第2話 寒いのは、、
授業中の集中力を妨げるのは小鳥のさえずりでも寝不足でも無い、昨日の出来事だ。
自分の2つ前の席、上川美奈はそこにいる。
あれはからかっただけだと思い込む。恋愛とはそういうもので、軽率に事を進めるべきじゃない、、。
「はい、哲也。答えて」
「えっ、、えーっと」
上川が3本の指を出している。
、、もしかして教えてくれてるのかな
「おい哲也、聞いてなかったのか」
上川が2本の指を出した。
3と2、、? 32か?
「えっと、32です」
「バカ、どういうミスだ。答えは、325ね」
しまったー、、
上川は広げた手を閉じる。
早とちりした、、けど教えてくれたってことはやっぱり付き合ってるのかなこれって。
後で聞いてみよ。いやいや、失礼か。告白したのはおれって事になってるし。おれたち付き合ってるの?って、、。
「はい、今度は聞いてたよな?哲也」
、、この教師は隠キャをいじめたいのか、?
「えーっと、、」
お、また上川。人差し指出したな。。
1と、なんだ、人差し指しか出さないぞ。
「哲也、、」
「ちょっと待ってください」
1の次を出してくれ、、なんで人差し指しか出さない。。人差し指しか、、ん。
「、、1が答え?」
「そうだ。そんな難しい問題じゃないだろ」
上川、親指を立てている。。
good!ってか。
「、、ささくれ痛そう」
「なんか言ったかー?」
「あ、いや、なんでも、、」
この学校の廊下は不気味だ。欠陥なのか窓から光が差さない作り。
上川は今、廊下で1人。聞いてみるか。
「あのさ、、」
「ん?」
「本当に付き合ってる、って事でいいの?」
「は?」
、、は?だよな。そりゃあ。でも聞かないと、、どういう意図だか分からないからな。。
「いや、覗きをやってた人が彼氏でいいの?」
「だって私の事覗いてたんでしょ?それくらい好きってことじゃん」
、、あんたを覗いたわけじゃないよ、、今更引き返せないよな、、。
「まぁね」
「変態」
、、変態はあんただよ。自分を覗くようなやつを彼氏にするなんて。
寒さを感じた。吹き抜ける風でも雨でもない。心の中がじわじわと冷たい。
、、今自分は最低の事をしているのかな。
バラすなら今のうち、好きでもない相手と付き合ってもお互いのためにならない。
「あの、、」
「あの〜、、」
「いや、真似しないで」
「いやぁ、真似しないでぇ」
「そんな喋り方してない」
「してる。自信なさそうな喋り方。後ろめたいことでもあるの?」
一丁前に感は鋭いな、、でもチャンスか、、いま打ち明けよう、、、、
「まさか、他に彼女さんでもいる?」
「え?まさか」
「まぁ別にいてもいいよ。私が1番だったら」
「、、、」
「どうしたの?授業遅れちゃうよー」
「ああ、そうだね」
、、、また今度言おう、、。いつでも言えるか。
「、、あぁ寒い」
「え?夏ですけど」
、、心、、。寒いのは、心ですけど。
不気味な廊下は音を立てる。
タンタンタンタン。
薄暗い中走るのは、僕の彼女。
「いや、だから遅れちゃうよ!授業」
「、、そうだね」
タンタンタンタン。
僕と彼女は薄暗い廊下の深部へ溶ける。
だから、寒いのは心ですって。
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