第46話、闘技大会の申し込み

 リンドブルムにボロボロにされた俺は、フラつきながら部屋に戻った。 

 部屋にはマルセイがいる。何やら羊皮紙をジーっと見ていた。


「ん? ああ、おかえりリュウキくん」

「おお……何見てんだ?」

「なんかお疲れだね。ああ、これは『闘技大会』の申し込み書だよ。今年も始まったんだ」

「闘技大会……?」

「あはは。説明してあげるよ」


 マルセイは、部屋の真ん中にあるテーブルに羊皮紙を置く。

 俺も部屋の真ん中に移動し、羊皮紙を手に取った。


「闘技大会……冒険者登録をしている生徒なら全員が参加できる。内容は単純、一対一の真剣勝負さ」

「へぇ、わかりやすいな」

「うん。学園長がわかりやすい人だからねぇ……あんまり複雑な内容じゃないのさ」

「ふむふむ」

「それで、バトルは学年ごとに分けて行われる。新入生、二年生、三年生とじゃ力の差があるからね。そして、各学年の優勝者と、『学園最強』の二年生、三年生の五名で最終トーナメントが開催される。そして、学園の真の強者が決まるんだ」

「し、真の強者……?」

「うん。四天王は参加しないけどね」

「…………」


 そういえば、二年生と三年生には四天王と学年最強が一人いるんだった。 

 

「ああ、怪我しても安心だよ。この学園の保険医は優秀だからね」

「怪我はしたくないけどな」

「で、リュウキくんは参加するのかい?」

「んー」


 レイとレノは参加するんだっけ。

 俺はどうしようかな。


「ぼくも参加する。ふふふ、リュウキくんとは決勝で会うことになりそうだね」

「そ、そうだな……」


 まぁ、参加してもいいか。

 この学園にどれほどの強者がいるかわからないけど、力を試すチャンスだ。


 ◇◇◇◇◇◇

 

 翌日。

 授業前に、ホスホル先生が言った。


「え~、闘技大会の申し込みが始まりました。申し込みは明日まで受け付けてますので、参加者は応募用紙に記入して、先生のところまで出すように……では、授業を始めます」


 あっさりした言い方だった。

 クラスメイトたちはヒソヒソ話している。


「参加するか?」「でも四天王とかダサくね?」

「面白そうじゃん」「でもオレ後衛だし」「めんどくせぇ」

「見てる方がいいじゃん」「どうせAクラスのキルトが優勝だろ」


 キルトか。

 あいつも出るのかな。それに、プリメラもいる。

 マルセイに言われて、俺も出ることにしたし……後でレノと一緒に応募用紙出すか。

 そして、授業が終わり放課後。

 俺はレノと一緒に、ホスホル先生のいる教員室に申し込み用紙を出した。


「はい、はい。レノくんにリュウキくん、参加ですね……はい、確認しました」


 ホスホル先生は羊皮紙を受け取る。なんかやる気なさそうだ。

 教員室を出ると、サリオがいた。


「出してきた?」

「ああ。ったく、やる気なさそうな先公だぜ」

「まぁまぁ。それより、放課後だしお茶でもしない? ぼく、喉乾いたんだよね」

「いいぜ。ショッピングモール行くか。リュウキは?」

「俺も行く。今日は休みだからな」

「休み?」

「ああ、こっちの話。行こうぜ」


 今日は、リンドブルムとの訓練がお休みだ。

 ショッピングモールへ行くと───うわ、出会ってしまった。


「よぉ、兄貴」

「キルトか」


 キルトが、取り巻きを連れてショッピングモールの真ん中を堂々と歩いていた。

 俺を見るなり嬉しそうに寄ってくる。

 俺はため息を吐き、言う。


「俺はもうお前の兄貴じゃない。虫唾が走るから話しかけないでくれないか?」

「……あぁ?」

「で、何か用か?」

「……へ、まぁいい。それより、闘技大会へ出るんだろ?」

「ああ。お前もか?」

「まぁな。くくっ、楽しみにしておけ。お前を公開処刑してやる……なぁ、オレのスキルレベル、いくつだかわかるか?」

「……知らない」

「スキル『地水火風魔法』、レベル78だ。わかるか? オレは強者なんだよ」

「そのスキル、どうせイザベラが金で買ったスキルだろ? 公爵家の財布も無限じゃないのに、よく金があるな」

「うるっせぇぞ!! ま、魔力のないお前には関係ない。なぁプリメラ」

「ふふ、そうですね、キルト様」


 プリメラ。

 俺の元婚約者。化粧っけのない素朴な印象だったのに、今ではしっかり化粧をして、髪も巻いている。なんか臭いと思ったら、香水を付けているようだ。

 

「羨ましいか? なぁ兄貴。お前の女が、今はオレの女だ。なぁ?」

「はい。私はキルト様の物です……ふふふ」

「な、もう行っていいか? これからレノたちとお茶するんだ。行こうぜ」

「ああ」

「う、うん」


 俺はもう無視することにした。

 キルトの横を通ろうとすると、身体のデカい男が壁になる。


「まだ話は終わってねぇぞ」

「どいてくれ」

「嫌だね」

「───……どけ」

「ッ!?」


 闘気に殺気を乗せて睨むと、男の顔色が変わり後ずさった。

 すると、キルトは言う。


「兄貴、闘技大会が楽しみだなぁ!!」

「別に。まぁ、お前には負けないけどな」

「へ、言ってろ」


 さて、話は終わったようだし、レノたちとお茶でもするか。

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