猫の手を借りてみたら。

友坂 悠

猫の手を借りてみたら。

 うちの子の肉球はピンクでふかふかで。

 触り心地が最高だ。

 真っ白なふかふかの毛に包まれたその両手は、普段だったらなかなか触らせてくれないんだけどでも。

 今日はちょっと特別だった。


 普段だったらお部屋はエアコンでぬくぬくで。

 ちょうどあったかい熱が当たる高いところのベッドがお気に入りな猫。

 だけど。

 節電警報が出た今日はちょっと事情が違ったのだ。


 エアコンがとまり、暖かい風が出なくなった。

 猫専用こたつはあるけど最近ずっと入ってなかったから忘れてる?

 あたしがお家に帰ってきた時、猫の姿が見えなくて。


「ちー。ただいまー。どこー?」


 そう声をかけても返事がない。


 あ〜。どこかに潜って寝てるのかなぁ。

 そう思って探してみる。


 もしかしたら?

 ベッドのお布団の中に潜り込んでるのかなぁ?

 そう思ったあたしはこそっとお布団をめくってみると。

「にゃ」

 そう小さな声で鳴く猫の姿を発見したのだった。


「ごめんねー。寒かったね」


 あたしは急いで部屋着に着替え、猫のいるお布団に入って。

 猫を抱っこしながらもふもふ撫でてあげた。

 気持ちよさそうに自分の頭をあたしの手に擦り付けてくるのが可愛くて。


 あたしが仰向けに横になると、猫はあたしの胸の上にのってくる。

 撫で回すあたし。にくきゅうでもみもみする猫。

 くすぐったくて時々爪が痛くって。


「ごめんねおてて、爪が痛いよ」

 そう猫の手を触る。

 暖かいその手がぷにぷにで。あたしは思わずその肉球をぷにぷに触って。

 あは。握手会?

 気持ちが良くってついつい触り過ぎたのがいけなかったのか、いきなり猫がにゃ! っと言ってあたしの手を噛んで。

 そのままおててであたしの手を掴んでチャチャチャ! っと猫キック。


「ごめん! ちーさんごめんってば」


 そのあと宥めるのに少し時間がかかったのでした。


        end

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