第30話、学園地下ショッピングモール

 学園地下ショッピングモール。

 俺、レノ、サリオの三人でやってきたのは、スキルが売られている『スキル屋』だ。

 店内に入ると、丸めた羊皮紙が説明書きと共にケースに納められている。

 

「これが、スキルか?」

「ああ。レベル1のスキルが展示されてる。ほら、説明見ろよ」


 『火魔法・レベル1』や『水魔法・レベル1』、『回復魔法・レベル1』と書かれている。ここにあるのは魔法系スキルだけか。


「スキルは、16歳になれば付けられる。でも一個だけって縛りもある。複数所持するには試験を受けるか、冒険者等級を上げれば許可がもらえる。許可なしに複数付けたりするのは重罪だからな」

「ジュ、重罪なのか……?」

「ああ。なんだっけかな……昔、未成年でいくつもスキル付けた馬鹿が、ダンジョンを制覇しまくったんだよ。それでいろいろ問題が起きたようで、こんな決まりができたらしいぜ」

「ふーん。ダンジョン、制覇しまくったらヤバいのか?」

「ああ。ダンジョン産業ってのもあるくらいだからな。攻略され、ダンジョンの秘宝を奪われたダンジョンは消滅する。ダンジョン産業が成り立たなくなるんだろうぜ」

「へぇ~……」

「ちなみに、スキルのインストール上限数は、5つだ。覚えとけ」

「…………」

「んだよ、ジロジロ見て」

「いや、お前ってすごい詳しいな」

「は、はぁ!?」


 レノは顔を赤くして離れた……なんとなくわかった。レノ、褒められ慣れていない。

 すると、補助魔法スキルを見ていたサリオが戻ってきた。


「サリオ、なんかいいのあったか?」

「ん~……ぼくの貯金じゃ、『攻撃補助・レベル10』が限度かな。『総合補助魔法・レベル1』があれば全部賄えるんだけど……白金貨五枚なんて手が出ないよ。王都で何年も暮らせちゃう」

「仕方ねぇな。でも、攻撃支援でいいのか?」

「それも悩み中……支援っていってもいろいろあるし。レベル1だと育成に時間かかるし」


 な、なんか……すごい『できる』会話してるな。

 スキル。俺には『闘気』があるし、リンドブルムのおかげで新しい使い方も知ったから、そんなに重要じゃないと思ってたけど。


「レノ、きみはどうするの?」

「オレは『速度強化』か『腕力強化』だな」

「だね。レノの喧嘩殺法にピッタリだ」

「うるせ。ちゃんと指導受けてるっての」

「あはは。そういえば、D級冒険者になったんだっけ」

「まぁな。お前もそろそろ昇給だろ?」

「うん……って、リュウキ、どうしたの?」

「あ、いや」


 え……レノにサリオって冒険者だったのか?


「……ぼくとレノが冒険者だったことに驚いてるね」

「!?」

「あはは。リュウキ、わかりやすいから。それと、新入生だけじゃなくて、学園生徒の七割くらいが冒険者だよ。B級以上の冒険者は一割くらいだけどね」

「ま、マジか」

「ちなみに、リュウキの等級は?」

「……E」

「ぼくと同じだね。あ、そうだ。今度、三人でパーティ組んで依頼を受けない? もうすぐ16歳だし、スキルの育成もかねてさ」

「いいぜ。な、リュウキ」

「ああ。みんなでやろうぜ」


 ああ、なんか楽しい。これが学園生活なのか。

 すると、レノが言う。


「ところでリュウキ、お前はどんなスキルを宿すんだ?」

「……あ」


 やべ、何も考えてなかった。


 ◇◇◇◇◇◇


 スキル屋でいろいろ話していると、レイとアピアがやってきた。


「あ、リュウキ……げっ」

「あぁ? んだよ、テメーか……」


 レノ、レイが顔を合わせ嫌そうにする。

 名前は一字違いなのに、こうも合わないのか。

 俺はレノを、アピアはレイの背中をポンと叩く。

 すると、レノは。


「あー……悪かったよ。もう馬鹿にしねぇ」

「……まぁ、いいけど」

「はい喧嘩おしまい! リュウキくん、ここにはスキルを選びに?」

「ああ! というか、何も決まってないけどな。ところで、二人も?」

「ええ。私とレイちゃんは『ユニークスキル』持ちですから、それに合わせたスキルを選ぼうと思いまして」

「何!? おま、ユニークスキル持ち!?」

「ふふん、まぁね~」


 レイは誇らしげだ。レノが驚きで見てる。

 そういえば、アピアのユニークスキルを知らない。


「アピアのユニークスキルって何だ?」

「そういえば言いませんでしたね。私は『弾丸精製クリエイト・ブレッド』という、銃の弾丸を精製するユニークスキルです。手で握りしめられるほどの小石などを握りしめると、望んだ弾丸を作れます」

「へぇ、銃使いのアピアにはピッタリだな」

「はい。というか、このユニークスキルがあったから、銃を選んだんですけどね」

「それで、どんなスキルにするんだ?」

「そうですね……『集中』か、『命中』のスキルにしようかと」


 アピアにピッタリだな。

 レイを見ると、ニヤッとする。


「あたしはB級冒険者だから、二つまでスキルを宿せるのよ。何にしよっかなぁ~」

「二つか。いいな……羨ましい」

「ふふん。で、リュウキは?」

「……悩み中」


 ぶっちゃけ、いらない気もする。

 今は闘気を使いこなしたいし、スキルはなぁ。

 すると、サリオが言う。


「あの、レイさん……B級冒険者なんですか?」

「まぁね」

「すごい!! じゃ、じゃあ……レイさんがいれば、『学園ダンジョン』に入れる?」

「学園ダンジョン?」


 俺が首を傾げると、サリオは言う。


「入学式で学園長が言ったでしょ? 学園ダンジョン……この学園の地下にあるダンジョンのことだよ」

「そういえば、そんなこと言ってたな」

「学園ダンジョンには、C級以上の冒険者がいれば五名まで挑戦できるんだ」

「五名……」


 俺は全員を見る。

 俺、レイ、アピア、レノ、サリオ。

 レイはニヤリと笑う……今更だが、レイはこういう笑顔が似合う。


「決まりね。ところでみんな、十六歳になった? 行くならスキルを宿してからの方がいいわ」

「俺、もうすぐ」

「オレも」

「ぼくはもう十六歳だよ」

「私、明日です」

「あたしももうすぐ。じゃあ決まり、スキルを手に入れたらダンジョンへ行くわ。あたしが引率してあげる。アピア、あんたはさっそく冒険者登録しにいくわよ」

「は、はい!」


 こうして、俺たち五人で学園ダンジョンへ行くことになった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇


「……学園ダンジョンか。面白れぇな」


 キルトは、リュウキたちの会話を聞いて不敵な笑みを浮かべた。

 その隣に、プリメラがいる。


「キルト様、悪い顔してますわよ?」

「別に……まぁ、調子に乗ったクソ兄貴に、痛い目にあってもらおうとは思ってるけどな」

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