第四章
第31話、学園ダンジョン
全員でダンジョンに入る約束をした。
この日は寮に戻る。寮は二人部屋で、俺のルームメイトはマルセイというCクラスの生徒だった。
マルセイは、Dクラスの俺を貶める様なことは言わない。
マルセイは、どんなスキルを宿すか悩んでいる。手にはスキルガイドブックを持っていた。
Aクラスの現状を話すと、つまらなそうに言う。
「ま、Cクラスも似たようなモンだしね」
「別に、Aクラスだからって優れてるわけじゃないだろ?」
「そうだよ。でも、実際にAクラスやBクラスは優秀なんだよね……差別主義者が教師にいるのかも」
「くだらないなぁ」
「同感。そんなことよりリュウキくん、どんなスキル宿す? それと、授業の部門! 部門は体験授業もあるし、時間もあるからゆっくり決められるけど……スキルは誕生日が来たらすぐ宿したいんだ」
「なんで?」
「なんでって、そりゃスキルは長くつければそのぶんレベルも上がる。一度付けたら外さないのが当たり前だからだよ。スキルは一度はずすとレベルも初期化されちゃうからね」
「そうなのか」
「し、知らなかったのかい? だから、最初から高いレベルのスキルや、レアスキルを付ければいいんだけど……その、お金がね」
「まぁ、確かに」
ぶっちゃけ、白金貨なら山ほどある。言わんけど。
「スキルは長くつけてレベルを上げれば進化する。でも……進化するころには、ぼくはいいオッサンさ」
「そりゃみんなそうだろ」
「だよねぇ。ま、ぼくみたいな平民の冒険者は、レベル1のスキルをコツコツ上げて進化させるのが当たり前かな」
「ふぅん」
「で……リュウキくんは、どんなスキルにする? それと部門!」
「スキルは未定。部門はとりあえず、『筋力トレーニング部門』と『算術学部門』と『歴史学部門』にする」
「えぇぇ!? き、筋トレ部門に、算術に歴史……? 偏ってるなぁ」
「いいだろ、べつに」
筋トレは身体を鍛えたいから。算術は得意だから。歴史学は……エンシェントドラゴンのことを知ることができるかもしれないからだ。
部門は5つまで選べるし、そのうち追加するかもしれない。
「ま、まぁ、一学期は部門選択の学期でもあるし、ゆっくり考えたら?」
「いや、これでいくし。ってかマルセイ、お前は?」
「ふふふ、内緒さ」
「いや言えよ……」
同室のマルセイ、こいつとは仲良くやれそうだ。
◇◇◇◇◇◇
それから数日。
授業も始まり、各部門の体験講習も始まった。
俺は筋トレ部門のトレーニングに大満足だ。設備もトレーニング内容も実に素晴らしく、腹筋も綺麗に割れた。レノと一緒に腹筋早比べで燃えたっけ。
算術も歴史学も楽しいし、俺の学部はこれで決まりかな。
そしてさらに数日後。
俺たちは全員、誕生日を迎えた。
俺、レイ、レノ、アピアにサリオは十六歳。それぞれスキルを宿すことができた。
というわけで、こんな感じ。
俺(リュウキ)
スキルなし『闘気』
レイ
ユニークスキル『
スキル『速度強化』、『雷魔法・レベル1』
アピア
ユニークスキル『
スキル『水魔法・レベル1』
レノ
スキル『腕力強化』
サリオ
スキル『回復魔法・レベル1』
こんな感じだ。
サリオは補助魔法か回復魔法で悩んでいたが、回復魔法にしたようだ。
俺たち五人は、地下ショッピングモールのカフェで集まっていた。
「これでダンジョンに入れるな!」
レノが言うと、サリオが頷く。そして一枚の羊皮紙を出した。
「これ、申請書ね。リーダーはレイさんで、副リーダーはレノ……じゃなくて、リュウキくんで。あとは名前と冒険者等級を書いて、学園に届ければダンジョンに入れるよ」
「おいサリオ、なんでオレの名前出して引っ込めた」
「あはは……あと、ダンジョンに入る日は、申請すれば平日でも大丈夫だよ。授業の一環だから、授業は免除されるんだ」
「へぇ~……そうなんですねぇ」
アピアはおっとりいう。
レイはウズウズしているのか、羊皮紙をひったくる。
「いつ潜る? ってか聞いたんだけど、新入生、もうダンジョンに入ってる子けっこういるみたい! あたしらも早く早く! 踏破されちゃう!」
「大丈夫だよ。この学園ダンジョンは、未だに踏破されてない。それに、生徒が入れるのは地下50階までだから」
地下50階もあるのか……とは言わない。みんな驚いていないし。
「じゃあ、明日は学園がお休みだからダンジョンの準備をして、明後日にしようか」
「「「「賛成!」」」」
サリオがスラスラと申請書に書き、丸めて封をする。
「じゃ、これはぼくが申請しておくよ。それと明日、みんなでダンジョンの準備をしない?」
「もち! えへへ、なんか青春って感じ!」
「私も、すっごく楽しいです!」
「えーと、ポーションあったっけか。おいサリオ、ポーションあるか?」
「在庫、買い足しておこう。あとポーションだけじゃないよ?」
「わかってるよ」
俺はワクワクしていた。
みんなでダンジョン。これが、俺の学園生活!
この時までは、とても楽しかった。
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