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@zuki_zuki
第1話 ファーストコンタクト
やけに静かだ、、雨上がりだからかな。
あっ、今日は黒い猫がいる。
「あのさ、なに考えてるの」
、、また話しかけてきたよ。どうしようかな。よし、とりあえず、、
「雨、止んだなぁって思って」
、、なんだそれ。自分でも呆れる、コミュ症だな。認めたくないけど。
「ね、止んだね!虹あるかな」
おい広げるなそんなしょうもない話題を。
ああ、、無理させちゃったよ。
「昨日も雨、今日も雨、このまま日本が沈んじゃったりしてね!」
、、なんだそれ。いや、こんな話題を振ったおれのせいだ。
「あっはっは」
なんてレベルの低い会話だ。いっその事本当に沈んで欲しい。
学校帰り、雨上がりの道をぺちゃくちゃと喋りながら歩く。田所哲也と上川美奈、出会いは少し変だった。
バスケットゴールに弧を描き軌道に乗る球体は、音もなく吸い込まれる。
これを打ったのが、田所?いやそれを見てるのが田所。窓の外から覗いてる。彼はいつもそう。憧れを抱くが行動にはうつさない。
「何のぞいてるんですか?」
「えっ」
ここで初めて彼女と会う、上川だ。
「だから、何のぞいてるんですか?」
「いや、、ここ立ち入り禁止でしたっけ?」
「答えになってないですよ」
「、、答えたくないもの」
お互いを警戒しあう。だってなんて言えばいいの。綺麗にゴールを決める立石君を見てましたってか?変な誤解されたくないな。
「もしかして、女子バスケでしょ」
「はい?」
「私たちを覗いてたんでしょ?」
「はぁ、、まさか」
「じゃあなに覗いてたの」
「いやぁ、、」
「なによ」
「じゃあ女バス。女バスを覗きました」
「じゃあってなに、開き直らないで」
「じゃあ、どうすればいいんよ」
「じゃあじゃあうるさいよ。誰を覗いてたの?」
「いやそれは、、」
「女バスの誰よ」
「誰だったら許してくれるの」
「あなたおかしいんじゃない?誰だったらとかそういう問題じゃないの。本当の事言いなさい」
、、面倒くさいのに捕まった。嘘を重ねるとこうなるんだな。
「じゃあ、あなたです」
「はっ?」
「あなたを覗いていました。これで許してください」
からかってやった、、はずだったのに。
「、、私?私のどこがいいの」
、、あれ。興味津々だな。おれがそっちの立場だったらブチ切れてるけども。
「どこ、、うーん、、顔?」
しまった。せめてプレーを褒めてあげるべきだったな。顔って、、思っても無い事を言っちゃったよ。
「なにそれ、、そんなの言われた事無い」
、、だろうな。そんな顔だよ。
「本当ですか?綺麗だと思いますよ」
面白いから調子に乗らせてあげよう。
「、、いや、なに?告白?」
「はっ、、そういう訳じゃ」
まずいな、引き返そう。
「じゃあ嘘なんだ」
「嘘、、じゃない」
チャンスを逃した。
「じゃあ、仕方ないからOKしてあげます」
「あ、、ありがとう」
一瞬だった。ちなみにこの状況を理解できたのはしばらく経ってから。
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