第3話 闇の世界 タナカヤスオの選んだ道

私は、無意識のうちに…なんていうのは変だが、とある場所へ向かっていた。

限界だった…というのはおかしいかも知れないが、そう思うなら、もう少し早くここへ向かうべきだったのかも知れない。

なぜそこへ向かうのか、それはふと、闇の世界への入り口があるように感じたからだ。

そこは、私のような者が向かう場所である。

きっと、そこへ行けば私のような者…つまりは仲間に会えると思ったからだ。

妻と子には不自由しない程度には養って来たし、会社でもそうだ、私は一生懸命に働いてきたじゃないか。

もう、私がしてやる事はないだろう、そう思い、ふらふらと歩いている。

私は何を思ったのか、ここまで来るのにスーツで来てしまった。

途中からの道は革靴では歩きにくいかも知れない、しかし、この格好は妙に落ち着くので、安心感はある。

普段なら汚れが気になってしまう所へ行く時は、わざわざスーツでは来ないし、それなりの服装というものがあるのだろうが、今は靴が汚れようと服が汚れようと気にせずに歩こうと思っている。

その服装が、闇の世界へ行く道を歩くのに、けしておかしな恰好じゃないと思うのは、もう、考えるのにも疲れたからだろうか。

とある場所へ着いた私は、辺りを見渡すことなく、吸い込まれるように入り込んだ。

あぁ、私の人生…。

とうとう終わりが来たのか。

それでも悲しいとか、そういった感情は浮かんで来なかった。

かわりに「やっと楽になれる…」という気持ちが浮かんできて、心が楽になった。

もう少し、早めにこの選択をすれば良かった。

そうすれば、苦しみが少しでも、減っていたかも知れないのに…。

私は、何にしがみつきたかったのだろうか…。

さぁ、もう迷う事はない、私の望む「光の世界」へ行こう。

タナカヤスオの人生は、もう、終わって良い。

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