたのか?」

「確認だよ、確認!」


 父親は不思議そうにこちらをうかがってきた。

 俺は平然を装い父親が答えるのを待つ。

 

DWCダンジョンワールドコレクションだろう」


 VRのゲームでそんな名前を聞いたこともないため、考えたまま止まってしまう。

 俺が何も言わないでいると、父親は嬉しそうに話を続ける。


「世界中のダンジョンを巡れるって喜んでいたじゃないか。学校でも冒険者を目指すために頑張るんだろ?」


 父親は俺へ笑顔でそう言った後、車のエンジンをかけた。

 父親の言葉から、新しい情報が確認できた。


○世界中にダンジョンが複数ある

 

「お父さんにも体験させるんだぞ!」


 戸惑う俺を後目に、父親は楽しそうに車の運転を始める。

 逆に車の窓に映る俺の表情はくもっていき、ますます混乱してしまう。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


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