18

@zuki_zuki

第1話 ファーストコンタクト

やけに静かだ、、雨上がりだからかな。

あっ、今日は黒い猫がいる。

「あのさ、なに考えてるの」

、、また話しかけてきたよ。どうしようかな。よし、とりあえず、、

「雨、止んだなぁって思って」

、、なんだそれ。自分でも呆れる、コミュ症だな。認めたくないけど。

「ね、止んだね!虹あるかな」

おい広げるなそんなしょうもない話題を。

ああ、、無理させちゃったよ。

「昨日も雨、今日も雨、このまま日本が沈んじゃったりしてね!」

、、なんだそれ。いや、こんな話題を振ったおれのせいだ。

「あっはっは」

なんてレベルの低い会話だ。いっその事本当に沈んで欲しい。


学校帰り、雨上がりの道をぺちゃくちゃと喋りながら歩く。田所哲也と上川美奈、出会いは少し変だった。


バスケットゴールに弧を描き軌道に乗る球体は、音もなく吸い込まれる。

これを打ったのが、田所?いやそれを見てるのが田所。窓の外から覗いてる。彼はいつもそう。憧れを抱くが行動にはうつさない。

「何のぞいてるんですか?」

「えっ」

ここで初めて彼女と会う、上川だ。

「だから、何のぞいてるんですか?」

「いや、、ここ立ち入り禁止でしたっけ?」

「答えになってないですよ」

「、、答えたくないもの」

お互いを警戒しあう。だってなんて言えばいいの。綺麗にゴールを決める立石君を見てましたってか?変な誤解されたくないな。

「もしかして、女子バスケでしょ」

「はい?」

「私たちを覗いてたんでしょ?」

「はぁ、、まさか」

「じゃあなに覗いてたの」

「いやぁ、、」

「なによ」

「じゃあ女バス。女バスを覗きました」

「じゃあってなに、開き直らないで」

「じゃあ、どうすればいいんよ」

「じゃあじゃあうるさいよ。誰を覗いてたの?」

「いやそれは、、」

「女バスの誰よ」

「誰だったら許してくれるの」

「あなたおかしいんじゃない?誰だったらとかそういう問題じゃないの。本当の事言いなさい」

、、面倒くさいのに捕まった。嘘を重ねるとこうなるんだな。

「じゃあ、あなたです」

「はっ?」

「あなたを覗いていました。これで許してください」

からかってやった、、はずだったのに。

「、、私?私のどこがいいの」

、、あれ。興味津々だな。おれがそっちの立場だったらブチ切れてるけども。

「どこ、、うーん、、顔?」

しまった。せめてプレーを褒めてあげるべきだったな。顔って、、思っても無い事を言っちゃったよ。

「なにそれ、、そんなの言われた事無い」

、、だろうな。そんな顔だよ。

「本当ですか?綺麗だと思いますよ」

面白いから調子に乗らせてあげよう。

「、、いや、なに?告白?」

「はっ、、そういう訳じゃ」

まずいな、引き返そう。

「じゃあ嘘なんだ」

「嘘、、じゃない」

チャンスを逃した。

「じゃあ、仕方ないからOKしてあげます」

「あ、、ありがとう」

一瞬だった。ちなみにこの状況を理解できたのはしばらく経ってから。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る