第24話、結果発表

 入学試験の結果は、その日にわかるようだ。

 筆記試験の会場に集められ、そこで合否の発表がある。さらに、クラス分けもそこでするようだ。

 レイ、俺、アピアの順に並んで座ると、二人が言う。


「あんた、マジでなんなの? 魔力量85とか、聖岩をブチ壊すパンチとか……」

「すごい一撃だした! 本当にすごい……」

「あー……魔力量は魔道具の故障だろ。で、聖岩が砕けたのは俺が最後だったから……うん」

「「へぇ~」」

「…………」


 レイは疑わし気に、アピアは尊敬のまなざしだ。

 二人だけじゃない。周囲の視線も強く感じる。

 疑わしげな視線、恐怖の視線、軽視する視線……どうも、聖岩を拳で破壊したことが「インチキ」と思われているようだ。別にいいけど。

 すると、試験会場内に、タンクトップに迷彩ズボン、ロングブーツを履いた、獅子のような男性が入ってきた。驚いたことに左腕が肩からない。


「あー!! これより合格者を発表する。ダメだった奴はまた来年来い!! がっはっは!!」


 え、誰この人?……という視線が集中する。

 獅子のような男性は、壇上にある魔道具の制御盤を操作した。

 すると、俺たちのテーブルに文字が浮かび上がる。


「ん?……合格」

「合格だって」

「合格ですわ!」


 テーブルに『合格』と文字が浮かび上がった。

 他の席でも同じようだ。喜ぶ者、落ちるて泣く者とわかりやすい。

 獅子男はゲラゲラ笑いながら言う。


「合格者は以上!! 落ちたヤツはまた来年!! じゃあ次はクラス分けだ!! そのままテーブルを良ーく見ておけ!!」


 再び魔道具を操作する……と、『D』という文字が浮かんだ。


「あたし、『A』だって」

「私も『A』です! 同じですね、レイ!」

「え、ええ。リュウキ、あんたは?」

「俺はD」

「そこに書かれた文字がクラスの番号だ!! わかったら、制服と教科書を受け取り、もろもろの必要事項を記入する用紙にサインして解散!!」


 それだけ言い、獅子男はゲラゲラ笑いながら去った……名前くらい教えて欲しかった。

 さっそく移動する。と……キルト、プリメラ、そしてもうできたのか……取り巻き連中がいた。


「いい気になるなよ。聖岩が砕けたのは偶然に過ぎない。フン、これからの学園生活が楽しみだな?」

「では……ごきげんよう、リュウキ」


 キルトとプリメラは取り巻きと共に去った。

 全く、面倒な連中だ。


「なにあれ? リュウキに宣戦布告?」

「不思議な方たちですねぇ」

「ま、ほっとけ。それより、制服と教科書取りに行こうぜ」

「お嬢様、お疲れ様です」

「うわびっくりした!?」

「ありがとう、セバスチャン」


 アピアの執事セバスチャンが試験会場の外で待っていた。

 さっそくアピアの背後を守るようについてくる。

 そして、制服を受け取り入学金を支払い、諸々を終わらせて学園の外へ。


「入学式は三日後だって。それまで、町で買い物したり観光しよっと」

「俺は鍛錬「駄目。少しは休みなさい」……お、おう」

「あの~……私も、ご一緒していいですか?」

「もち! ねぇねぇアピア、聖王国の美味しいご飯屋さんとか、面白そうなお店教えてよ!」

「はい! セバスチャン、店のリストを」

「ここに」


 セバスチャンさんが大きな羊皮紙をバサッと開く。どうやら聖王国の地図に、いろんな店をチェックしてあるようだ……準備いいな。

 レイとアピアはさっそく地図を見てキャッキャしてる。


「甘いの食べたいな~」

「でしたら、ここのカフェなど如何です? 平民のお店なんですけど、私はよく利用します」

「ほうほう。おススメは?」

「さつまいもです!」

「さ、サツマイモ?」

「はい! 私、サツマイモが大好きで……」


 セバスチャンさんをチラッと見ると、首を小さく振る……ああ、長くなるって意味ね。

 とりあえず、歩きながら話すことにした。


「なぁ、ちょっといいか?」

「なによ」

「セバスチャンさんの地図に、武器屋とかないかな。俺、いつまでも素手で殴るわけにもいかないし……剣、欲しい」

「武器屋、鍛冶屋、防具屋、装飾品屋のリストはこちらに」


 セバスチャンさんは、別の地図を見せてくれた。

 準備がいいなんてモンじゃないだろ。

 地図を見ると……あるわあるわ。


「すごい数の武器屋だな……」

「あんたの馬鹿力でも折れない剣ってあるの?」

「いや、作ってもらう」


 俺は、ドラゴンの牙を見せた。


「これを混ぜて剣を打つと、折れない剣になるんだろ?」

「ちょ、バカ!! そんなの町の往来で見せるな!!」

「うわっ!?」


 レイの手が牙を隠す。驚いたアピアは信じられないような声で言った。


「い、今のはドラゴンの牙……ですよね? すごい、初めて見ました」

「あはは……まぁ、内緒で」

「は、はい」

「それで、どこかいい鍛冶屋か武器屋「見つけたぁぁぁっ!!」……ん?」


 前方から現れたのは、ローブを羽織った女の子だった。

 長いエメラルドグリーンのキラキラした髪、同じ色の瞳、俺たちより少し年下だろうか、幼い感じがする。

 そんな子が、俺を指さしていた。


「……パパの牙」

「え?」

「パパの匂い」

「あ、あの……どなたです?」

「お前……パパに、何をした」

「え、あの」


 女の子は、俺をギロリと睨み───牙を剥き出しにした。

 そして、俺は感じた。


「なっ……これは」


 闘気。

 魔力じゃない、濃密な闘気が女の子を包み込む。


「ガァァァァァァーーーーーーッ!!」

「ッ!? 二人とも、下がれ!!」


 俺は全身に闘気を纏い、飛び掛かってきた女の子の両腕を掴む。

 こいつ、やばい……なんて力だ!!

 掴む腕が、ギシギシと軋む。

 女の子の目に殺意が灯る。そして、皮膚に鱗が生え、爪が伸び始めた。


「噓だろ、まさか……ど、ドラゴン!?」

「お前、パパをォォォォォォッ!!」

「待て!! パパ? エンシェントドラゴンのことか!?」


 やばいな、目立ち始めた。

 俺は女の子の身体にしがみつき、闘気を全開にして抑え込む。


「落ち着け!! 俺はエンシェントドラゴンのことを知ってる。あいつの死を看取ったんだ!!」

「───……え」

「頼む。話を聞いてくれ。ちゃんと話すから」

「パパ……」

「大丈夫。な?」

「…………」


 女の子の動きが止まった。

 なんとか一安心……と言いたいのだが。


「……リュウキ、どういうこと?」

「あの……もしかしてその方、真龍聖教の枢機卿では……?」


 どうやら、こっちにも話すことがありそうだ……。

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