第47話、開会式
「闘技大会、気を付けてね」
「ああ」
「力、解放しすぎるとお兄ちゃんに感づかれちゃう。今のリュウキじゃ、お兄ちゃんに勝てない」
「わかってる。悪い、考えなしに登録しちゃって」
「いい。リュウキの人生。やりたいこと、やった方がいい」
リンドブルムとの特訓を終え、小島でおやつを食べていた。
世話になっているからと、ショッピングモールでケーキを買って小島に持ってきたら、リンドブルムはすごく喜んだ。それから、甘いものを持参して特訓するようになっている。
ケーキを食べ、水筒のお茶がなくなり、帰ることに。
「明日が開会式?」
「ああ。あっという間だ」
「わたしも挨拶しに行くの」
「え、そうなのか?」
「うん。わたし、『おえらいさん』だから」
お偉いさん、ね。
ずっと一緒だから忘れそうになるけど、『真龍聖教』の枢機卿なんだよな。
仕事とか何をやっているのだろうか。
「じゃ、そろそろ帰ろっか」
「ああ。頼む」
「うん。でも……そろそろ、リュウキも飛べるようになった方がいいよ?」
「いや、飛べないし……」
リンドブルムに掴まり、学生寮まで一気に飛んだ。
◇◇◇◇◇◇
そして、闘技大会当日。
今日の授業は全てお休み。参加生徒は着替え、『学園闘技場』に集合だ。
俺はマルセイと一緒に部屋を出る。
一緒に寮を出て、闘技場へ向かって歩いている。
「フッフッフ。この日のために借金して買った装備、見せてやるよ」
「お、おお」
マルセイの手には槍が握られていた。
なかなか装飾の凝った槍だ。借金してまで手に入れたのだから、相当な物なのだろう。
「ところで、リュウキくんは素手?」
「いちおう、このグローブは鉄板入り。ブーツも鉄板入りだ」
「……武器、拳なのかい?」
「まぁ、剣もある。スキルで作るんだけどね」
「へぇ! 創造系のスキルかぁ。でも創造系って、レベル上げないと大したもの作れないんじゃ?」
「……まぁ、そうでもない」
創造系なんてあるのか。とは言えなかった。
スキルと言うか、『闘気精製』で剣でもナイフでも作れるから、武器はいらない。
リンドブルムとの特訓で、ある程度の武器は造れるようになったのだ。『龍人変身』状態ほど精巧な出来ではないけど、鉄の剣よりは硬いし鋭く作れる。
「さて、見えてきた。あれが学園闘技場……学園長が私財を投げ打って作った闘技場さ」
「私財!? あれ、学園長が作ったのか!?」
「そうだよ。学園長、生徒同士のバトルが見たいから闘技場作るのに金出せって言ったみたいだけど、予算が降りなかったんだ。だから自費で建てたみたい」
「……アホなのか、馬鹿なのか」
「確かに」
巨大な半円形で、観客席が数千以上ある闘技場だ。
巨大な獅子が入口に配置され、選手を見下ろしている。
中に入ると、マルセイは「じゃ、ここで」と言って行ってしまった。
俺は一人で闘技場内へ。
巨大なリングの上には、大勢の新入生、上級生が揃っていた。
「……すごいな」
全員、気合が入っている。
すると、レノがいた……集中しているようだし、声はかけないでおくか。
お、レイもいる。こっちは余裕そうだな。
「よう、レイ」
「リュウキ。なにアンタ、余裕そうじゃん」
「まぁ、緊張はしてない」
レイは、背中に二本の槍を背負った冒険者スタイルだ。
周囲を確認しつつ、俺に言う。
「全員、気合のノリが違うわね。学園最強とか四天王とか、そんな称号ほんとに欲しいのかしら」
「同感」
すると、レノが来た。
俺とレイの会話が聞こえたのか、会話に混ざる。
「お前ら知らねぇのか? 学園最強と四天王になると、ショッピングモールの買い物が三割引きになるんだぞ」
「「!?」」
「飲食店、武器防具、その他諸々が三割引きだ。なかなか惹かれるんじゃねぇか?」
「いいわね……燃えてきた」
レイの圧力が周りの参加者と同じになった……三割引きのパワーなのかな。
それから待つこと数分。
闘技場内にいくつも設置されている巨大な魔導ディスプレイに、学園長のヴァルカンが写された。
『がーっはっはっは!! メラメラ燃えておるのぉ生徒諸君!! いい、実にいい!! ではこれより、闘技大会を開始する!! お偉いさんの挨拶は面倒なのでパス!! さぁ、組み合わせの発表じゃい!!』
いきなりすぎる。
ヴァルカンの画面が消え、組み合わせの発表になった。
えーっと、一年生の参加者は50名か。お、俺の相手……あれ?
「お、俺、一回戦の一番目じゃん」
リュウキVSエドワード。
誰だ、エドワードって?
あ、名前の下にクラス書かれてる。エドワードはAクラスか。
『さぁ始めるぞ。第一試合の生徒は残り、それ以外は観客席へ!! さぁさぁ早く!!』
どんだけ待てないんだよ。
すると、巨大なリングが三分割され、ゆっくり離れた。これには驚いた。
そうか、学年は三学年あるから、第一試合は三つあるのか。
俺の目の前には、エドワードがいる。手には剣を持ち、ニヤニヤしていた。
『それでは第一試合……始め!!』
こうして、試合が始まった。
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