第3話 ジョージの大冒険

こんなことがあった2週間後、とつぜんジョージが姿を消します。ジョージは、奄美に生息(せかつしている)しているケナガネズミを追って森に入り、迷子になったのでした。

 とほうにくれて森の中で休んでいると、ジョージを目がけて棒のようなものが飛んできましたが、かろうじてかわして逃げました。これは、奄美の森に生息する、もうどくのハブというヘビでした。かまれると命がありません。


 こわくなってうずくまっていると、木の上に大きなネズミがいました。これはハブたいじのために、森にはなされたマングースだと知りました。聞いていた通り、眼がするどくキバも立派で、こわそうなので、みがまえました。眼と眼が合い怖くなり、ジョージは逃げましたが、追いかけてきました。逃げても、逃げても追いかけてきます。息がきれてもうダメと思った時に、遠くで犬の鳴き声が聞こえると、マングースはどこかに姿を消しました。

 この犬は、マングースたいじのために訓練された犬でした。


 この日は、疲れて木の上で、きれいな星をみながら寝ました。次の日もつかれとくうふくから動くことが出来ませんでした。この様子を、森を飛びまわって、見守っている、天然記念物のルリカケスが見つけ、特別天然記念物のアマミノクロウサギの加那(かな)が住む、ほらあなに行って知らせました。

「かなさん大変です。ネコさんが木の上で弱っています。助けてあげてください」

「分(わ)かりました。私は今、子育てで忙しいからケンムンさんに助けに行ってもらいます」

そういって木の上に登って、

「キイキキッキキキ・・。キイキキッキキキ」

と鳴くと、すぐに森の妖精“ケンムン”が現れ、様子を知らせると直ぐに、ジョージの所に向かいました。


「ネコさん。どうされましたか」

カッパのような姿のケンムンがジョージに聞きました。ジョージは何が起こったか分かりませんでした。

「おなかがすいているんですね」

それでも無言です。

「こわがらずに、私を信頼してください。あなたのみかたです」

この言葉にジョージは心を開き、「おなかが減って動けません」と言うと、ケンムンは近くの川に入って魚をとってきました。

「さあ、これでも食べて元気になって下さい」

優しく言うと、ジョージはそれに従いました。

「ありがとうございます。少し元気が出てきました」

「それは良かった。森で道に迷ったんですね」

ジョージはこれまでのことをケンムンに話しました。

「それはかわいそうに大変だったね」

ジョージを優しくねぎらいました。ケンムンは奄美の森の妖精(守り神)です。木(き)を切(き)ると、ケンムンのたたり(こわがらせる)にあうと、奄美の人に信じられていて、奄美の森を、人間のはかいから守っています。


「少し、元気がでてきました」

「それは良(よ)かったね」

「早く帰らないと飼い主が心配していると思います。でもこわさで家を忘れて思い出せません」

「それは心配ですね。私が、心の優しい青年の所に案内させて頂きますので、いっしょに探して」

 ケンムンを、先頭に山を下りました。


 しばらく行くと、1軒の古い家があり、ケンムンが中に入ると一人の青年が出てきて、ジョージを笑顔で手招きしました。

 これに安心したジョージは、青年の肩に飛び乗りました。この様子を見てケンムンは安心して森に帰って行きました。


 翌日、ご飯をおなか一杯食べて、少し残っていたきおくをよびもどし、住んでいたと思われる家の周辺を探し回りました。この様子を、飼い主の妹が運よく見つけ、再会することが出来ました。

「ジョージ、どこ行ってたチバ、しんぱいしてたチー。けがはないチバ」

抱き上げて、島口(奄美のことば)で喜びを、からだいっぱいに表現しました。

「ニュアー、ニャー、フヤー」

ジョージは、うれしい時のなきごえで答えました。

 このようにしてジョージの大冒険はおわりました。

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